11話~タイムマシン~
3日後の深夜-
海人はJに指定された部屋に身一つで、周りに注意をはらいながら、向かっていた。
すると右側に、柊がいる部屋が見えてきた。色々な気持ちが交錯する。
なんで俺だけ目を覚ましたんだろう
なんで柊だけ、こんな目にあわなければいけなかったんだろう
でも俺が何とかしないと。
ここで諦めるわけにはいかないんだ
下唇を噛み締めながら、固く握りしめていた拳を解いて、海人はゆっくり、柊のいる部屋の扉を右手でそっと優しく触れた。
そして、もう振り返らずに、Jの待つ部屋へと足早に向かっていった。
◇
部屋へ入ると、Jが待っていた。
「待っていました。誰にも会わずに来れましたか?」
「あぁ、多分。」
「では、乗り込みましょうか。」
「これに?乗り込むの?」
海人は目の前の、マシンを呆然と見つめた。
「海人さんの荷物は、僕が以前勝手にお渡ししたケース全て、そのまま運び入れておきました。」
「あぁ確かリープ前にケース貰ったな。私服入りケースは外出模してなかったし一度も開けてなかったけど。」
「リープ前はそうでしたか。現代の流行服なので、過去に行くなら過去のデザインがよかったかもですが、まあ、逆に未来から来たアピールが出来ていいかもしれませんね。」
「他に食べ物とかはどうなるの?怪我とかしたら?」
「非常食や医療道具も積んであります。勿論、限りはありますが。」
「わかった。Jに任せていたら大丈夫だなきっと。」
「任せてください。では此方に来てください。少し、このマシンの説明もしておきますね。」
Jに促され、海人はその乗り物に近づくと、マシンの外壁を手で触って、感触を確かめた。
「どうかしましたか?」
「てっきり金属だと思ってたからさ。これ…何?何で出来てんの?」
「あぁ、材質ですか?」
「なんか、イメージが違ったからさ。」
「メタルもあったんですが、現代の最新はこんな感じですね。材質は石です。」
「い、石…………??」
海人は、触りながら完全に絶句し固まった。
「では、こちらに。」
Jに促され、海人はマシンの入り口を、背を少し屈みながら入っていった。
2人入るのがやっとな内部の壁一面には色々な機器があり、中央には座席のようなものがあった。
「ここに座ってください。」
既に座っていたJが、横に座る様海人に言ってきた。
おそるおそる海人が着席すると、半透明の弾力のあるスポンジの様な何かが身体全体を包み込みはじめ、全身が固定されるのを感じた。
「うわっ!」
思わず海人が驚くと、Jはニッコリ微笑んだ。
「安全装置です。どこか痛む箇所とかありませんか?」
「うん、だ、大丈夫。なんかこれ不思議だな。水中の中にいるような。まるで、赤ちゃんが母親のお腹の中で守られているみたいだ。」
「まさにそれをイメージしました。これ、僕が作ったんです。」
Jはそう言って、海人を包み込んでいる安全装置の膜を、自分の人差し指で優しく触れた。
弾力のあるそれは、指の圧を受け止め軽く凹んだ。
「では、出発します。着地予定場所は、100年前の研究室。前回のタイムリープ時間の1週間前。」
Jがそう言った途端、マシンがガタガタと大きく揺れ始めた。
機内が真っ白になり、赤色の線が渦を巻き空間を歪めはじめる。
海人は静かに目を閉じた。
その渦の中に吸い込まれていく感覚を全身で受け止めながら
ずっとずっと、柊の事を想い続けた。




