71話~2/4~
2020年2月4日
「鍵か…………。」
しぶ子は、独り言を呟いた。
どちらにせよ、海人とJとメイ、この3人がいるワームホール、今、21世紀への扉は閉ざされ、未来に戻る扉には鍵がかけられている、この空間から出さなければ、前に進まないのだけは理解しているつもりだった。
「脱出ゲームじゃないんだからさぁ。」
しぶ子は、半ば諦め口調でまた呟くと、とりあえず色々を思い巡らせてみた。
あの未来に戻るらしい扉の、もはや前方後円墳にしか見えない鍵穴に、ぴったりはまる鍵はどこにあるのか?そもそもそんな鍵なんて存在するのか?
そうだ!よくアニメとかであるような、
呪文とかなのかも???開けゴマ!みたいな。
だとしたら、この扉の呪文って何だろう。。
それかもういっそ、力付くで足蹴りして扉をこじあけたら、扉はすんなり開いたのだった~完~とかでもいいんじゃない?
いや、さすがに、それは違うか。。
「あぁ!余計煮詰まってきた!!」
しぶ子が完全に思考停止の状態でいると、親友から電話がかかってきた。
電話を取ると、久しぶりに今から食事にいかない?との誘いだった。
しぶ子は即答で行くと答えると、待ち合わせ場所のファミレスへと向かった。
ファミレスに着くと、友人が笑顔で手を振って迎えてくれた。
「久しぶり、元気だった?」
「うん、鍵が見つからないけど、元気にしてたよ。」
「え?鍵?」
「ううん、こっちの話。で、何食べようか。」
ふたりはメニュー表を吟味して注文した後、色々近況を報告しあったり、普通の雑談に興じた。
「ところで、最近不思議体験とかあるの?」
友人がしぶ子に尋ねてきた。
友人はしぶ子の不思議体質を理解してくれて、話を聞いてあり得ないと言いつつ、親身に聞いてくれる貴重な仲間のひとりだった。
「最近も色々あるけど、少し一言ではちょっと話せないかな。でも、今日はかなり煮詰まってる時に誘ってもらったから、正直有り難かったかも。」
「そっか、でもなんか私もね。急に連絡しないと!って思って気づいたら連絡してたのよね。何に煮詰まってるかは聞かないけど、じゃあ今日はとりあえず気分転換しようよ。気分転換したら何か視界がひらけるかもしれないし。」
しぶ子はテーブルに視線を落としコクリと頷くと、有り難うと言いながら、正面に座る友人を見た。
すると、友人の前の空間に文字らしきものが浮かびはじめた。
「え、言った先からなんか視えてきたかも。」
「え?また?何が視えるの?」
「何だろう……あぁ文字だわ。」
「文字?なんて文字?」
「心。」
ふたりは暫く見つめあった。
その後、ふたりでその文字の意味の謎を解くべく
色々会話をした。かといって、そんな【心】の一文字だけでは、思い当たる事がないとも言えるし、逆にあるとも言えて、結局まとまる事はなかった。
ただ、【心】は大事にしよう。
その結論には到って、その日はお開きにし
また今度遊ぶ約束をして、しぶ子は帰宅する事にした。
帰り道の空には、綺麗な月が夜空を照らしていた。
帰宅してからも、心の文字は、ずっとしぶ子の中にひっかかり続けた。
もうすぐ9時か……。
しぶ子はその日、誕生日を迎えた別の友人にお祝いメッセージを送る事にした。
いつもの恒例で最後に、あなた様が笑顔であります様に、そう気づけば書いていた。
笑顔であります様にって偉そうに書いておいて、私が今一番笑ってないじゃない。
しぶ子は、そう自分の心を見つめながら思った。
すると突然目の前に、スクリーンが現れた。
しぶ子が驚いていると、そのスクリーンには
見覚えのある画面が現れた。
「え、これ小説投稿サイトの画面じゃない。」
そこには、『柊』~女装男子~、【70話】というサブタイトルの文字が映し出されていた。
「え?何?端末の画面が目の前に現れたら便利と言えば便利、って、そんな冗談言ってる場合じゃないよね、絶対そんな事でいきなり現れるわけないし。」
すると、【70話】のサブタイトルが下に下がり、スクリーンの中でその上にある【69話】のサブタイトルが降りてくると、画面の中央に表示をされた。
「え?下にスクロールされたって事?」
しぶ子がそのまま見いっていると、今度は【69話】のサブタイトルが下にさがり、そしてまたその上にあった68話が中央に現れた。かと思うと、今度は凄い勢いで一番最初にある【1話】に向かって下に画面がスクロールをはじめた。
「過去に、過去に遡っていく。」
しぶ子はそのサブタイトルのナンバリングがタイムトラベルをするかの様に過去へ戻っていく様を、暫く呆然と見続けた。




