34話~皆既日食と旅立ち~
「皆既日食を起爆剤にするなんて、Jの発想には頭が下がるわ。」
メイと最終の打ち合わせをしながら、Jは自分のマシンで、クニの民によって築かれた女王の墓を上空から見下ろしていた。
「計算上はほぼこれで大丈夫なはずだけど、タブーをしまくった気もする。僕がした事は更に他に悪影響を与えるかもしれない、そんな不正解な道なのかも。」
「正解か不正解かは誰にも決められないわ。あなたは柊の為、海人の為、一生懸命だった、ただそれだけの事よ。」
「有り難うメイ、巻き込んでごめん……。」
「私はあなた以外をライバルと認めてないの。だから還ってきて。あといつもの報告だけど、柊は今も眠り続けている、これで大丈夫かしら?」
「有り難う大丈夫。柊さんが目覚めた状態の未来が、ふたりを還した後に聞ける事を祈るよ。そろそろ皆既日食だ、じゃあまた。」
Jは通信を終えると、女王の墓の上を旋回した。
四角形に盛られた土の表面には石が敷き詰められ
人力でここまで短期間で構築した、この時代の人々の女王への想いの強さ、そして底力を感じた。
人間は、どんどん進化したのではなく、逆に退化したのかもしれないな
そんな事を思いながら、Jはマシンを方向転換させて、ムラへと戻っていった。
Jがムラへ戻ると、女王が綺麗に海人の手によって着飾われていた。
身支度を終えた女王は大きな瓶に入り、ハヒコとJによって、墓まで運ばれる事になった。
住居にひとり残る海人が、瓶の中の女王の髪に、柊のモチーフの髪飾りをつけた、
「こんな事言ったら駄目なんだろうけどさ、俺、ヒメコさんと離れるのめちゃくちゃ寂しいや。
それってここで過ごした時間が楽しかったからだと思う。有り難うヒメコさん。
還って、必ず幸せになってよ?俺も絶対還って、柊と幸せになるからさ。ね?約束だよ?」
「約束する、有り難う。」
女王は、優しく微笑みながら手を伸ばすと海人の頭を撫でた。
「さぁいきましょう。」
Jはハヒコと共に、女王の入った瓶を担ぐと住居の外へと出た。
「ヒメコさま!!!」
住居の外には、沢山の民が待ち構えていて、女王に向かって各々が泣きながら、声をかけはじめた。
思えば、ハヒコ以外との接触を避けて生きてきた女王にとって、民の生の声を聞く事自体がはじめてだった。
このクニの民が幸せであります様に
女王は瓶の中で手を合わせ、最後の祈りを捧げた。
墓の頂きに着くと、女王は既に爽の乗り込むマシンに乗り込んだ。すると、空の太陽が陰りはじめ、皆既日食がはじまった。
見た事のない空の変化に、墓の麓に集まっていたクニの民たちが騒ぎたつ声が頂きにまで届いてきた。
「爽さん!あとは任せました!早く!」
Jはマシン内の爽へ声をかけた。
爽は空の様子を確認しながら大きく頷くとマシンの扉を閉じようとした。
「待ってください!!」
ハヒコがマシン内の女王に向かって握り飯を差し出した。
「ミライというクニにかえっても、ご飯はちゃんと食べてくださいね!私が傍にいなくても、ちゃんと食べてくださいね!
ヒメコさま!!!」
女王は握り飯を受けとると、ゆっくりと閉じていくマシンの扉に姿が見えなくなるまで有り難うを泣きながら連呼し続けた。
皆既日食はどんどん進み、巨大な美しいリングが空のキャンパスの中に現れた。
その瞬間、マシンの気配が消えた。
「飛んだ………。」
Jは、へなへなとその場に座り込んだ。空では皆既日食が終盤を迎えようとしていた。




