32話~爽とヒメコの再会~
「爽!!!!」
女王は、急に目の前に現れた爽の姿に、驚きながら駆け寄った。
「ヒメコ……。」
爽は名前を呼ぶのが精一杯な感じで、女王を抱き寄せた。
「やっと、やっと会えた………。」
女王は泣きながら爽の顔に右手をそっと触れた。
「えっと、俺完全に感動のご対面の邪魔だよね。」
罰が悪そうに、海人が首をすくねた。
「はじめまして海人さんですね、お話は伺っています。本当におふたりのお陰です。こんな日が来るなんて思わなかった。」
爽は海人に声をかけると、拱手の挨拶をした。
「え?何それ??こ、こうしたらいいの?」
海人は慌てて、同じくそのポーズを見よう見まねで真似た。
そんな海人の姿に皆が和んでいると、入り口からハヒコが入ってきた。
ハヒコは、髭を蓄え異国の衣に身を包んだ、爽の姿を見ると驚きの表情を浮かべた。
「ハヒコ、Jが魏から探し人を連れてきてくれたのだよ。」
女王がそう説明をすると、ハヒコは爽の目をしげしげと見つめ
「あぁ…あなた様がヒメコ様と同じ眼を持つという……良かった……本当に良かった。」
そう言って、ハヒコは涙を浮かべながら爽に駆け寄ると、爽の両手を自分の両手で固く握りしめた。
「はじめましてハヒコさん、私が言うのもおかしいですがヒメコを助けて頂き、本当に有り難うございます。」
「全てはおてんとう様のお導き、感謝するのは私どもの方なのです。さぁ、お腹が空かれたでしょう?すぐ食事の支度を致しましょう。」
ハヒコは意気揚々と、食事の支度をはじめた。
「ところでハヒコさん、お墓は今どんな感じですか?」
Jがハヒコの手伝いをしながら尋ねた。
「ほぼ完成しました。頂きは平らに。
石で作った棺も既に設置しています。」
「こちらの準備は整いましたね。では、そろそろ女王が亡くなったとクニに告げる事にしましょう。
既に手筈が整っている隣国の王との和睦を皆に伝え、新たな王になってもらいましょう。」
「そう、うまくいくでしょうか。。」
Jの策を聞いていた爽が、心配顔で口を挟んだ。
「確かに、そう上手くいかないかもしれません。なので、どうなるかは慎重に様子をみたい気持ちはあります。」
「分かりました。では、その間にこちらは軍師殿の策通り動き、この世から消える事に致しましょう。」
爽が女王を見ながらそう言うと、女王はコクリと頷いた。
「じゃあさ、Jはどれぐらいの目標でいるの?ふたりを還す予定日っていうのかな。そんなのがあった方がいいじゃん色々とさ。」
海人がハヒコから受け取った、新鮮な魚を捌きながらそう声をかけた。
「記録を見ると、もう少し先に皆既日食が起こります。そこを狙います。」
「皆既日食!??」
一同が、Jの顔を驚きながら見た。
「はい。皆既日食は太陽に月が重なる天体ショーです。その時にダイヤモンドリングという現象が起きます。」
「あぁ、太陽の光が月に隠れる位置でダイヤモンドの指輪みたいに見える現象だっけ、でもそれが??」
海人が不思議そうに尋ねると、Jが細かく解説をはじめた。
それは、こんな内容だった。
◇
女王の墓はピラミッド型で、実際のエジプトのピラミッドに比べると規模は小さいが、用いた石のパワーでエネルギーを発生させる事が出来る。
その頂上に既に爽を乗せた爽のマシンと、女王を埋葬するダミーの石棺を目の前に設置する。
亡くなった事にした女王を、そのダミーの棺に寝かせる。クニの民は女王に祈りを捧げる。
そこで、皆既日食がはじまる。
ダイヤモンドリングのダイヤモンド部分の特化された太陽光。それを起爆剤として、マシンのスイッチを入れる。
ふたりを乗せたマシンは、ミライの世界へ戻る。
「でもさ、そんな光景をクニの民が見ちゃって大丈夫なの?かなり干渉を起こしそうなんだけど。」
策を聞き終わった海人が、心配そうにJに尋ねた。
「逆に謎にしてしまうんです、あやふやにしてしまうんです。人は記録やデータに左右をされる生き物です。なので、根底から覆すんです。そうすれば干渉が起きたとしても最小限になるはず。」
「確かに、霧が立ち込めた場所では目をこらすというか、本来の道筋を探そうと本能がするものではありますね。あり得ない光景を目にする事で、逆にあやふやにするが得策という事なのかも。」
海人が捌いた魚を食べながら、爽が続いた。
「では、食事を終えたら早速爽さんは、魏へと戻りましょうか。」
Jは一秒も惜しいと言う様に、次の行動を決めた。
そんなやり取りを聞いていた女王が、手にブランケットを持ち爽の所へやって来た。
「色々な時間はもう戻らないけれど、元の時代へ還った後、何が待っているかわからないけれど、ふたりで還りましょう、爽。」
差し出された、ボロボロになったブランケットを受け取った爽は、女王にただただ無言で頷き続けた。




