22話~Jの決意~
ハヒコが用意してくれた住まいにふたりは案内をされた。
住居は、いわゆる竪穴式住居で、ムラの中でもかなり大きな造り、周囲には柵まであった。
Jと海人は、中をぐるりと見渡して、とりあえず
自分たちの荷物のケースを、蓆の上へと置いた。
中心には囲炉裏の様なスペースがあり、火打石を持ってきて、ハヒコが丁寧に火のおこしかたを教えてくれた。
部屋を炎が照らし始めた。
ハヒコがいくつか、この時代の衣服も用意してくれて二人は早速袖を通した。
すっかり、見た目は弥生人と化した未来人のふたりがそこにいた。
中央に焚かれた火の番はしておくから、ゆっくりまずは寝てくださいというハヒコの言葉に甘えてふたりは、身体を横にした。
瞬時にふたりは、深い眠りの底へと落ちていった。
◇
それから数日が経った。
ふたりは自分たちの話を女王に語ったり、弥生時代の生活を学んだりしていた。
遭難したマシンは周囲の景色に同化をさせて、ムラの民には見えないようにし、早速Jは点検を始めた。
マシンは思っていたよりもあちこち破損をしていて、故障は直せるとしても、燃料を点火する事の出来る起爆剤が失われていた。
それは即ち、元の世界にはなかなか戻れない事を意味した。
Jは考え続けた。
きっと、代替出来るものがこの時代にもあるはず。
それと同時に、女王が遭難女性を還す時にマシンから持ち出したという、荷物たちも見せてもらう事にした。
その中には、ハヒコに最初に会った時に乗っていたという、飛行具もあった。
女王にあとで聞いた話では、その飛行具で本当は海をわたり、魏の国までいくつもりで色々と準備を進めていたらしい。
でも、その飛行具は元々が非常用で、時速も出ず、燃料も太陽のエネルギーで動くいわゆる充電式で
0%になるとしばらく停止をさせ、100%になるまで、文字通り羽を休ませなければいけなかった。
だから、このクニと海の向こう側の魏との間にある、壮大な大海原が最大の障壁で、断念せざるを得なかった事などを教えてもらった。
ただ、その鳥の様に飛べる飛行具は未だに現役で、戦の際には密かに上空から戦況を判断するのに使ったりしているという事だった。
Jは、その飛行具にとても興味を持ち、女王から許可をもらいそれを借り受けると自分たちの住まいに持ち帰り、何やら色々と改良をはじめた。
海人は、改めてJの技術力を同じ科学者として尊敬した。
本当の科学者とは、本物とは、
【無の状態からでも、何かを生み出せる事が出来る】のだと思った。
最近のJは一人で色々修理や、あとは端末で資料を一心不乱に読んでいたりして鬼気迫るものがあった。
少し心配になってきた海人が、そんなJに声をかけると
Jから、こんな提案をされた。
自分は今から魏の国へ行ってこようと思う。
飛行しながらエネルギーを蓄える事が出来る様に
改良した、この飛行具を使えば、先に旅立った船の使者団に追い付けるだろうという話だった。
使者の船団が1ヵ月はかかる旅路も
この飛行具なら、1日あれば大丈夫との計算だった。
確かに、使者団よりも、Jが実際海を渡り
爽を探した方が発見の確率が断然にあがるはずだった。
でも、見ず知らずの土地にJひとりを送るのは。
さすがに心配になった海人は、それは俺がいくとJに話した。
するとJは、何かトラブルが起きても、自分なら
修復が出来る。だから、これは自分が行くのが
きっと一番いい選択肢だと思う。と、そう言った。
Jは、早速女王にその提案を話し
飛行具を暫く貸して欲しいとお願いをした。
すると、女王はダメだと言った。
いくらなんでも、それは危険すぎる
許すわけにはいかないと、そう言った。
するとJは突然立ち上がり、手のひらを上へと向けた。
手のひらの上の空間に
ひとりの男性がホログラムで浮き上がった。
「これは……爽……??」
女王は唖然とし、固まった。
「過去データから、現在年齢の爽さんのホログラムを
作り出してみました。
時間の経過からのあくまで推測映像ですが。
僕これでも僕の時代では、科学者として
トップクラスだったんです。
だから、どうか僕の技術を信じてください。」
手をおろしホログラムを消したJが、女王へ再度懇願した。
女王はゆっくりJに歩み寄ると両手でJの両手を
固く握りしめると、
「有り難う、本当に有り難う。」
俯きながら、何度も何度もそう言い続けた。
◇
女王の指示を受けて、ハヒコが使者が着て行った
同じ衣をJに用意し、顔には刺青に似せた模様を描いてくれた。
そして、自分の首飾りのひとつをはずすと
首にかけるようにと渡してきた。
「先に向かっている使者にも、貴方がヒメコ様から命を受けて
追いかけてきた者だと、これでわかるはずですから。」
そうしてハヒコによって、Jはすっかり使者の姿となった。
早速旅立とうとするJに、ハヒコが更に白い布袋を渡してきた。
Jが中身を見ると、握り飯がふたつ入っていた。
「有り難う、あとで頂くとするよ。」
Jは満面の笑顔でそれを受けとると、ムラ中が寝静まった深夜
魏に向かって飛び立っていった。
「行っちゃった。」
Jの姿がみえなくなるまで、見送っていた
海人がそう、ポツリと呟いた。
「Jの無事を一緒にここで祈ろう。」
女王にそう言われた海人はコクリと頷いて
暫くの間そのまま、弥生時代の星空を見上げていた。
◇
残された海人は、日中は女王の住居で政の手伝いをしながら、夜になると、自分の住まいに戻り、色々勉強をして時間を過ごした。
Jからは、自分がいない間に、エジプトのピラミッド、特に三大ピラミッドの造りを調べていて欲しい
なんとか縮小でも、あの建造物の再現が
出来ないかも調べていてほしいと言われていた。
なんで、いきなりピラミッドなんだろう?
そう思いながら、石の成分や形によってもたらされる電磁波との
関係を数値化していった。
そういえば、スフィンクスって
ピラミッドより古い建造物だっけ。
あんなの一体誰が作ったんだろうな。
あと、ギザのピラミッドの傍にあった
太陽の船。あれも確か木造船だったな。
砂漠に船なんて。
ずっと宗教的な建造物って思ってたけど
案外、3つ目があるような宇宙人がその頃はいて
本当に空を飛ばせていたら面白いのにな。
そんな妄想で箸休めをしながら
夜遅くまで、石について調べ続けた。




