35話~ジェンダーレス~
それから暫くが経ち、Jの報告で爽の旅立ちを知った軍師は予定通り、ソウソウを反逆者として処刑した事にして、存在を消し去った。
その後のメイとの通信で、過去データを送ってもらったJは、色々な自分の記憶との違いのチェックしていた。
女王の存在や、爽の存在自体の記録を歴史から消す事は叶わなかったが、亡くなった歴史に改変はされているようだった。
あと、還ったふたりは無事元の時代に戻る事が出来たものの、爽が最初に飛んだ時間に戻ったので、経過してしまった年齢の進みとのギャップで、最初かなり波紋をよんだようだった。
ただ、ふたりに特にお咎めはなくその後ふたりは生涯平凡に普通に暮らし、生涯を終えた記録が残っていた。
そして、未だに柊さんは眠ったままなのか……。
ふたりを還し、本来の道筋に戻す事で柊の大きな変化を期待していたJは、少しがっかりしていた。
何か見落としてる部分があるはず。
Jが色々眠る前に考え込んでいると、ハヒコがいきなり住居に転がる様に飛び込んできた。
「大変な事になりました!!」
「ど、どうしたんだよハヒコさん。まだ夜中なのにさ。」
先に眠っていた海人が飛び起きると、ハヒコに眠たそうに応対をした。
「王が、ムラの民達によって殺されたのです!」
「殺され………え??今なんて……??」
ハヒコの話によると、女王の跡を継いだ王を不服とした一部の民によって、王が殺害されそれがきっかけとなり、内乱が起こりはじめたとの事だった。
Jは慌てて端末を開き、データを調べはじめた。
「他に気持ちがいって、完全に見逃していました。本当だ、内乱が起こる未来になっている。」
Jは苦渋の表情を浮かべ、更に端末に目を通しはじめた。
「あぁこれは相当まずいですね。このままだとクニが滅んでしまうようです。」
室内に張り詰めた空気が流れた。
「やはり男王では駄目だったのです。ヒメコ様のようなおてんとう様と繋がっている女性でなければ、きっとこのクニは治まらないのです。」
ハヒコがうちひしがれ、その場に崩れ落ちてしまった。
「確かに、クニの人にとって女王の存在は大きな心の支えだったんですよね。僕が少し浅はかでした。新たな王が馴染む様に
時間をかけ、配慮するべきでした。」
Jは、申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらハヒコに詫び続けた。
「じゃあさ?新たな女王を立てたらどう?とりあえず早く手を打たないと、戦が悪化して取り返しがつかなくなるしさ。
それに何より、ヒメコさんに申し訳がたたないよ。」
海人の提案に、Jが動きを止めた。
「あぁ、その手がありますね!海人さんに女王役を暫くやってもらいましょう!」
「は?何言い出すかと思ったら。冗談言ってる暇はないよJ。」
海人が半ば呆れ口調で話すと、Jは真剣な面持ちで、マシンに積んできた衣類等が入ったケースを奥から運んできた。
「海人さん、女王の髪の毛を色々したり、メイクしたりしてあげてたじゃないですか。あとケースに入ってた化粧道具、海人さんは不思議に思われてましたけど、僕の時代では男性がメイクしたりは当たり前でもはや男女の垣根がそもそもないんです。だから普通に入れておいたんですが、役に立ちそうで良かった。」
「え?じゃあJがやりなよ!やだよ女装なんて!!」
「女装ではなく常識です。僕は使者役をしてしまいましたし、埋葬時にも顔が知られてますし、その点、最初の遭難時に遭遇はしてるだけで海人さんの方が色々大丈夫なはずです。」
「そ、それはそうだけどさ……。」
「ところで、海人さんのフルネームは何ですか?名前のみで聞いた事がなかったので。」
「豊だよ、豊海人。」
「豊さんですか、じゃあ豊だからトヨさんにしましょうか。ヒメコさんの縁者だって事にして、実際、今回は直接姿を見ないと納得しないでしょうから、御披露目をした上で、何か大きなパフォーマンスをして、内乱を止めましょう。」
「そんなふざけた事して、みんな信じると思えないけど。。
わかったよ、とりあえずやればいいんだろ!
やるよ!やりますって!」
海人は文句を言いながら、女性に見えるようメイクを施すと、髪の毛も唯一ケースに入っていた肩までのボブヘアのウィッグを被り、完全に女性へと化けてみせた。
「完璧です海人さん。」
「そんな誉め言葉いらないって。ハヒコさん、女王が着ていた服持ってきてよ。それに俺着替えるからさ。」
海人がそうハヒコにお願いをすると、Jが制止をした。
「どこかムラの娘を無理矢理仕立てたと思われる可能性もあります。ここは荒療治でいきましょう。これを着てみてください。見た事のない服装の女性が目の前に現れる事で、神格化を促します。」
Jはそう言うと、自分のメタルケースから真っ白い可愛らしいレースが沢山ついたミニスカートのドレスを取り出してきた。
「ハヒコさんが最初ヒメコさんと遭遇した時みたいな?そんな衝撃があった方が、色々クニの人々を説き伏せるにはいいかもしれないけどさ。
でも、そのドレス何??なんでそんなのJ持ってんの。」
「これは、僕のお気に入りの私服です。」
「あ、頭痛くなってきた……。」
海人はその場に固まってしまった。




