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『海人と柊』~女装男子~  作者: なにわしぶ子
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3話~再会~


 海人はリハビリをこなし、スリープ前の身体能力より気持ち値は下がってはいたものの、ほぼそれも元に戻るだろうとの見解だった。


 リハビリと検査を終えたあと、Jが洋服と靴が一式入っているというメタル色のケースを2つ持ってきた。


 「さすがに過去の服のデザインは時代遅れなので、現代の私服の流行りの服をいくつか勝手に用意してみました。気に入って頂けるといいんですけど。

あと、こちらのケースには、ここの制服とか色々入っています。海人さんの部屋の用意も出来たので、あとで案内しますね。」


「有り難う。ここにいる時は制服?」


「ですね、外出は滅多に出来ませんが、その際は私服を来てください。ここにいる時は、此方の制服でお願いしますね。」


服の入っているケースを2つ手渡しながら、Jは続けてこう言った。


「では、着替えが終わったら、柊さんの所へ行きましょうか。気持ちはしっかり、保っていられそうですか?」


「大丈夫、俺も科学者のはしくれだしね。俺が必ず、何とかしてみせるよ。」


「なら安心しました。じゃあ、着替えが終わったら声かけにきてください。僕はそれまで、庭の緑たちに水をあげてくるので。」


「そんなの、今はもうオートじゃないの?」


「生命とのコミュニケーションは大事ですからね。」


「変なやつ。」


 満面の笑みで庭に向かっていったJの後ろ姿を見送りながら、海人は持ってきてくれたケースの

ひとつを開けて、新しい制服に袖を通しはじめた。





 数時間後-



 海人はJと、セキュリティが何重にも施工された一室の、扉の前に立っていた。


「海人さん、心の準備は大丈夫ですか?」

海人は、顔を強ばらせながらコクりと頷いた。


Jが意識を向けると、体内チップが信号を送り、重厚な扉が左右にゆっくりと開き始めた。


「待っていたわ。」


 部屋の中にいたメイが、2人に気づき声をかけた。Jに促され、海人は周囲を見回しながらゆっくりと歩みを進めた。

自分の目覚めた部屋と造りは全く同じだったけれど、天井と壁の色はクリーム色で、生きた花が沢山飾られており、部屋中には、花の香りが満ちていた。


 部屋の中央には、色々な機器に囲まれた銀色の長方形の棺型の装置が、そこにあった。

顔が見える部分は、透明の扉みたいになっている。


「柊……。」


海人はゆっくり近づいていった。


銀色の装置の中で、黒髪の柊が、眠り続けていた。

海人は、透明のガラスを両手でそっと触れた。


「これは、開けたら駄目なのかな…?直接触れたら起きるかもしれない…。

俺の声聞いたら…………。

もしかしたら目を開けるかもしれない……。」


「わかったわ。」


メイは、機器を動作させ、その扉を開いてくれた。


「柊……俺だよ、何拗ねてるんだよ……。

ちゃんと起きろよ……。


約束したじゃん、起きたら結婚しようって。

俺…ほら…今日はちゃんと指輪持ってきたんだ。

眠る前に用意してたマリッジリング……。」


海人はゆっくり、自分の右手を柊の左頬にあてた。


「なんだ、あったかいじゃん……。

勘弁してくれよ………こんなのって………。」



 海人の大粒の涙が、柊の瞼に、ポタリポタリと落ちた。




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