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『海人と柊』~女装男子~  作者: なにわしぶ子
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49話~タイムトラベル授業~


「とりあえず、しぶ子さんに今までの話をまずは

理解してもらいましょう。その中で、毒リンゴがひょっとしたら見つかるのかもしれません。」


Jは、そう海人に声をかけた。


海人は暫く考えこんでから立ち上がると、両手で自分の顔を気合いを入れるかの様に、二度叩いた。


「うん、消滅はごめんだよな。今からまたしぶ子の所に行ってくるよ。ゆっくり、まずはタイムトラベルとかそのあたりを知ってもらおうかな。

21世紀人の、ましてや科学者でもないしぶ子には、なかなか難解かもしれないけど……彼女が俺と同じ魂なら、きっと知ろうとしてくれるはず。」


「この時代だと、動画がいいかもしれませんね。この時代は動画投稿が盛んになってきた頃で、本よりも分かりやすく解説されている物も多いようです。

今、ざっと調べてみたんですが、ここと、あとこのあたりはどうでしょう?」


Jに促されて覗いた端末には、パラドックスやタイムトラベル、パラレルワールド等の解説動画が表示されていて、海人は思わず内容に見いってしまうほどだった。


古墳の本は難しいと言っていたしぶ子でも、これなら娯楽感覚で見てくれるかもしれない。


「有り難うJ、やれる事は何でもやってみるよ。」


そう言って海人は、その動画へのリンクアドレスを記憶すると、早速扉をくぐり、しぶ子の所へと向かった。





「あ、女装男子いらっしゃい。」


しぶ子はもはや慣れてきたのか、普通な対応をしてきた。


「何だか拍子抜けしちゃうな。ところでしぶ子、何となくぼんやりはわかってきた?」


海人は茶化す様に、明るく問いかけた。


「うーん……ぼんやりだけどね。つまりは未来人の女装男子が、弥生時代に何故か行っちゃって?今はこの21世紀にいて、つまり、さ迷ってるんだよね??」


しぶ子は色々混乱しつつも、ある程度のパーツは拾えている感じだった。何とか、理解しようとしてくれる事に海人は感謝した。


「実は私、5年前くらい前に、とある視える人に言われた言葉があるの。ふとこの間急にそれを思い出して、その言葉の謎がなんか全部繋がったかも。」


「そんなシックスセンスの持ち主が知り合いにいたんだ。で、しぶ子は何って言われたの?」


「あなたには来世はない、って。は?って思ってきたけど、それだと全て辻褄があうなって気づいたの。」


「へぇ……そうなんだ……。」


海人は、狼狽したのを自覚しながら、それをしぶ子には悟られまいと無理矢理笑顔を作ってみせた。


「あと、誰かわからないけど近くにタイムトラベルを繰り返してる人がいる。だったかな。それも言われた。

だからね、暫くその人とその、タイムトラベラーを探してた時期があるの。

結局わからなくてうやむやになっちゃったんだけど。

でも、女装男子が本当に未来人なら?その時はそこまでお互い受信出来てなかっただけで、それ…私の来世だったって事なのかなぁって。」


「え、待って。しぶ子はそれ信じたの??」


自分の事を全否定してきたしぶ子から意外な話が飛び出てきて、海人は思わず突っ込んだ。

すると、しぶ子は顔を横に振った。

勿論信じる事はなかったけれど、ただそのシックスセンスの持ち主の知人が、あまりに真剣でいたものだから、実際そんな不思議な事は、本当にあるのかもしれないと、そう思ってはいたとの事だった。


すると、しぶ子が語りだした。


「まぁなんか色々思い当たる事を思い出して、色々繋がって少しダメージ受けたのが本音。

そんな私の来世の?女装男子が今、目の前にいるわけだし、逆に考えたら好機なんだよね?

自分の来世が、弥生時代の台与って歴史に刻まれてたりとか、頭おかしい通り越して完全にフリーズしてるけど。

それに、女装男子が私の所に来るのは、私に何か

してほしいからなんでしょう?で?これからどうしたらいい?」


しぶ子の予想外の言葉に、色々な気持ちが交錯した海人だったが、心を落ち着かせると早速しぶ子に、お願いをする事にした。


「うん、パラドックスを学んでほしいかな。」


海人はしぶ子のタブレットを手に取ると、暗記してきたリンクアドレスを打ち込んだ。


タブレットに、パラドックスの解説動画が流れ始めた。


「パ、パラドックス??なんか聞いた事あるなそれ。うわ、難しい……頭から煙が!」


「ここはしっかり、理解してね。」


「わかるようなわからんような。もっと簡単にお願いします!」


泣き言を言いながらも、知ろうとしてくれるしぶ子に対して、申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、海人はまた違う動画をみせた。


「じゃあ、次はこれがいいかな。」


それは、アニメ動画で、電池切れし再度動かす事が不可能だと宣告されたロボットを、時間をかけて動かす事に成功するという

ストーリーだった。


「私、このロボットと同じなの。」



海人はそのロボットと柊を重ねると、まるで柊の言葉を代弁するかの様に言葉を発した。


全く意味がわからず、しぶ子は困惑しながらも、海人の憂いを帯びた空気を察して、黙りこんだ。


「そう思って、もう一度これをみて?お願いだから。」


しぶ子は言われた通り、その動画を見た。

見終わった後も、色々を汲み取ろうと、何度も何度も繰り返し再生し続けた。


そんな一心不乱な姿を傍らで見ていた海人は、いつしかしぶ子を見つめながら穏やかな顔で微笑んでいた。


「しぶ子ってなんか掴めない。嫌だって言ったと思ったら、真剣に取り組んでくれるし。

気持ちがコロコロ変わるんだもん。それか、少しは俺の事を信用してくれたって事なのかな。」


「情が移っただけよ。」


「なんだよそれ。」


ふたりは顔を見合わせると、笑いあった。

 


ひとしきり笑ったあと、


「まだまだ、勉強タイムはこれからだ!!」


そう海人が威勢よく叫ぶと、しぶ子の目が点になった。


「面食らった顔してないで、どんどんいくわよ。」


海人はその後も、時間の限り知識の伝達をした。

そして、しぶ子もそれに応えた。


混乱しながらも、タイムトラベルや、その他の

知識を学ぶ、そんなふたりの学習タイムが続いたのだった。




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