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『海人と柊』~女装男子~  作者: なにわしぶ子
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41話~飛鳥時代の前世~


「なんだかデジャヴみたいだな。」


銀色の装置に、女装のまま横たわった海人は、Jによって色々またコードをつけられていた。


「今回も1時間で強制的に戻します。いくら魂が同じでも負荷がかかるはず、慎重にいきましょう。

今回は文献から詳細を消すだけなので、僕の記憶自体

に影響はないと思っていますが、もし帰還後、僕がおかしな事を言っていたら、再度説明をお願いします。」


「あぁ、初めてじゃないし了解だよJ。それにしても1時間で伝わるかな。」


「その際は時間を置いて、再挑戦しましょう。着地点は、海人さんの飛鳥時代の前世、額田王(ぬかたのおおきみ)の意識内。では、1時間後に会いましょう。」


「行ってくるよ。」


海人が目を瞑ったのを確認して、Jはスイッチを押した。






額田(ぬかた)様!そんな事をされては、大海人(おおあま)様に怒られます!」


慌てながら制止する侍女の言葉に聞く耳も持たず、額田と呼ばれた女性は、衣服が濡れるのも気にしない素振りで、川に素足で入っていった。


「仕方ないわ!川の水達が、暑いから入って涼みなさいと言っているのです!」


そう言って、楽しそうに川と会話をしだした。侍女は


「また額田様の自然との会話が始まった。こうなると長いのですから。」


と、諦め口調で言うと、額田が川からあがるまで川辺に咲く野草を摘みはじめた。


額田はそれを確かめると、川の水を手で汲み上げたりして遊びながら


「あなたは……誰?」


と、さっきから感じ始めた気配へ静かに問いかけた。


「(さすが巫女様、まだ話しかけてもないのにわかるだね。)」


海人は、自分の事に即座に気づき、そしてその事に全く驚かない対応をしてきた事に驚くと、どこから話せばいいのか悩んだ。


「悩まなくても大丈夫です。だいたいの事はわかりました。私が大海人(おおあま)様に頼んで、編纂の際に少し細工をしておきましょう。」


「(え?まだ俺、何も話してないんだけど。)」


海人が呆気に取られていると、


「言葉などは飾りです。伝えたいその想いにはこの川のように流れがあります。それを身体全体で受け止めればよいだけの事。」


「(さすが巫女さんだね。自分も幽霊とコンタクト取れたり受信能力高い方だと思ってきたけど、能力は俺よりはるかに上だな。)」


海人が、ただただ感心していると


「ところで、私の生まれ変わりという方、私は生まれ変わったら、好きな人と引き離されない生き方ができますか?」


「(どうしたの?急に。)」


「都が難波(なにわ)から飛鳥(あすか)に移る頃、私はどうも夫と離縁させられ、命令で夫の兄、中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)に嫁ぐそんな未来が見えているのです。」


「(それって、大化の改新起こした人だよね。なんか、前世って俺に負けず劣らずな壮絶な人生なんだな。

俺達の魂が何回生まれ変わってるかとか、その詳細は俺もよくわかってないけどさ。

少なくとも俺は、好きな人と引き離されても諦めるつもりはないよ。気持ちまで引き離されたりはさせない。)」


「気持ちまでは引き離されない。そうですか。。何だか少し落ち込んでいたのですけど、元気が出てきました。」


額田は、晴れやかな顔になると青空を見上げた。


「(そろそろ時間だ。なんかあまりにすんなりいって拍子抜けしちゃったけど、あとはお願いします!飛鳥時代の俺!)」


海人は、そう言うと帰る準備に入った。


「待って下さい!!最後にひとつだけ!貴方のお名前は?」


「(海人(かいと)だよ。海に人で、海人。あ、そういえば今嫁いでるのが大海人皇子(おおあまのおうじ)さんだっけ?そっか………俺の名前が偶然入ってるんだね。)」



「海人………私は引き離されても、いくつか生まれ変わったその後に、あの方の名前になれるのですね………。私の強い想いが、そうなる様に仕向けたのかもしれません。教えてくれて有り難う、全ての神に感謝を致します。」


額田はハラハラと涙を流し、手と手を合わせ拝みはじめた。


「(お、俺……自分の名前ちゃんと大事にする。これからは大切に想うようにする。此方こそ突然話しかけたのに、信じてくれて有り難う額田さん!)」


そう言うと同時に、海人の意識は吸引される力の方向へと、引っ張られていった。


静かな静寂が流れたそのあと-



ピコンピコンピコン…………


あぁ、前の時もこの音だったな……



そう思いながら、


海人はゆっくりと目を開いた。




「おかえりなさい海人さん。どうでしたか?」


「問題なくクリアしたよ。ただ………。」


「ただ………?」


「切ないかな、なんか……かなり切ないや。。」



海人は空中を見つめながら、そう言った。





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