彼女持ちのオタクになるはずだったんですが⋯⋯
体育館裏
「あ⋯あの好きです!僕と付き合ってください。」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ ご…ごめんなさい!」
そう言って彼女は俺の前から姿を消すのであった。
時は遡ること3年前の4月
1年2組教室
「おはようー!どうした今日も元気が無いなぁ。。」
「うるさいなぁ昨日もネトゲイベントで忙しくて寝ていないんだよ。」
朝から大きな声を出して俺に話かけてきたのは幼なじみの加藤優希だ。やつとは幼、小、中、そして高校の今に至るまで同じ学校に進学している、ゆ⋯唯一の友達だ。
「また徹夜でイベント周回してたのかよ、それでお目当ての物はゲット出来たのか??」
「ああ!!イベントオールで回ってやっとゲットしたんだよ!愛華ちゃんの限定衣装!!見るか!写真撮ってあるぞ!!」
「いや、ネットで見たからいいよ。ゲット出来たんなら徹夜したかいがあったな。それよりよ、このクラスの女子のレベル高くね??あそこにいる歩美ちゃんなんか県下の女子高生の3本の指の1人に数えられるみたいだぜ。 あぁ1度でいいから付き合いたいなぁ。。伸也もそう思うだろ??」
「いや、俺はリアルの女に興味なんかねぇよ。優希まだリアルの女に未練があるのか、せっかく中学3年間を使って2次元にはめてやったのに⋯」
説明していなかったが優希は中学時代までは国民的アニメぐらいしか見ておらず、アニメに興味すらなかった。だが幼なじみである優希に深夜アニメの素晴らしさを伝えない訳にはいかず(使命感)、3年間かけてどっぷり2次元の素晴らしさを伝えた結果オタク⋯にはなったのだが。。
「確かにアニメの素晴らしさも分かるけどよ、リアルにはリアルにしかない良さがあるんだよ。例えば⋯あの太ももとかムチムチで最高じゃねぇか!!」
と、このように隠れオタク(本人は隠してる気は無い)のような状態になってしまった。。俺とした事が⋯⋯
「あぁ、まぁそうだな。」
優希はリアルの女子の話になると止まらないからスルーするくらいが丁度いいが、無視は流石に可哀想だからいちよう返事をしている。 くっ、アニメキャラにこれくらいの熱量を注がせるつもりが⋯⋯。
キーンコーンカーンコーン
「おっともうこんな時間が机に戻るわ。」
「おう。」
こうして俺と優希の高校生活が始まるのであった。
時は過ぎ1年半後
2年4組教室
「伸也おはよう。」
「おはよう。 」
俺が机の上でライトノベルを読んでいると優希が登校してきた。1年の春なら俺の机でずっと話をしていたんだが⋯⋯
1年の夏頃からは優希は自分の机で過ごすようになった。
別に喧嘩をしている訳ではないが、そう思いふと優希の机を見てみると周りには複数の男女がいた。
そう、優希は社交性が良いのである。優希は昔から俺とは違いとても交友関係が広かった。それは社交性のおかげとも言えるであろう。そして高校に入学してからもそれは変わらず、全然友達の出来ない俺に対して優希はどんどん友達を増やしていき、夏頃からはクラスのカースト制度で上位にまでくい込む存在になったのである。
この光景にも慣れてきたし、別にどうとも思わないのだが、やはり同じオタク(レベルが違う)の優希と俺の状況がここまで違うと気になる⋯⋯ 気にならない方がおかしいと思う。。
そう思いながらも朝のSHRが始まるまでの間ライトノベルを読み進めたのであった。
昼休み
「伸也昼ごはん食べようぜ。」
「おう。」
優希は昼ごはんはいつも俺と一緒に食べている。これは高校に入ってから今まで変わっていない。
周りにいた男女は俺に気を使っているのか、はたまた俺に興味が無いだけなのか分からないが、俺の机に寄ってこようとはしない。
「そういえば伸也好きな女子とか出来たか??」
「いや、出来てないかな。」
「えー、まだ出来ないのか。この学年の女子可愛い子多いのにー。」
「だから、俺はリアルの女になんて興味ないって言ってるだろ。」
「あー、はいはいそうでしたね。ところで最近ネトゲやってるの??」
「は?何言ってるんだよ、やってるに決まってるだろ、俺のリアルはネトゲなんだから。 どうしてそんな事を聞くんだ?」
「え? あ〜、いやさ1年の頃は毎日学校眠そうだったけど、2年になってからあまり眠そうじゃないから、ネトゲあんまりやってねーのかなー?と思ってな。」
「あー、それは最近ネトゲのイベントで愛華ちゃんが来てないからな。後そこまで熱中するほどの推しキャラがまだ出てないからだよ。」
「あ、なんだそういうことか。てっきりリアルで可愛い女の子がいる中で生活してたから興味持ち始めたのかと思ったわ笑」
「そんな訳ないだろ。」
「まぁそうだな〜、お、そろそろ授業始まるし戻るわ。」
「了解。」
俺は嘘をついていた、実は同じクラスの涼風桃という女子の事が気になっていた。
今までリアルの女子を好きになる事どころか気になる事すらなかったのに、高校に入り、優希から毎日毎日女子の事についての話を聞かされたり、中学とはレベルの違う女子たちと学校生活を送ることで自ずと女子に関心が出てきたのである。
涼風桃は2年の時から同じクラスになり、同じクラスでありながら1度も話をしたことがない子である。(全員の女子と話したことほとんどない。。)
彼女は俺と同じでいつも学校に来るや否や本を取り出して、いつも読書をしている。しかし俺とは違い女友達も普通にいて、移動教室の時などはその友達と行動している。
桃の事が気になり始めてから1年後
3年3組教室
気がつけば俺は完全に桃の事が好きになっていた。
ラノベや文芸など様々な本を読んでいたり、友達と昼ごはんを食べている時に時折見せる笑顔などがとても可愛くて⋯⋯
だが時は3年の9月。
そう、後半年もすれば俺たちは卒業してしまうのである、俺と桃の成績は一目瞭然で進路も当然違っていた。今まで当たり前のように同じ時を共有してきたがそれが後ほんの半年で終わってしまうのである。
「伸也ご飯食べようぜ。」
「なぁ優希、俺告白しようと思うんだけど。。」
「えぇー!!!!!え?誰に?まさか愛華ちゃんに??」
「いや、このクラスの涼風桃に。」
「え!?!?!?!? このクラスの女の子に!?どうした??ネトゲのやり過ぎで頭がおかしくなったのか??」
「ちげーよ!!!真剣にだよ。」
最初は本当にこの俺が告白するとは思いも寄らなくて小馬鹿にしていた優希だが、今まで桃に対して抱いていた気持ち、そしてこれから桃を見ることに対する絶望感などについて話していく内に真剣に話を聞いてくれるようになった。
「おぉ、そうか。 いいんじゃないか??」
優希は俺の話を聞いた後にこの一言だけを述べた。
一見すると他人事だからどうでもいい時に使いそうな言葉だが幼なじみの俺にはこの言葉の重みは伝わった。
優希がどれほどのおもいで俺にこの一言を送ってくれたかは計り知れなかった。それほどまでに優希は悩んで 悩みに悩んだ末にこの言葉を俺に送ってくれたのである。
キーンコーンカーンコーン
昼休み終了のチャイムがなった。
俺と優希は俺の告白の話後一言も喋らずに食事を取った。
優希が席を立とうとした直後
「今日の放課後、告白してくる。」
俺はこの一言を優希に言った。雰囲気的に優希からの言葉は期待していなかったが、優希は
「おう!頑張れよ!!桃ちゃんが彼女になったら、俺を紹介してくれよ!!!」
と、今の俺にとって最高の言葉を送ってくれた。
「おう!任せとけ!!」
この言葉を優希に言った直後担当教員が教室に入室した。
放課後体育館裏
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ ご…ごめんなさい!」
そう言って彼女は俺の前から姿を消した。
俺はその場に立ち尽くすしかなかった。
初めての恋、初めての告白。
アニメのように⋯⋯ゲームのように⋯⋯
心のどこかでは成功すると思っていた。
今まで様々な場面で失恋するシーンを見てきた、しかしその一つ一つがこれほどまで辛く、苦しいものだとは想像もしていなかった。
これが⋯⋯
叶わぬ恋なのだと。
俺はこの気持ちをどうにかして払拭したいと思い、重い重い足を何とか動かしながら、校舎の屋上へと向かった。
何とかたどり着き、校舎の屋上の扉を開けるとそこでは少女が⋯⋯⋯⋯
泣いていた。
この度は数あるライトノベル作品の中から私の作品を読んでくださり誠にありがとうございます。
私は素人で、この作品が短編1作目です。
とても読みずらい文面、正しくない表現があるかもしれません、その場合はレビューなどにてお知らせください。アドバイスもして下さると幸いです、よろしくお願いします。
誤字脱字は見つけ次第訂正していきます。もし見つけた場合はお知らせ頂けると幸いです。