太郎さんのご両親
太郎さんのご両親はたしかに今年で74歳になると聞いています。
一度お世話になってから毎年年賀状をまめに送ってくださるので、よく存じているのです。
ただ、それがここ数年どういうわけかぷっつり届かなくなってしまって・・・・・・
オフィスで太郎さんにそのことを尋ねると、どうやら悠々自適なセカンドライフを送るためにと数年前に“ニッポン”へ移住を決めたということでした。
・・・・・・まあ、そう仰る太郎さんは何とも浮かない顔でしたが。
だって、あんな“ニッポン”なんかで老後の生活なんて、ねえ。
私自身もそれを聞いてすぐさまそう思ってしまったくらいです。
現に太郎さんも、
「いやあ、ね。両親がどっちとも3つ前の先祖が“ニッポンジン”だったらしくって。だから、僕も一応その血は引いているんだけど、まあ、それはさておき、それで自分たちのルーツを探す旅に出るのが昔からの夢だったとかなんとか言って、数年前に自分たちで勝手に決めて勝手に行っちまって・・・・・・」
などと言った後、
「だからといって、あんな熱帯雨林のジャングルにわざわざ70近くで行くかね・・・」
と声を漏らしていた。
私もご両親には良くしてもらっている分、全くその通りだと心配になりまして、ちょっと自宅で調べてみたんです。
すると、意外にも観光用の施設がちょこちょこあるらしく、一応人並みの生活は出来るということを発見いたしました。
(太郎さんに伝えると、「どうせすぐに戻って来るから放っておけ」と仰いましたが、私はとりあえず心配がなさそうということだけでも分かり大変安心しました)
ただ、私自身、これであの方々との関係が途切れてしまうのはなんとも心苦しかったので、太郎さんから教わった“ニッポン”の住所へお中元に何か健康に良い物でも送ろうかと思って居ます。
もちろん、一筆添えて。
けれど、そこに先日のあの太郎さんの一件を書くかどうかは考え中です。
ええ、先日太郎さんは世界で一番はじめにゾンビとなってしまったのでした。