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『海人と柊』~女装男子~  作者: なにわしぶ子
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48話~白雪姫~


「なんか落ちこんできた。」


しぶ子の元から戻ってきた海人は、Jにそう告げると床の上にうつぶせに寝転んでしまった。


自分がいわゆる、歴史の中では弥生時代【台与】と記録されている、謎に包まれた人物だとしぶ子に明かした海人だったが、その告げ方があまりに傲慢で自己嫌悪に陥ってしまったのだった。


そんな海人の凹みっぷりに、苦笑しながら、Jはサプリメントを一粒掌に乗せてうつぶせになっている、海人の顔の前に差し出した。


「まずは食事?」


海人はそう言いながら、それを受けとると起き上がり、スカート姿であぐらをかきながら、口の中へとサプリメントを放り込んだ。


「海人さんがしぶ子さんに会いに行ってる間に、ホワイトさんがこの空間を色々生活がしやすくしてくれたんですよ。だから、少し休息を取るといいかもしれません。」


海人がぐるりと見渡すと、Jの時代の室内かと錯覚するほどのルームが、そこにはひろがっていた。


はじめはただ、真っ白な空間だったのがいつの間に?

海人はそう考えつつ、上層部の力や権限、その他謎の多いホワイトの意図を汲みかねた。


もはやここは、自分の生まれた時代、いや、それより先のJの時代にしか見えない。その上、マシンで移動の法則すら飛び越えて、扉をくぐると21世紀のこの空間は、一体何世紀だと言うのだろうか。

つまりここも21世紀なのだろうか?でも、もしそうならぱ、しぶ子にしか視えないのはどうしてなのか。


「ねぇJ。しぶ子にしか俺の姿が視えないのはさ、俺がもう幽霊だからなんて事ないよな。」


疑問のループの果てにたどり着いた結論を、海人は他人事の様に呟いた。


「実は僕もぼんやりと考えていました。ここがいわゆるあの世の世界で、僕達はあの光の渦に飛び込んだ時に亡くなっていて、今も尚気づいてないって事ですよね?」



『似て非なるもの』


すると、いきなり声がしたかと思うと、ホワイトがそこに立っていた。


「うわ!!!幽霊かと思った!いつもいきなりは止めてよ心臓に悪いって!!」


海人はそう言いながら、あぐらをかいたままの姿勢で体をホワイトの方へと向けた。


『簡単に言うと、時空の狭間。ここは色々自由がきくので召還しただけ。あまり深く考えず、今は利用すればいい。ところで、しぶ子とのコンタクトはどうだ海人。』


「正直手こずってる。それに、これが一体何になるの??しぶ子に理解してもらったあとに、柊の前世に何か働きかけでもしてもらうの?」


海人は正直な今の気持ちを吐露した。


『お前の前世であるしぶ子と海人、お前の魂は同じ。即ち、お互いが多大な影響を受け合う。

今のお前は、本来のルートからはずれ、いわば魂が迷子になっている状態。このままではお前の存在自体が薄れて行き、お前の魂は自然消滅をする。』


「消滅……?待ってよ………マシンで帰ればさ、ルートに戻れるって。」


『柊が戻らない世界が続く限り、お前は何度も何度も過去へ戻り続けるだろう。違うか?』


海人は言葉を失った。

その姿をホワイトは暫く黙って見守ってから、今度はゆっくりとJに歩みより、目の前に立った。


「つまり、それは僕もって事ですよねホワイトさん。」


Jは、顔色ひとつ変えず、淡々とそう言葉を発した。


ホワイトはその言葉を聞かなかったかの様に背を向け


『後悔する暇があるなら、根源を変える事に時間を割けばいい。』


そう言って、空間にスクリーンを出した。

その映し出された映像の中には、今も尚装置の中で

眠り続ける柊の姿があった。


「柊!!!」


海人はスクリーンに駆け寄ると、

決して今は実際に触れる事が出来ない柊の顔を 両手で撫でる様な仕草をしながら、今にもこぼれそうな涙が流れ落ちるのを堪えた。


『柊が何故、コールドスリープ後、過去をいくら変えても炭化したり眠り続けるのか。そこに着目すれば、道は自ずと拓けるだろう。』


ホワイトはそう言うと、出ていってしまった。


「なんで起きないんだよ柊。白雪姫じゃないんだからさ、お願いだから起きてよ。俺が消滅したら、誰が柊の毒リンゴを出すんだよ。そんなのないって……救いがないって……。」


海人は絶望にうちひしがれながら、スクリーンの中の柊に語り続けた。



「毒リンゴ………。何故そうなったかの原因。

それを排除さえ出来れば、白雪姫は目覚めるのかも……。」



黙っていたJが、海人の言葉で何かを閃いたのか

そう呟いた。



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