26話~隠されたタイムマシン~
軍師は、宮廷の外へと二人を連れ出した。
沢山の花が咲きほこり、よく晴れた空と心地よい風が、癒しの空間を作り上げていた。
かなり奥へと進んでいくと、鬱蒼とした森の中に、小さな池が見えてきた。
鯉が数匹泳いでいて、軍師は池の淵にしゃがみこむと、袂から餌と思われる食べ物の欠片を取り出して撒きはじめた。
鯉が勢いよくそれに群がった。
Jは軍師の意図が読めないまま、その光景を静かに見守った。
「ソウソウとは、ここで出会ったんです。」
軍師は鯉に視線をむけながら、Jにそう告げると、いきなり池の水がどんどん減少をはじめた。
Jが突然の事に驚いていると、池の水はまるで灼熱の暑さの中で、一瞬で水蒸気になったかのごとく、無くなってしまった。
すると、池の底にマシンらしきモノが現れた。
呼吸が出来なくなった鯉が、マシンの周囲で跳ね回り
泥水を周囲にとび跳ねさせた。
Jが慌てて両手を伸ばし鯉を助けようと駆け寄った。
「大丈夫です。それは本物ではないので。
ソウソウのいわば、作品です。」
と、軍師が告げて、また鯉の傍に餌を撒いた。
するとその鯉たちは、呼吸の仕方を切り替えたかのごとく、まるで水中にいるかの様に空中を泳ぎはじめ、その餌に群がりはじめた。
Jが、狐につままれたように呆然としていると、爽が説明をはじめた。
「よく出来ているでしょう?いわば鯉のアンドロイドなんです。私の時代のマシンは観光仕様だったので、内装にアクアリウムが施されていて、この魚型アンドロイドが使われていました。少しこれをカムフラージュに再利用した感じなんです。」
「マシンが未来から過去のこの場所に遭難し、ずっとこの場所に、池の中に隠してきたのはわかりました。魚型アンドロイドも色々カムフラージュには便利ですよね。では、水は一体?」
爽は頷きながら、それでは少し順を追って話を
しましょうと語りはじめた。
◇
マシンを無断で使用して、遭難女性を助けに過去へと向かった爽は、着地ポイントを大きく外れ、気づくと魏という国に遭難をしてしまっていた。
地面を深くえぐり、刺さる様に着地したマシンを、たまたま散策していた軍師が見つけた。
恐る恐る近づくとマシンの中に、大怪我をし意識を失った爽がいた。軍師は、抱き抱え家に連れ帰る事にした。
爽が目覚めると、そこは見た事もない家の中だった。
混乱する爽に落ち着く様諭し、軍師は手厚く介抱をした。
回復した爽は、マシンを何とかしようと、早く遭難女性を見つけないとと躍起になった。
でも、爽のマシンは修復は困難で、そこまでの技術力がない爽には成す術はなかった。
途方に暮れた爽に、軍師はゆっくり策を練ればよいと励まし、そして色々話を聞きたがった。
軍師はとても柔軟な考え方で、爽のミライからきたという話にも、警戒どころかとても興味を抱き耳を傾けた。
爽にとって軍師は、父の様な存在になっていった。
軍師はまず爽を、魏の人間として生きられる様に、怪我が回復すると色々を教えはじめた。
マシンの遭難場所は滅多に人が近づけない場所であったけれど、いつ誰の目に触れるかわからない。
軍師から隠しておいた方がいいというアドバイスを受けて、爽は地下水を汲み上げ、水量も自由に調整出来るポンプをマシンの中に積まれていた色々な機械や器具を使って作り出すと、地下へと設置をした。
マシンを沈め隠す日、爽は内装の魚アンドロイドを取り出して、マシンが沈んだその池へとそれを放った。
鯉は本物の様に、その池を自由自在に泳ぎはじめた。
いつか、この鯉の様に自由に動ける日が来たら、必ずあの女性を助けにいくとそう心に誓ったのだった。
軍師はその頃、自分と同じ帝の側近に爽を据えるべく、色々と働きかけていた。
帝を通じ、爽はとある家の養子となり、そこから出自をする運びとなった。そして名は爽から取り、ソウソウと新しくつけてもらい生きていく事となったのだった。
「だいたいこんな感じです。説明がおぼつかなくて理解頂けたか不安ですが、つまり軍師殿は私のいわば恩人なのです。」
爽は軍師に笑顔を向けた。
「使者殿をここに連れて来たのは他でもない。このマシンとやらを是非、見て頂きたかったからなのです。」
軍師はそう言って、Jにマシンの近くへ来る様に手招きをした。
Jは近づくと、マシンを見上げながら右手で外壁に触れた。
Jの時代より少し前の時代の物だけあって、Jが乗ってきたマシンとほぼ変わりはなかったが、見るからに破損が著しかった。
今度はマシンの周りをJはぐるりと1周した。
そして、確信に満ちた顔でこう言った。
「少し時間がかかりますが、僕のいう通りにしてもらっても構いませんか?このマシンの息を吹き返せるかもしれません。」




