45話~古墳の本を探せ~
「古墳はお墓じゃないなら、一体何なの?」
しぶ子はそう言うと、頭を抱えてぶつぶつと何かを呟きながら、扉に引き返し、元の世界に早々と帰っていってしまった。
部屋に取り残された海人が、呆然としているとJが駆け寄ってきた。
「ここから、僕は経緯を見ていましたが、なかなか受け入れてもらえなさそうですね。」
「まぁ普通はそうだよな。こんなのが目の前に現れたら普通は、信じないよね。
いきなり、俺はあなたの来世だ!なんて言っても、あの調子だと信じてもらえないだろうし、どうしようかな。
とりあえず、一通り説明するにしても、古墳とかタイムトラベルとかの知識が無さそうだから、まずは、そこからかな。」
「さっき見ていて気がついたんですが、彼女の部屋に本があったんです。色々を話す前に、古墳とかの本で色々知識を知っていてもらうと、話をしても理解してもらいやすいかもしれません。」
「この時代は、まだ本は紙のものもあるんだっけ?予習か……確かにそれがいいかもしれないね。」
すると、扉からホワイトが現れた。
『彼女とコンタクトを無事取れたようで何よりだ。この扉を好きな時に使うといい。彼女と繋がる事が出来る。
但し、長時間は弊害を生む。短時間でとどめる様に。あと、Jにはこれを。』
すると、何もない室内に、端末等を備えたデスクが現れた。
『それで、調べものぐらいなら出来るだろう。』
そう言うと、扉から出ていってしまった。
「毎度ながら、意味不明で素っ気ないよな。」
海人が不満気に言うと、Jは微笑みながら早速その端末で色々を調べ始めた。
「しぶ子さんの家の近くの本屋に、古墳の本がかろうじて1冊売ってるみたいですね。
海人さんが、購入を誘導してみるといいかもしれません。あと、このスイッチかな?」
Jがスイッチを押すと、扉から帰ってしまったしぶ子がまた、室内のスクリーンに映し出された。
どうやら何処かに出掛けるのか、身支度をしている。
「古墳の本から、まず古墳を知ってもらって、そこから色々俺の話を聞いてもらおうかな?わかった行ってくるよ。」
そう海人はJに告げると、また扉を通り、しぶ子のいる世界へ移っていった。
◇
「うわ、また来たんだ!!」
また目の前に現れた海人に気がついたしぶ子は、あからさまに嫌な顔をすると、無視して食料品が売っている店へと向かい始めた。
「ねーねー、最初に本屋さんへ行きましょうよ。」
海人が、しぶ子に着いていきながらそう提案をした。
「本屋?まさか、古墳の本を探せとか言うんじゃないでしょうね。」
「ご名答♪さすがしぶ子ちゃん!話が早いわぁ♪」
海人の明るい口調に、観念したのか
「まぁいいや。私も少し気になるし探してみますよ。でも、古墳の本って……ある???見かけた事ないけど。」
ぶつぶつ言いながら、しぶ子は本屋に到着すると古墳の本を探し始めた。
思ったよりもすんなりと言う事を聞いてもらえた海人は、だんだん嬉しくなってきた。
「いいからいいから♪早く早くう♪」
海人に明るく声かけされながら、しぶ子は、歴史コーナー、参考書コーナーをまわってみた。
古墳に関する本は見当たらなかった。
「ない!諦めて私はもう食料品を買いに行きます!」
しぶ子は早々に諦めると出口に向かいはじめた。
Jから、かろうじてここに1冊、古墳の本があると聞いていた海人は慌てた。
何なんだよこの前世、諦め早すぎ。どうにかして古墳の本を見つけてもらわないと、どうしたらいい……どうしたら……
「あ、あるって言ってんだろおお!!」
気づくと海人は、低音の男声で、威圧する様に叫んでいた。
しぶ子はピタリと足を止めた。
「女装男子!こんな時だけ男に戻らないでよ!探しますよ!!探せばいいんでしょー!!!」
そう言うと、店内へ戻りまた探し始めた。
暫くして、しぶ子がおもむろに視線を向けると
その棚に、秘密の古墳という本があった。
「あったわーーーっ!!!」
しぶ子は達成感に満ち溢れながら
本を手に取ると、まずは値段の確認をした。
「1630円って……それだけあれば、大好物のビールが何本買えるだろう。止めておこう。」
「ここまで来てそれはないって、買いましょうよ!!折角じゃないの!」
海人は、あまり刺激しない様、また柔らかな高音の女性口調に戻しながら、更に食い下がった。
「そこまで言うって事は、何か訳があるのかな。」
しぶ子は、暫く考え込んだあと、その古墳の本を購入した。
「よし!準備OK☆ゆっくり一緒に紐解いていきましょうね♪まずは晩御飯のお・か・い・も・の♪」
海人の嬉しそうな声に耳を傾けながら、しぶ子は購入した本を鞄に仕舞ったあと、こう言った。
「ここまで来たら一緒に紐解くわ。その代わり女装男子、今から買い物に行くし、晩御飯の献立考えるの付き合ってよね!」
そう言われた海人は、あまりに平和な会話に忘れかけていた、日常の温もりを感じながらコクりと頷くと、しぶ子と一緒に並んで
歩き始めた。
「うん全然いいよ、俺……カレーがいいな。」




