50話~本編の告白~
「何だか楽しそうですね、海人さん。」
Jは、今日もしぶ子の所へ行く準備をはじめた海人の
傍にきてそう声をかけた。
相変わらずのウィッグにスカート、今日はサングラスなんてつけた海人がそこにいた。
「ホワイトのじいさんが、魔法使いみたいにアイテムを揃えてくれてるんだもん、そりゃあ女装男子としては気合いが入るよ。」
「まぁ僕の時代だと、男性はみんなそんなファッションで時代の最先端なんですけどね。
21世紀や海人さんの時代では、まだまだ女装ってカテゴリーになる事に僕は興味があります。
それに、僕もたまにはお洒落がしたくなりました。」
海人とは真逆に、最近は未来の科学者コスチュームに身を包んだJが少し羨ましそうに言った。
「確かにここにずっとだと煮詰まるよね。俺の代わりにJがしぶ子の所に行ってみるってのはどうかな?」
「しぶ子さんと海人さんは同じ魂だから、コンタクトがスムーズに取れるのだと思います。僕は逆にしぶ子さんに負荷をかけてしまうかと。」
「そういえば、長時間は俺でも駄目だってホワイトも言ってたもんね、無理は禁物って事か。とりあえず、そろそろ詳細を話し始めたいし、今日も授業頑張ってくるよ。」
海人は手慣れた様子で、いつもの様に扉をくぐり出ていった。
Jはそれを見送ると、またふたりの様子を確認するべくスクリーンを出し、画面を見ると同時に色々と記録をはじめた。
◇
「私、物理と化学は欠点だったのに!!なんでこんな事になってるんだ!!」
しぶ子は、海人からレッスンを受けながらいきなり頭をかきむしったかと思うと、室内に響き渡るほどの奇声をあげた。
「あぁうるせー…もういい?次いくよ!!
次は、パラレルワールドについて調べてみて♪」
海人はタブレットにリンクアドレスを打ち込むと、しぶ子に手渡した。
すると、今までの時とは違いパラレルワールドは、確信出来る様な過去経験があったらしく、しぶ子は柔軟な姿勢をみせた。
知らないから、怖かったり信じられなかったりするもので、きちんと頭の中で整理が出来る様に理解さえ出来たら、人ってどんな事も受け入れられるものなのかもしれない。
海人はそんな事を考えながら、しぶ子の一挙手一投足を傍で見守った。
しぶ子は難解な授業の連続の中で、色々新しい知識が増える事で、夢物語だとばかり思っていた事が、実は科学的に証明出来なくもないという事を知っていった。
「パラドックスの辻褄合わせっぽく思われるけど、世界観を知る上では、パラレルワールドが一番わかりやすいはずだよ。」
海人は、しぶ子が躓く度に、補足する様な言葉をかけた。
「そっか……同じ世界にありさえすれば?隣り合わせにありさえすれば?過去にはいけるって事なのかな?この場合だと、過去みたいな世界?文明?少し遅れ気味に進んでる世界って事になるのかもだけど。。うーん。。。」
「頭を柔らかく考えて。人間が想像出来る事は必ず可能なの。逆に可能だから想像出来るのよ。」
「頭を柔らかく……って言われても。つまりは、一つのワールドに2019年の今の世界と、戦国時代みたいな世界が
平行に時を進めていたら?扉一つで移動も可能かも?って事?余計にわからなくなったような。
でも、女装男子が今ここにいるのも、おかしくはないって思えてはきたかも。」
嬉しそうに発するしぶ子を見て、海人は笑顔になった。この感じならそろそろ詳細を語りはじめても、最初の頃の様に拒絶はしないかもしれない。
「なかなか頭ふにゃふにゃでいいんじゃない?
じゃあ、今から本編を聞いてもらおうかな♪」
「本編?」
しぶ子が問い返すと、海人は自分のウィッグをゆっくりと取り去り、服を脱ぎはじめた。
癖毛の、ウェーブのかかった短髪で上半身裸の男性が目の前にいた。
「なんでいきなり、今度は男アピール?本当意味わかんない。」
「いや、なんかこの姿で話す内容じゃないなって思ったからさ。」
海人は少し照れくさそうにすると、しぶ子の目を真剣に見つめ、そしてゆっくりと語りはじめた。
◇
それは、今から少し未来のお話
昔から、祈祷とか神降ろしとか
それはどの世界でもあったもので
日本だと、いわゆる巫女とかがいたわけ
この時代の巫女さんは少し本来の意味と
ズレちゃってるからあれだけど
巫女の本来の意味わかる?
なんで神とか霊とか会話が出来る人間が
いつの時代にも現れたのか
それには深い意味があるらしい
しかしながら、会話が出来るって面倒だよねぇ
自分の思い通りに生きられないもんね
それは、しぶ子が一番身に染みて
わかってるっしょ?
絶対に逃げられないしさぁ……
逃げても逃げても逃げても逃げても
でも見つかっちゃう
そして、逃げられないを悟る
俺もわかるよ、同じだったからさ
あなたは【点】なんだよ
わかる?
他の人にはなれない【点】
あなたは、その【点】になれるわけよ
【点】と、もう1つの【点】との間に
【線】を作る事が出来る
その応用が、いわゆる盛り塩とかなんだけどね
まぁその話は今は別にいいや……
【線】は、いわゆる【道】になる
【道】は行き来が可能になる
ここまでは、理解おっけー?
じゃあどんどんいくよ?
行ったり来たりが出来たらどうなる?
そこに色々が生まれるよね
ようはそれが【変わらないもの】
どんな事があっても【不変のもの】
じゃあここからが本編だからね?
耳の穴をかっぽじいてよく聞いてね?
俺はあんたの来世に生まれてくる存在ね
俺はあなたの後に、生まれおちた
本体の一部のパーツ
一生を終えて、また本体に戻る予定だった
これが、いわゆる【輪廻転生】
それが、俺の生まれた未来
あなたの次の来世
今よりもっと科学は進歩していて
そこで、ある重要な実験が行われたわけ
俺は仮死状態にされて、眠りについた。
いわゆる、コールドスリープってやつね
裸の状態で、白い薄いバスローブみたいなのを
着せられて、銀色の箱に入った
そして、さらに先の未来に起こされる予定で
何かしらの役に立つはずだった
選ばれたのは光栄だとか、なんとか
確か、もてはやされた
上層部から確か、六文字の何かを贈られたけど
それは忘れちゃったな……
そして、そのままさらに時が流れた
同じ時代に生きていた同僚、仲間は死んで
その跡を継いだ人間達によってミッションは引き継がれ
俺は守られ続けた
何もかも停止した状態で、腐る事もなくそのまま
俺は老いる事もなく-
そこに居続けた-
100年後、やっと俺は目覚める事になった。
でも、その時代は既に俺が生きていた時代より
科学が進歩していた
だから、折角だし新しい実験の被験者にしようって
話になったみたい
いわゆる、モルモット
失敗しても、遥か昔の俺が消えた所で?
この時代にはなんの支障もないもんな
ね?人間って残酷だろ?
「予想をはるかに越えてきた。どうしよう。」
そう一言呟くと、しぶ子はそのまま黙りこんでしまった。
柊のくだりは、まだショックを与えてもいけないとわざと伏せて話をした海人だったか、しぶ子の様子を見て、それは正解だったと思った。
「ゆっくりでいいからさ。。」
海人は、しぶ子にそう声をかけると、黙りこんでしまったしぶ子の傍で、しぶ子をずっと見つめ続けた。




