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そうだ、教祖になろう

作者: 京本葉一
掲載日:2020/04/10

「5Gと新型コロナの関係性が噂されているのは知ってる? 英国では電波塔に放火する事件まで起こったらしい。さすがに電波にのってウィルスが拡散されているとはおもえないけど、電磁波が免疫力を低下させているという説は、けっこう気になってる」



 とりあえず、噂の真偽はどうでもいい。


 古来より、情勢が乱れると、悪質な噂がながれる。奇妙なことだが、安心をもとめる人々は、不安になる情報にとびついてしまう。人々は危機感を煽られ、まともな判断ができなくなり、噂に踊らされ、騒動を引き起こす。下手をすれば暴動もおきる。


 拡散された不安を土壌として、悪質な噂が咲き乱れる。

 だから、噂の真偽は問題じゃない。

 そんなものをひとつひとつ判断する必要はない。


 不安に流されることがなければ、事態が深刻化することはない。

 ようするに、安心していればいい。

 それさえできれば、余計なことをせず、醜態をさらすことはない。



「べつに新しい説じゃない。電磁波の危険性については、何十年も前から伝えられている。似非科学として扱われてきた情報で、個人的にも危険を感じたことはないから、たいして本気ではなかったけれど、そんなこともあるのかもしれない、と考える程度には受けいれてきた」



 では、どうやって安心するのか。


 大多数の人々はその解答をもっていないだろう。やっかいなのは、そういう人々の不安につけこんで、利益を得ようと考える者たちがいることだ。世の中には詐欺師がたくさんいる。カルト教団などは活動を活発化させることだろう。


 ブッダやキリストや老子などによれば、「安心しろ。神仏に任せとけ。余計なことはするな」となる。簡単な理屈で、お金も修行もいらないが、「きみはもう救われているのだよ」といわれても実際のところ安心できないのが痛い。


 そういう心境に至るための方法として、祈りや瞑想、さまざまな行があるわけだが、安心感を得るまでには時間がかかる。即効性という点において、カルト教祖に後れをとってしまう可能性がある。即効性のある方法とか、確実に詐欺と考えるべきなのだが、人々は簡単に騙されるだろう。


 この時勢、終末論を叫びだす輩もでるにちがいない。笑っちまうような理屈であっても、それに囚われてしまう人がでてしまう。不幸な人はさらに不幸になり、暴利をむさぼる輩が増えてしまう。社会はいっそう混沌となる。

 けしからん話だ。

 ここはひとつ、人々の不安を少しでも減らすべく、愚考せねばなるまい。一手先んじて、お金を貢がれるような存在にならねばなるまい。



「だから気になるんだよ。『歩きスマホ』の危険な場面を目撃するたび、この人の脳はだいじょうぶなのか? と考えてしまう。4Gの電磁波で『異常行動』が起こったとすると、より強力な5Gの電磁波では、『なに』が起こるだろう?」



 とりあえずSNSで知りあった女の子に語ってみたが、反応は薄かった。そのうち明らかになるとしか思っていないことで相手を脅かすのは無理ゲーなのかもしれない。途中で漫画を読みながら歩いている小学生とすれ違ったのも致命的に痛い。


 ごちそうしたケーキがおいしかったのか、ム○とか読んでる友だちを紹介しようかといわれたが、丁重に断った。喜々として終末論を語られても、どうしていいのかわからない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これは一級のエッセイだと思います! エッセイとして発表すれば、より多くの方に読んで貰えそうな気がしますね。
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