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『海人と柊』~女装男子~  作者: なにわしぶ子
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4話~策はひとつだけ~


 「ごめんなさい、もう閉じていいかしら?1日数分なら開ける事は可能よ。私達より、あなたの声かけはきっと違うはずだから、今日からはこんな時間を設ける事にしましょう。」


メイが海人の肩に手を置いて、そう促した。


「わかった…。」


 海人は袖で両目を無造作にこすり、大きく息を吐いた。


「もう大丈夫。取り乱してごめん。」


「無理もないわ。あなたは立派よ。」


「ところで今って、俺達の時代よりも、生まれもった不思議な能力ってどうなの?否定的なの?肯定的なの?」


「100年前より更に肯定的よ。むしろ原点に還ってる感じかも。天気は、ほぼシャーマンが動かしているし、能力者は保護されているわ。だからあなたの持ってる能力は是非注いでほしいかも。

得意不得意はあるだろうけど、こればかりは皆が持ってるものではない力のはずだから。」


「それ聞いたら安心した。俺の力は旧式だろうけどやってみるよ。一生独身は嫌だしね。」


 海人はそう、わざと満面の笑みで言ってみた。満面の笑顔じゃないと、崩れそうだった。

ただ、自分を奮い立たせるそれだけの為に。


 その日から海人は、リハビリや検査をこなしながら、この進んできた時間の勉強をはじめた。

色々なデータを叩き込み、自分が生きていた時代との比較をしながら、自分のハードディスクに上書きをしていった。その間、毎日柊には会いに行った。


眠り続ける柊に、昔話を語って聞かせた。そして、目覚めさせる方法を模索した。

何か方法があるはず、きっと何かが。


 「また、過去に戻るか……。」


 海人は、決意した目でそう呟いた。


 海人はもうこれしか、策はないとそう思った。過去のトラベルは、今はどうなのだろう。


接触は干渉を引き起こすからと、自分の時代は観光目的以外は勿論タブーだったけど、

やろうと思えば出来るはず。早速、海人はメイに尋ねにいった。


「私もそれは一度考えたの。過去に戻り、実験そのものを中止させたら?

って事よね?でも、それは困難かもしれない。」


「歴史が変わるから?」


「海人の時代から数十年が恐らく、タイムトラベル全盛期だった。今は逆にタイムトラベルは禁止になっているの。人間は禁忌を犯しすぎたのよ。」


「それって?」


「クローン技術とか見てもわかるけれど、人間が本来は踏み入ってはいけない領域だったのよ。自然の秩序が乱れるの。宇宙の法則全てをもね。」


「それは今一番、誰よりもわかってるつもりだよ。」


「えぇそうね。」


 メイは、ハーブティーをカップに注ぐと海人の前に置き、どうぞと促した。


「あなたが眠っていた時間。観光目的のタイムトラベルはわりと安定して日々行われていたのだけど。でも、どこかでバランスが崩れたのね。ある日を境に、遭難者が後を絶たなくなったの。」


「遭難??」


「タイムスリップという名のいわば事故ね。

予定以外の過去に飛んでしまって、帰ってこれなくなった人間が続出してしまった。

すると、そこで大きく未来が変わる事象が発生してしまったの。」


「そんな・・・。」


「そこで、それを監視する組織が作られていて

現在、観光目的のタイムトラベルは禁止。

それを破ると重い刑罰が処せられる事になっているの。」


「なるほどな。でも、どうにかして過去に戻れないかな?

技術は、俺が生きていた時より今の方が優れているはずだよね。


この実験は非公表のものだったわけだし、歴史が国レベルで大きく変わるとも到底思えない。


それに俺がまた過去に戻るとしたら、そんな事初なわけだし、そんなデータ、絶対上の学者さん達にしたら喉から手が出るほど欲しいはずだけど。」


「そうね、上はあなたに興味津々よ。」


「だったら……。」


「柊の事を考えると、タブーを犯してでもそれしか策はないかもしれないわね。問題は、それに伴うリスクかしら。」


「100年前に、今の時代の人間が飛ぶにはタイムトラベルという手段しか策はないけど、

俺はその時代にも存在してるわけだよね。」


「そうね……。」


「じゃあ、意識だけ過去に戻るタイムリープならいいんじゃないかな」



「意識だけ?」


「タイムリープでも干渉が起きなくはないけど。それはあくまても影響の範疇だと思う。

恐らくその方が、干渉リスクが減らせる気がする。」


「ただ、これはある程度の能力が必要よ。人を選ぶわ。」


「俺なら出来るよ。やってみせる。」


「確かに……。あなたならいけるかもしれないわね・・・。

少し時間をちょうだい。

新たな実験依頼をしてくるわ、許可が通るかもしれない。」


 メイは、立ち上がると顎に手を添えて、ぶつぶつ

呟きながら部屋を出ていった。





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