表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『海人と柊』~女装男子~  作者: なにわしぶ子
59/74

59話~Jとの初対面~


2019年11月24日、日曜日の午後

その日は秋晴れのとてもいいお天気だった。


しぶ子はふと思い付いて、紅葉を見に、とある名所である寺院を訪れていた。


一眼カメラを持ってきたら良かったなぁ……


スマートフォンのカメラ機能で、鮮やかな紅葉の景色を切り取りながら、しぶ子はカメラを持ってこなかった事を、とても後悔した。


まるで、落ちてきそうな真っ赤な紅葉の絨毯を見上げながら歩き進むと、突然大きな巨石で造られた庭園が、目の前に現れた。


圧巻な景色に圧倒されながら、しぶ子は動画を撮影する事にした。


折角写真や動画を撮ったし、あとで日記を投稿しておこうかな。


そんな事を思いながら、この壮大な石庭の由来を調べる事にした。するとそれは実は元々は古墳で、それを生かし庭として生まれ変わった事を知った。


なんだか私、女装男子の影響でどんどん古墳マニアになってきてるかも。

偶然にしては、出来すぎたこの流れに苦笑いしながらそういえば海人、今日は話しかけてこないなどうしたんだろう……そんな事を考えつつ、その名所をあとにした。


帰宅したしぶ子は、早速撮影してきた写真や動画を日記投稿する事にした。


いつも読みに来てくれる友人と、その話題でやり取りをして、しぶ子は平凡で平穏な時間を過ごした。


太陽が沈みそんな平和な日曜日が終わる頃、今日撮影した写真を見返しながら、しぶ子はゆったりと休日の終わりを寛いでいた。


「海人??いないの?」


しぶ子は、空中に向かって声をかけてみた。

あらゆる感覚を研ぎ澄ましてみたけれど、気配は感じとれなかった。


「忙しいのかもしれないな。」


しぶ子は、そう言うと明日からまたはじまる

1週間に備えて眠りについた。






11月26日-


昨日も海人来なかったな、どうしたんだろう……

そう思いながら、しぶ子はいつもの様に職場への道を急いでいた。


すると突然、


「はじめまして、しぶ子さん。」


いきなり、聞き覚えのない男性の声が聞こえてきた。


え?幽霊?でも私の名前を知ってるし、はじめましてとか、名前にさんとか付けてるし、でも、この声の見えない存在に心当たりはない……多分……

ひょっとしたら紳士に見せかけた、厄介な霊かもしれない……まずは慎重にいかないと……


しぶ子はいつもの癖で身構えながら、まずは返事をしてみた。


「ん?誰?わからないんだけど。」


「ははは、わかりませんか?」


「え……誰……???」


「ここからは海人さんには、少し説明が難しいと思うので、僕から話をさせて頂きますね。」


「え、待って?海人の事を海人さんって呼ぶ人を、私、海人から聞いて進めている、物語の中の登場人物の中で知ってる気がする。え……そんな………、ちょっと、頭が混乱してきた!!」


「無理もありません。でも僕に任せて下さい♪」


「うわ!そのフレーズにも聞き覚えが!!あぁそれは、完全に予想外。。は!はじめまして!!難波(なにわ)しぶ子です!」


「はは、はじめまして♪僕の名前は……」


「な、名前は……?」


「J ♪」


しぶ子は完全にその場で立ち止まってしまった。


「しぶ子さん、まずは仕事へ遅れてしまうから行って下さい。終わる頃にまた来ますね。そこから、物語の続きを聞いてもらえると嬉しいです。

ちょっと僕が、前世を通じてのパイプを見つけるのに手こずってしまって、でももう大丈夫ですから。」


「え?何の話?」


「いえ、こちらの話です。さあ早く!」


しぶ子は、本当だ遅れてしまうと我にかえると、とりあえず職場への道を急いだ。






「暫く、僕の言う通りにしてもらえますか?」


「なんかわからないけど、わかった。」


「有り難うございます♪」


仕事から帰宅したしぶ子の目の前には、自分より背が少し高いくらいな、小柄で童顔で少年の様な、細身の白衣を着用した男性が微笑みながら立っていた。


「ところで僕、一応拒絶されない様に序盤の服装の白衣を着てきたんですが、イメージとはあってましたか?」


「うん、服装はイメージ通り。あと、思ってたより童顔だったかも。海人よりJって年下なの?」


事前に海人からのストーリーの中で存在を聞いてきたからか、いきなり現れたJにしぶ子はすぐ慣れて、昔からの知り合いの様に接した。


「いえ、僕の方が全然年上です。勿論、海人さんの眠っていた100年はカウントしないが前提ですが。」


しぶ子はそれに驚きつつ、ずっと聞いてみたかった事を聞いてみる事にした。


「えっと……Jの名前って長いんでしょ?私!聞いてみたいかも!」


「かまわないですよ。僕の名前は……」


そのあと、つらつらと名乗り出したJの名前を途中まで覚えようと試みたしぶ子だったが、すぐに覚えるのを諦めた。


長い………長すぎる……

海人はそれをタイムリープの直前に、それも一度で覚えたんだっけ、私の来世って凄くないか!!??私には無理だわ。

 

そんな、自分で聞いておきながら、勝手に悶絶するしぶ子だったが、少し間を置くと、ずっと気になっていた事を口にした。


「Jと海人は、生きてるんだよね?」


そもそも自分にしか視えない存在。

来世だと名乗る存在が、今、この同じ時を生きている事自体が理解が出来なかった。

いや、来世だから死んでから来る方が不自然でもあるのかもしれないけれど、時間を共有すればするほどに、情が移る程に、色々不安に襲われてくるのが正直な本音だった。


「生きています。古墳に今はいます。」


生きているの言葉にほっとしたしぶ子だったが、今度は海人とJが普段は古墳にいると知ると、軽く混乱した。


「もうそれが全く意味わかんないんだけど。」


「今までの話は理解出来ていますか?」


「ストーリーの流れは多分わかった。ラノベ風味な事をなんで今書いてるのか?全くその意味はわかってないけど。」


「今はわからなくて大丈夫です。」


「つまりあれでしょ?現在進行形なんでしょ?このやりとりも、書き始めたこの小説の中に、いずれ出てくるんでしょ?」


「出来れば2019年の間にそこまで持っていってほしいんです。」


「小説執筆スピードを急げって事?でも、どうかな。内容の量によるかも?私がもたもたしがちだし。でも何で?急かす理由が何かあるの?」


「そうしないと……歪むんです。」


Jは、海人を想いながら、しぶ子には悟られない様な理由を即座に言った。


「歪むって何が?まさか時空とかが??」


「今はわからない方がいいです。とりあえず、柊さんに会わせてあげたいんです僕。海人さんに笑顔の柊さんを。」


Jの真剣な想いを、物語の中の登場人物の言葉ではなく、直接目の前で聞いたしぶ子は、心を鷲掴みされる様な気持ちになった。


「それは、私もそう思ってる。これが壮大な妄想でも、結末はハッピーエンドがいいな。」


「僕、逆にこうなって良かったと思ってるんです。恐らく、遠回りが願いが叶う一番の方法だったんです。まだ、油断は出来ませんが。」


「って事は、まだ旅の途中確定なのね。遠回りか、、急がば回れって事?ところで、海人は元気?

あれだけいたのに、Jが来てから、全くコンタクト取れなくなると、それはそれで不安になる。」


Jの言葉尻から現在の様子を汲み取りながら、しぶ子は直接海人の事を聞いてみた。


Jは全然心配いらないというような、満面の笑顔を浮かべた。


「元気ですよ。あんな調子で相変わらずです。海人さんとコンタクト取れなくなったのは、前世のしぶ子さんと魂が同じだからです。僕が離しました。

長時間だと、意識を乗っ取ってしまって同化してしまい、戻れなくなるので。」


Jは理由のひとつを説明し、本当の理由は悟られない様に、顔に出ない様につとめた。


「うーん、頭がついていけなくなったからもういいや。とりあえず、言う事を聞くって私は何をしたらいいの?」


「僕の話を聞いて物語を引き続き執筆してください。あとはホワイトさんと協力して、声かけはするので。自然体でいてくれるだけで大丈夫ですよ。」


「え……そんな……ホワイトって……守護とJは話せるの?

もうなんか私の固定観念が色々崩れ落ちていくんだけど。」


Jの口からホワイトと、自分が守護と呼ぶ存在の名前を聞いて、しぶ子はさらに混乱し始めた。


「しぶ子さんが今手にしている、スマートフォン端末。

未来からすると、それはもはやおもちゃです。でも弥生時代からしたら魔法に見える。見る人でその世界で、ガラリと変わる

ただ、それだけなんです。」


「だから、やわらかな心?ホワイトにね、さっきそう言われたの。私はちゃんと、前へ進めてますか?」


「進むように僕が誘導します。僕に任せてください。」


「でた!Jの決まり文句っ!」


しぶ子があまりに大声で言ったせいで、Jは思わず声を出して笑っていた。


声を出して笑ったのなんて久しぶりすぎて、そんな自分に驚いたりしたけれど、笑顔の心地よい魔法にかかった自分の余韻に、色々は一瞬忘れて暫く浸った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ