63話~メイとの初対面~
2020年1月21日
やっと書き終えた54話を小説投稿サイトに、朝投稿し終えたしぶ子は色々を思い巡らせていた。
年末にタイムリミットって言われたあの時に、やはり色々未来を変える事は手遅れだったのかもしれない。
あの真っ暗な世界で聞こえてきた声の主は今頃、やはりお前には何も出来ないと嘲笑っているのかもしれない。
今日もJはやってきて、続きの55話を教えてくれるだろう。
でも、もし視えたあの存在が海人なら?これからはバッドエンドな展開のストーリーを書く事になるのだろうか?
それはさすがに書けない。というか、それは書きたくない。
でも、今までの時間たち。それを途中で終わらせる事は一番したくない。
しぶ子は色々を考えこむと、塞ぎこんでしまった。
「やっと繋がった。」
すると、どこからか声が聞こえてきた。
声がする方に目をやると、目の前に黒色のパンプス、ストライプのシャツ、タイトスカートに白衣を着た、眼鏡美人が立っていた。
しぶ子は、時計を確認した。
AM11:32
まだお昼前なのに、幽霊登場なんて。それにしても、この白衣、Jの白衣と同じだな。
まぁ、白衣なんて全部同じと言えば同じだけど。
しぶ子はひとまず、見てみぬふりをしてみた。
すると、その眼鏡美人はお構い無しにしぶ子にどんどん近づいてきた。
「話はJから聞いているわ。少し私と話をしましょう?」
Jを知ってる??あなた?まさかメイなの?
いやいや、そんなバナナ。
ないって、なんでいきなりメイが私の所に?
いや、本当に頭がついていけない。
「私は悪いけど、諦めは悪い方なの。お前に出来ないとか言われたら、あなただって癪でしょ?」
それはそうだけど、何なんだいきなりこの人は、
少しぐらい心の整理をする時間をくれてもいいじゃないか!!
あわあわと混乱しているしぶ子にお構い無しに、メイは続けた。
「このままだと、海人は【木】になるわ。」
木??えっと、聞き間違いかな。
「【木】になるのよ。」
木って、林とか森とかのあの木の事だろうか。
駄目だ、かなり固定観念を捨ててきたつもりだったけど、完全にフリーズしてきたかもしれない。
しぶ子は完全に口から魂が抜けた様な感じになり、石化してしまった。
「しっかりしてちょうだい!いいから、あなたのその端末を貸してちょうだい!」
メイはしぶ子の端末に何かを入力をしたかと思うと、とあるサイトに繋ぎ、見る様に言ってきた。
そのサイトには、人とその他の生命体とのDNAの一致率が詳しく載っていた。
「固定観念は捨ててちょうだい。細胞レベルで頭を動かすの。バナナでさえ人のDNAは60%同じなのよ。」
「バナナと人間が?駄目だ頭が痛くなってきた。」
「逃避は止めて、ちゃんと話を聞いて頂戴!
海人は人間だけど、樹木のDNAデータが多い生命体なの。そしてしぶ子あなたもなの。あなた、木と話せるんでしょう?」
メイは狼狽するしぶ子に、尋ねてきた。
「話せるわ。信じなくていいけど、木はよく話す。特に神社のご神木はよく話をしてくれる。」
メイは深く頷いた。
「しぶ子、あなた、モスキート音って知ってるかしら?年齢で聞こえる聞こえない音があるの。つまり、周波数が、聞こえる人を選ぶのよ。」
「あぁ、聞いた事ある。若い子しか聞こえない音があるんだよね?ちょっと前に試したら私は全然聞こえなくてショックだったな。」
「その理屈が分かれば話は早いわ。しぶ子は今私がみえている。声が届いている。
でも、しぶ子の世界の人間にはみえないし、声も聞こえないわよね?つまりは波長、周波数なのよ。」
「周波数?」
「トウモロコシの根っこって、地中でハミング音を出してるって知ってる?根から220ヘルツのハミング音を奏でているの。
勿論、人には聞こえないけれど、トウモロコシ同士はそのハミング音で集って合唱するの、一緒に歌おうって。
これは科学よ。その歌は勿論人には聞こえないけれど、実在するもの。人間が見えない聞こえない事、それを否定する事がそもそも非科学なのよ。」
「あぁ……そういえば昔、近所の木に聞いた事がある。木は地中の根のネットワークでやり取りしてるんだって。さながらそれは回覧板みたいに情報は伝達されて、だから、木は動けないけど逆に物知りだって教えてくれた。」
メイは優しく微笑んだ。
「あなた面白いわね。科学者の血が騒ぐわ。ホワイトの言っていた意味が初めてわかったかも。」
メイの口からホワイトの名前が出て、しぶ子はまた驚いた。
ホワイトは、傍に必ずいた存在で、いわば自分の守護霊みたいな存在だと、そんな漠然とした目線でしか見た事はなかった。
「物語の中で、上層部とか出てくるけど、上層部ってそもそも何なの?ホワイトはその上層部なの?一体何者なの?」
「私にも守秘義務と契約があるから、あまり語れないけど、ホワイトはそれで構わない。そして私もこう見えて上層部のはしくれなのよ。階級は一番下だけど。」
「余計わからなくなってきた。」
「またその話は、全て終わったら女同士ゆっくりとおしゃべりしましょう?」
「全て終わったら?」
「そう、全て終わったら。」
そう言うと、メイはウインクをして居なくなってしまった。
「うわ、滅茶苦茶消化不良なんだけど。」
しぶ子は不満気に、呟いた。




