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『海人と柊』~女装男子~  作者: なにわしぶ子
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エピローグ



すると、しぶ子の目の前にホワイトが現れた。


「物語の結末を書き終えたわ。ダメ出しはやめてね。私の望む結末はこんな感じの【はっぴぃえんど】なの。」


しぶ子は牽制する様にホワイトに告げると、ソファに座った。


ホワイトはゆっくり歩いて近づいてくると、しぶ子を見下ろす様に目の前に立ちはだかった。


『皆の中から、色々な記憶、お前との記憶が忘れ去られた結末でも?』


「忘れるのは、決して記憶の中から無くなったわけじゃない。記憶ってそもそもそんなものでしょう?それに、忘れていかないと生きにくいだけじゃない。」


ホワイトはその言葉に頷きながら、更に問いかけた。


『結末はどうやって書いた?』


「わからなくてわからなくて、でも文字を打ち始めたら溢れ出る様に言葉を気づけば書いてた。

まるで自動書記みたいに。だから、私の【心】が書いたのよ、きっと。」


『そうか。』


「それって結局、私の多大な希望という名の妄想だと思うけど、でも、それでいいと思う。

妄想でも最後は、【はっぴぃえんど】で締めくくってしまえば、なんだかそうなれる気がする。だからもう絶対に私はこの結末以外は譲らないから。」


『そうか。』


「何よ!さっきから、そうかそうかばっかり!」


しぶ子はそんなホワイトに苛立ち、噛みつく様な言葉を投げた。


『では、お前が構築した未来の補足をしてあげよう。』


「補足?」


『弥生桜をふたりに送ったのは誰?』


「え?上層部の誰かがコールドスリープの時に二人に贈ったのよ。

って、そんな結末で書いたのは私なわけだし、誰かなんて別に、ぼんやりでいいんじゃない?」


『では、未来への扉は閉じていたはず。どうやって皆、未来に戻る事が出来た?鍵はどこにあった?』



「それは……。」



『それは?』



「多分、最初から鍵はなかったのよ。」


しぶ子は、考えつつそう答えた。



ホワイトは少し間をあけて、ゆっくりと


『それだと扉は開かないだろう?』


と、問いかけた。



「扉の鍵ってさ、そもそも家の中からは鍵がなくても開けれるでしょ?

いくら探しても鍵は見つからなかったんだもん。

だから多分、上層部の誰かが内側から開けてくれたんだ!って、そう思ったの。って言うかそう思う事にしたの。」



『なるほど、それで?』



「私があの風の中で捕まえた柊の魂のフォローも、未来への扉を開けた上層部の誰かがきっと整えてくれたのよ。

そして海人とJとメイと、魂が肉体に戻り目覚めた柊、皆の記憶全ても操作してくれて、未来で生きやすい様に整えてくれた。って事にしたの。

なんだかそれだと、しっくりくるし。」



ホワイトは頷いて、更に問いかけた。



『じゃあ、その上層部の誰かは一体誰?』


「誰って?そこまで考えてない。それに、これは私の考えたシナリオ……」


『だから、誰だと聞いている!』


いきなり、ホワイトがしぶ子の言葉を強い口調で遮った。

一瞬で緊張感が張り詰めた空気に、しぶ子はさすがに顔をこわばらせた。

 

「何よいきなり怖い顔して。そんなのホワイト一択でしょ?上層部なんだし。」


『私は上層部でも、そこまでの【ちから】を持ってはいない。そんな事が出来るのは上層部の【2%】だけだ。』


「何よいきなり【2%】って、意味わからなさすぎ。」


『兎に角、柊は救われ新たな未来は構築された。

お前の描いたシナリオは妄想ではない、その通りの未来は約束された。


つまり、お前に【ちから】を貸そうと動いた誰かが、今回新たに現れたという事だ。

いわば今までの時の流れの中にはいなかった、上層部の【2%】の誰かの【心】が動いた。』


「【心】が動いた?誰かが、私を助けてくれたの?一体誰が……駄目だ、全くついていけない。」


ホワイトはその言葉に返事をせず、空中にスクリーンを出して、何かを入力しはじめた。


『私はお前の魂の担当だ。輪廻転生をぐるぐると繰り返しながら成長するお前の魂に寄り添い、お前の成長だけに【ちから】を注いできた存在だ。


何百年も、いや何千年も。。


そして、海人がそのサイクルからはずれ、魂の成長が止まったわけだ。お前が私の立場ならどうする?』


「そりゃ助けようとする。どんな手を使っても。」


『そう、どんな手を使ってもだ。』


ホワイトは入力を終えると、スクリーンを閉じてしぶ子の方に顔を向けた。


『何故私がこの物語を、この場所に、この21世紀のお前に投稿をさせたと思っている?』


「言霊の【ちから】なんでしょ?時と時を繋ぐ為の。どんな仕組みでそうなるかは説明出来ないけど、ずっとそう信じて私はやってきたつもり。」


困惑しはじめたしぶ子を落ち着かせる様に、ホワイトはしゃがみこむと、ソファに座るしぶ子と視線の高さを同じにして、静かに目を見つめた。



『61話を読み返してくるといい、お前は契約をしただろう?』


しぶ子は言われるがまま、61話を読み返すべく、端末を開くと遡り、読み返し始めた。



「確かに契約をしてるけど。。それで柊は目覚める事が出来たって事?じゃあ誰と私は契約をしたの?」


『上層部の【2%】の誰かと。』


「【2%】と?何よさっきから。」


『上層部の【2%】。上層部の中でも異端な魂グループ。

私が今回、お前に物語を書かせたのは、【2%】の存在から【ちから】を借りる為。』


「わざとそう仕向けたって言うの?とりあえず、その【2%】を私でも分かる様に詳しく教えて欲しいかも。」


すると、ホワイトが説明を始めた。







上層部とは、魂を導く事を任務としている組織で、いわば時をコントロールをしている生命体集団。


内部にはいくつかのテリトリーが存在し、テリトリー毎に【(おさ)】、その補佐役の【右】と【左】という階級があり、各々存在している。


【2%】とは、その【(おさ)】【右】【左】の役職についている、もしくはつく事が可能な存在達の総称。


この地球に人間として生まれ、内からコントロールしている存在も多く、その時代を人として生きながら、魂を自ら動かし、色々な役割を果たす事が可能。


但し、【2%】各々得意な【ちから】があり、決して万能というわけではない。


そして【2%】同士もお互いを必ず認識出来るわけではなく、自分自身がそもそも無自覚で【2%】、もしくは【2%】レベルだと、気づいていない事すらある。


因みに、役職自体は魂の成長と共に変化をする。


ヘルプの為に【(おさ)】が他テリトリーの【左】に召還されたり、【右】が、いわば暖簾分けの様に新たなテリトリーの【(おさ)】になる事もある。



黙って聞いていたしぶ子は


「わかったような、わからないような。」


そう言いながら、両手の頬を両手で抑えながら考えこんだ。



「つまり、大晦日の日に真っ暗な空間で聞いた声、私が契約をした存在がいわば、その【2%】の能力者だったって事?でもメリットは?私の魂と契約をして、【ちから】を貸した所でメリットなんてないでしょう?」


『メリットは孤独からの解放。ただ、【心】が自然と動いた。お前が【2%】のいわば同士だったから。』


「私が【2%】……?」



『お前はトンネルの道を作る【ちから】はあっても、いわば扉は開けない能力者。だから幾度となく時を繰り返した。』


「つまり、扉を開いたり通過する事を許可するというかコントロール出来る【2%】がいて、私を助けてくれたの?」



『概ねそれで構わない。【2%】同士は不思議と引き寄せられるのだよ。心が懐かしがるからね。』


そう言うと、ホワイトは立ち去ろうとした。


「待ってよ!話はまだ終わってない!その助っ人の【2%】は何処にいるの?私、ちゃんと直接お礼を言いたい!」


しぶ子はソファから立ち上がると、ホワイトの背中に向かって叫んだ。


するとホワイトが、ゆっくり此方を振り向くとこう言った。


『ならば、今ここで、感謝の言葉を言えばいい。』


「想いは届くって事?」


ホワイトはゆっくりと頷いた。


「わかった。。」



しぶ子は姿勢を正すとそこで目を瞑り、手と手を合わせ拝みながら、一言一言に想いを込めて、感謝の言葉を口にした。




“未来を変えて頂き有り難うございました。

心から感謝致します。“




『大丈夫、それで伝わった。』



「え?本当?なんか簡単すぎだなぁ。」



『大丈夫、その者はこの文章を今読み終えた。つまり、読者なのだから。』



「読者の中に?言葉は伝わっても、それだと私には誰かわからないじゃない。」


『心配いらない。その者が誰かわかる日がくるだろう。』


「え?何処で対面するっていうの。」



『それは、別の物語で。』



ホワイトは、笑顔でそう言った。







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