表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奇跡の鍼灸師と俺様お嬢様  作者: 美都さほ
8/26

お嬢様のボーダーライン

 緑川警察署。


「あれ?先輩まだですか?来てないみたいですけど」

 キョロキョロと室内を見回す白井。

「今日は休みだそうだ」

 新垣がコーヒーを飲みながら答える。


「新垣、今晩空いているか?」


 いきなり近寄り耳もとで囁く中村にビクッと身体が跳ねる。

「気持ち悪いな…空いているが…?」


「白井君は?」


 いつの間にか白井の横に立っていたナツキが囁く。

「うわっ⁉ビックリした~」

「シッ!静かにしろ白井‼課長に気付かれたらマズい…」

 中村が辺りを窺いながら口に人差し指を立てる。


「何か怪しいなお前ら…西園寺が休みなのと関係があるんだろ?」

 四人は部屋の隅を陣取り小声で喋る。

「昨夜、レイナがまた元に戻ったんです」

「勿論誰も命令してはいないし電話も掛かってきていない」

「ん?どういう事だ?もしかして昨日の事も神野の命令じゃないと言うのか?」

「はい。他の原因が考えられます」

 ナツキが静かに頷く。

「西園寺レイナの執事がそれを確かめるから休みをくれと言ってきた」

「執事?ああ、昨日の。優秀な執事と言っていたな」

 昨日突然入って来た天野を思い出す。


「今晩、西園寺邸に来てほしいそうです」

「なるほど…了解した。一緒に行くよ。白井もいいな?」

「行きたいのですが、親戚の子を預かっていて夜は俺が子守りするんです」

 白井はトウヤとの接触を懸念しやんわりと断る。

「なら仕方ないな、三人で行くか」

「原因が分かったら連絡して下さい」

 分かったと頷き解散する。

「ところで…なんでコソコソしているんだ?特に隠す必要ないだろう?」

「課長に内緒で無理やり敷地内の警備許可取ったから知られるとマズい」


「お前ら二人、一度課長の地獄の取り調べを受けた方がいいな…署長も一緒に‼」


 ◆◇◆◇◆


「フ~お腹いっぱい。マサトがいると安心して出歩けるよ」

 変装したナギは繁華街で昼食をとっていた。

「ありがたきお言葉痛み入ります、ナギ王子。いかなる敵も排除してみせます」

 サッと跪く。

「頼もしいな~でも街中で跪くの止めて…目立つから」

「はい。ではお言葉に甘えて…」

 マサトが立ち上がろうと前を向いた時、男女の二人が目に入った。


「あれは…兄上‼」


 目の前に居たナギを突き飛ばし二人を追い掛けるマサト。


「あひゃっ‼」


 車道に倒れ込むナギ。間一髪車を避ける。

 車のクラクションで我に返るマサト。

「ああ…ここは下界、兄上がいる筈ないではないか…」

 足を止め落ち込みながら引き返す。


「マーサートー?」


 ブルブル震えながらマサトに近付くナギ。

「どうされました⁉ナギ王子‼」

 冷や汗と涙でぐちゃぐちゃになっているナギを見て驚く。


「どうされた…だと?お前に殺されかけたんだよ‼」


「お戯れをナギ王子。私がその様な事をする筈無いではありませんか」

 キョトンとした顔でナギを見る。

「うえええ⁉無自覚⁉兄上‼って叫んで僕を車道に突き飛ばしたんだけど?」

「落ち着いて下さい、ナギ王子。あまり騒ぐと通報されます」

 宥めるように落ち着かせようとする。

「あっれ~?僕が悪いみたいになってないかな~?」

「警官が来ない内に急いで帰りましょう」


「納得出来るかー‼」


 ◆◇◆◇◆


 西園寺邸、リビング。

「本日はお休みを頂きありがとうございました」

 深々と頭を下げる天野。


「いや…それは良いんだが…」

 目を泳がせる新垣。


「ああ…すぐに本題に入って貰って良いかな…?」

 生唾を飲み込む中村。


「そうですね…凄く気になります…」

 凝視するナツキ。


「畏まりました。それでは…」

 包帯で全身グルグル巻きの天野の顔は腫れあがり原型を留めていなかった。


(何があった天野~⁉)


「私は今日一日、とある実験を試みました。お嬢様が本来のお姿に戻られるそのボーダーラインを調べる実験です‼」

「ボーダーライン?」

「はい。この身を持って試したのです」

 胸に手をやり微笑む。

「ああ…だからその顔…」


「至福の時間でした」


「妙なフレーズが聞こえましたが…?」

 新垣の言葉を聞き流し声高らかに話を進める。


「聞いて下さい‼実験の結果判明したお嬢様のボーダーラインを‼」


 時はその日の朝に遡る。


「夕べ、汗をかかれたみたいでしたのでお風呂を準備しております。どうぞ汗を流してきてくださいませ」

「はい。ありがとうございます。お風呂で汗を流します」


「行ってらっしゃいませ」


 レイナを見送り急いで庭に出る天野。浴槽に入るレイナ。天野が外からそ~っと浴室の窓を開けサッと横切る。

 横切った影に反応したレイナの眼がキラリと光る。


「覗きかー⁉ゴミムシ‼」


 急いでローブを纏い庭に出たレイナは庭に立つ天野の後頭部目掛け植木鉢を投げつけた。


「はうん…」 


 頭部から血を流し悶絶する天野。

「主人の入浴を覗くとは死にたいらしいな?天野‼」

 襟首を掴んで持ち上げた天野の手で猫がニャーと鳴いていた。


「ん?猫?」


「浴室の窓に猫がいましたので追い払っていただけです」

「窓にいたのは猫…分かりました、入浴の続きをしてきます」

 猫がフーと威嚇し天野の手を噛み逃げていく。

「いい仕事をしますね…猫さん」

 噛まれた手をさすりながら微笑む天野。


「お嬢様、朝食の準備が整いました」

 頭部に包帯を巻いた天野が声を掛ける。

「分かりました。すぐに行きます」

 椅子に座るレイナに背を向けスープにタバスコを大量に振りかける。

「トマトのコンソメスープです」

「いただきます」

 レイナが一口スープをすする。

「ゴホッ!ゴホッ!」

 むせるレイナ。

「お嬢様‼大丈夫ですか?」


「天野…このスープ少し辛いみたいです」


「申し訳ございません。すぐにお取替え致します」

 スープを下げながらなるほど…と呟く。


「お嬢様、天気が良いので昼食はホテルのレストランでいただきましょう」

「分かりました」

 食事を済ませ歩いていると車のクラクションが鳴る。

「何だか騒がしいですね?」

 クラクションの鳴った方に振り返り足を止める。

「何かあったのでしょうか?そんな事よりお嬢様、公園がありますよ?ベンチで休憩しましょう」

「はい。そうしましょう」

 二人は公園のベンチに腰を下ろす。


「実は私、カメラを持って来たのです。少し撮ってきてもよろしいでしょうか?」

「かまいませんよ?どうぞ」 

 パシャパシャ。パシャパシャ。

 天野は隠れながら小さな女の子ばかり狙って写真を撮る。

 レイナの眼がキラリと光る。


「ゴミムシ天野‼幼女を盗撮するとは!地獄に落ちろ⁉」


 天野の顔面に回し蹴りするレイナ。


「グフッ!」


 木の幹に身体を打ち付けながらサッとカメラを取り換える。

「誤解ですお嬢様。見てください」

 カメラには花壇や噴水の写真ばかり写っていた。

「あら?本当だわ。誤解だったみたいです」


「お嬢様!申し訳ございません。高級な壺を割ってしまいました‼」

「形有る物はいつか壊れます。気にしないでいいですよ」


「この変態‼全裸で何処へ行く‼」

 スパパパーン‼

「コートは着ていますお嬢様。お風呂に入っていたら庭に不審者が~‼」


「これが今日一日の実験結果です」


「…」


「そして昨夜のお嬢様を思い出してください。私が酔って車に乗ろうとした時、中村様と真中様が無断で庭にいた時…お嬢様は本来の姿になりましたね?」


「…」


「もうお分かりでしょう⁉お嬢様のボーダーラインは…」

 キラッと目が光る天野。


「法に触れるか触れないかです⁉」


 静まり返るリビング、三人が無言で立ち上がる。


「よ~く分かった。真中手錠‼」

「はい。二十二時十分天野確保」

 ガチャ‼手錠を掛けられる天野。

「えっ?えっー⁉」

 急な事態に頭がついて行かない天野。


「西園寺レイナの入浴を覗くとは…一生刑務所入ってろ‼」


「生ぬるい‼レイナにその汚いモノ見せた罪は重い‼即刻死刑だ‼」


「カメラも何処かに有る筈だ!物的証拠だ、押収しろ‼」

 引きずられて連行される。


「お嬢様~‼助けてくださーい⁉」


 天野の悲痛な叫びは新垣の手で塞がれた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ