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『海人と柊』~女装男子~  作者: なにわしぶ子
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58話~渡されたバトン~



「メイ……何で君がここに??どこから??」


Jは懐かしい同士を見上げて混乱しながらも、頬から伝わるメイの手の温もりに、みるみる心が楽になっていくのを感じていた。


するとメイは、微笑みながら触れていた右手を離すと、あちらからと言うように空間を指差した。


そこには、しぶ子と繋がる21世紀への扉とは別の扉があった。


いきなり現れた第2の扉。

どういう事なのか全く状況がわからないJに、メイはゆっくりと説明をはじめた。


それによると、その扉の向こうはJがいた世界、即ち柊が未だに目覚めない未来の世界と繋がっているという事だった。


そして、その扉を通じ、この空間と元の世界とを繋いだのが、海人としぶ子が今刻んでいる言霊の力だという事。


メイは、上層部に掛け合ってやっとここに来てもいいと許可をもらってやってきたという事。

その許可が出るのにかなり手こずった事等を教えてくれた。


「この空間、ホワイトさんは時空の狭間だって言ってたけど、じゃあここは時を越えた世界と世界を繋げる、いわばワームホールって事でいいのかな?」


Jは新しく出来た2つの扉を交互に見ながら、自分の考えを語った。


メイはその通りと言うかの如く頷いた。


「ワームホール、りんごの虫食い穴。すなわち時と時を繋ぐトンネルね。ここには時間って概念がそもそも存在しない。いや、逆に存在しすぎるのかもしれないわ。」


「古墳の中心の光の渦に飛び込んで訪れたこの場所。ここがワームホールなんて考えもしなかったよ。じゃあ、ここは一体何処に存在してるって言うんだろう?」


Jは溢れ出る疑問の渦に飲み込まれそうになった。

宇宙や時空や科学には本当にゴールがない。


「ここは古墳内部よ。それで間違いはないわ。」


「え?じゃあ何時代の?」


「時間自体を完全に忘れてちょうだい。ここは古墳内部、そして何時代とかの概念はもはやここにはないのよ。」


「僕もメイに劣らずトップクラスな自負があったのにな。つい、色々を証明させないと気が済まない自分がいる。わかったよ、今こそ頭をやわらかくだね。」


Jはメイの話を聞き、脳内の整理をした。


今いるこの謎の空間が、とりあえず古墳内部だという事。

そしてここはどうやら、ワームホール、時空を越えて

移動が可能なそんな場所らしい。


そして、点で存在するそれぞれの世界と世界。

理屈を越えて、それを引き寄せる事ができるのが言葉が持つ力、言霊の力。


それがどんな仕組みでそうなるのかとても興味深い所だけど、きっとそれは些細な事で、考える事自体がそもそも無意味なのかもしれない。


でもこんな事が出来るならば、そもそもマシンこそいらないし、上層部は何故この存在自体を伏せてきたのか?

いや、逆に自分みたいな間違いを起こす人間が現れた時用の救済システムなのか?保険のようなものなのか?


次から次へと湧き出る疑問がJの脳内を支配しはじめ、Jはひとつ、大きく息を吐いた。


「気持ちはわかるわ。ひとつ言える事は、地球は宇宙にある星のひとつに過ぎなくて、宇宙はひろくて、そしていつも理不尽って事よ。」


メイはそう言うと、眠る海人に近寄りそっと左頬に触れた。


「J、海人を今日からしぶ子と接触させないでちょうだい。」


「でも、まだ物語はタイムリープのあたりまでしか進んでないよメイ。」


「このままだと海人は【木】になるわ。」


「木??え?樹木の??」


メイの口から出た想定外な言葉に、Jはもはや思考が停止してしまった。


「このワームホールにいる事の副作用と言ったら分かりやすいかしら。ここには、時間って概念がないけど、逆にあるとも言えるの。いわば自由なテリトリーなのよ。」


「自由なテリトリー。。」


「自由は不安定とも言えるわ、だから身体の細胞が突然変異を起こしやすいの。DNAはいわばデータの貯蔵庫。人って樹木と50%DNAが同じだけど、海人は元々が80%樹木と同じ存在なの、だから樹木にしかわからない周波数も拾える、だからシックスセンスの持ち主なわけだけど、ここに居る事でDNAが混乱しはじめたの。自分は人間ではなく、樹木なんじゃないかって。」


「海人さんの中の、樹木と同じDNA部分が人だと記録されたDNAを侵食してるの?そっか、刺激で病の細胞が拡がる原理と同じなら、刺激は控えた方がいいね。」


「あなたもね、J。今日の注射はちゃんと自分に打ったのかしら?」


Jはいきなり見透かされて、思わず自分の身体を見回した。


「大丈夫、ひろがったりしていないわ。私に嘘はいらない。その注射で進行は止められるはずよ。

それに、あなたは樹木DNAが多い海人ほどひどい事にはならないと思ってる。

海人の場合は、現在こんな風に仇になっているわけだけど。」


「わかったよ。海人さんは暫く安静にする。ただ、問題はしぶ子さんだな。」


「そこで相談なんだけど、J、あなたがしぶ子に続きを話にいってくれない?」


「僕が?前世でもないのに、そもそもコンタクトが取れるかな??」


「しぶ子も海人と同じ魂、拾う事が出来る存在。精度は少し落ちるとは思うけど、恐らく大丈夫なはずよ。しぶ子は日常の中で、Jの前世と面識が既にあるわ。その意識のパイプを使えばおそらく可能よ。」


「僕の前世が、意識のパイプを通して仲介役になるのか。」


「ずっと見てきたJ、あなたしかこのバトンの続きはこなせないわ。Jの前世の無意識層に働きかけてみて?周波数を合わせるの。」


「わかった、何とかやってみるよ。だから、海人さんを任せたよメイ。」


「僕に、任せて下さい♪」


メイはわざとJの口癖で返事をした。


苦笑しながらJは身支度を整えると、初めての21世紀への扉をくぐった。




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