2話~告知~
「オハヨウゴサイマス!オキテクダサイ!オキテクダサイ!」
7時になり、Jは自分の有能なチップにより叩き起こされた。
すると、目の前のベッドに腰かけた海人がいた。
「おはようございます海人さん。あぁ、身体が動くようになったんですね。どこか痛みとか辛い箇所はありませんか?」
目をこすりながら、Jは立ち上がり海人に近寄った。
「Jおはよう。なんだか起きたら調子がいいみたいだ。ほら、もう腕だってぐるんぐるんに回せるし、現代の薬って凄いんだな。」
海人は笑顔で、腕を回してみせた。
「それは良かった。僕も安心しました。そうだ、紹介したい仲間がいるんです。少し待っていてくださいね。」
その瞬間扉が開き、メイが左手に朝食がのったプレートを持って颯爽と現れた。
「さすがだね、今連絡しようと思ってたのに。海人さん、彼女はメイ。同じく科学者で、柊の担当ですよ。」
「あなたが柊の?はじめまして海人です。色々本当に有り難うございました。」
海人は立ち上がり、握手を求めた。
すると、メイが海人のベッドの上に朝食のプレート置いて、握手をしながら、こう言った。
「はじめまして。100年後の未来へようこそ。私もお会いできて嬉しいわ。とりあえず、温かいうちに朝食を召し上がれ。
一応、100年前のレシピで再現した料理よ。お口にあうかわからないけど。」
プレートを見ると、確かに自分の大好物だった 料理がそこにあった。
「旨そうだね。」
まだ、お腹が空いたりの感覚はわからなかったけれど、食欲を感じてる自分に安心もした。
「退化の兆候もなさそうだし特に問題なさそうね。顔色もとてもいい。」
海人は、有り難うと言うと、ゆっくり食事を口にしはじめた。
とても懐かしい味がした。
「美味しい。ところで今日、柊に会えますか?
まだ自分みたいに何か検査しないと駄目とかなのかな。」
海人は恐る恐る、メイにそう尋ねた。
メイがゆっくりとJの方を見ると、Jはコクリと頷いた。
少し咳払いをして、メイはゆっくりと話し始めた。
「海人、落ち着いて聞いてほしいんだけど。柊はまだ眠っているの。」
「あぁ…申し訳ない。自分の方が先だったのかな。目覚めは今から?じゃあゆっくり待つよ。」
「そうじゃないの。」
「え……?」
「柊は既にあなたより先に目覚めさせた。特に問題はなかったはずなんだけど、柊は目覚めないのよ、今も……いわゆる昏睡状態ね。」
「何かの冗談でしょ?」
メイは黙って、首を横に振った。
「そんな…なんで……?」
「柊は生きてるわ。だからまだこれから……」
「ふざけんなって!」
海人は持っていたフォークを床に叩きつけて、メイの言葉を遮った。
「なぁ…俺見てみてよ?ほら?全然大丈夫じゃん?な?よく見てみろって!」
海人は立ち上がり、ゆっくり歩みよりメイの両腕を掴んだ。
「同じ様にしたら大丈夫だって。ここに成功例があるんだ。何かミスがあるんだよ。科学者ならもう一度洗い直せよ!!」
すると、黙って聞いていたメイが、海人の腕をゆっくりとほどいて、毅然とした態度で言い放った。
「そんなのあなたに言われなくてもやってるわ。私はこの星でトップクラスなの。あらゆる事は今も試してる。諦めるつもりもないの。」
「……………………。」
海人は項垂れながら、ベッドに崩れ落ちる様に座り込むと、そのまま頭を抱えて黙りこんだ。
張り詰めたピンとした空気が部屋を満たし、皆が暫く沈黙をした。
「柊に、柊に会わせてもらえませんか?」
泣きそうな顔をした海人が、ゆっくり口を開いた。
「わかった。その前にリハビリは受けてもらえるかしら?あなたの目覚めた後のデータが欲しいの。」
「勿論、そんなのはいくらでも。俺の身体を隅々まで調べてくれたらいい。」
「感謝するわ。」
そして、メイはゆっくりと部屋を出ていった。
扉が閉まると、海人がJに呟いた。
「これは……悪い夢なのかな。」