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奇跡の鍼灸師と俺様お嬢様  作者: 美都さほ
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明かされた真実

 冥界国、それは魂を管理する冥界人…死神が住まう国。

 生命を持つ全ての者の魂が寿命を終えこの国へと誘われる。

 巨大なビルが建ち並ぶ居住区、快適に管理された環境で魂は生まれ変わるのを待つ。


 《緊急事態発生‼緊急事態発生‼謎の異界ゲートより多数の不正入国者あり‼》


 《発見次第抹殺せよ‼発見次第抹殺せよ‼》


 ビルの隙間を多数のドローンが飛び交い銃を持った黒い軍服の男達が走り回っていた。

 ビルの窓から不安そうな顔の住人が覗いている。


「神の力は偉大だな」

「誰も気付かずに通り過ぎていくね」


 冥界国に着いて早々警備ドローンに見つかってしまったナギ達、ヨギの力で姿を隠していた。


「其れよりこの娘って…」


 ナギに背負われているレイナは異界移動の衝撃で気を失っていた。

 ナギと手錠で繋がれている為、同行せざるを得なかったのだ。


「そうだよ!」

「えっ⁉知ってたの?」

「知ってるも何も僕の天敵さ‼僕の百年追放はこの女の所為だ‼」

「えっ⁉」

「其れよりこの手錠外してよ!此処に置き去りにしてやる」

「其れは止めた方が…」


 微妙な顔でやんわり断るヨギに憤慨し、じゃあ自分で探すとレイナを横たえ鍵を探し出した。レイナの上着に手を掛けた瞬間目を覚ましたレイナと目が合う。


「この変態‼」


 ドカッ‼

 レイナの鉄拳がナギの顔面に食い込む。


「相変わらず凶暴な女だな‼」

「強制わいせつ罪も加えてやるわ‼この外道が‼」

「誰がお前みたいな小娘に手を出すか!」

「フン!言い訳は署で聞くわ、大人しく連行されなさい!」


 二人のやり取りに溜息を吐くラギ、ヨギは相変わらず微妙な顔で見ていた。

 堪りかねたラギが声を掛ける。


「お前達静かにしないか、見つかるぞ」

「喧嘩は良く無いよ?」

「はあ?誰よアンタ達?こいつの仲間?」


 ギロリとラギとヨギを見据えた後、周囲を見たレイナが怪訝な顔をする。


「何処よ此処?」

「今頃気付いたのか…此処は冥界国だ」

「冥界?そう言えば扉に吸い込まれて…」


「君、異界ゲートで一緒に来てしまったんだよ」


 意地悪く言い放ったナギはニヤリとほくそ笑む。

(さあ!驚け、泣き叫べ!僕を陥れたお前への復讐が此処で終結する!)


「そうなの?じゃあ今すぐ下界に戻して」


 落ち着きはらったレイナの姿にナギが動揺する。


「驚かないのか…?」

「今更?アンタが神だって聞いた時が一番驚いたわよ」


「へっ⁉」


 逆に驚かされたナギ、冷や汗がダラダラと溢れ出す。


「天使の祝福か?大方、ミカ達がバラしたんだろう」

「成る程、ミカの加護を受けてたのは君だったんだ…納得」


 ニコニコと笑いながら手を差し出しレイナの手を取るヨギ、ナギ兄さんをよろしく頼みますと握手をする。


「よろしくじゃ無いよ⁉僕は捕まる気無いから…」


 ナギが叫んだ瞬間足元に黒い穴が開き、四人は有無を言わさず落ちて行った。


 ◆◇◆◇◆


「レイナ遅くないか?」

「そうですね…もう一時間程経ちます」


「天草君、レイナの姿が見えないようですが?」


 取引先との談笑を終えミカ達と合流したカズキ、会場に居ないレイナに訝し気な表情を浮かべる。


「レイナ殿は少し飲み過ぎたようで外で酔いを醒ましておられます」

「そうですか…そろそろ帰りましょう、探して来てください」


「カズキさん、まだよろしいじゃございませんか?夜は始まったばかりですよ」


 カズキの後をずっと追い掛けていたシオリが帰すものかと声を掛ける。


(レイナが居ないと言う事は…あの二人上手くやったわね。後は私とカズキさんが…)


 不在のレイナに作戦の成功を確信したシオリが満面の笑みを浮かべる。


「いえ、もう用は無いので帰ります」


 用は無いの言葉に引き攣った笑いになるシオリを残しレイナを探しましょうと立ち去るカズキ、その後ろ姿を怒りが籠った目が追っていた。


(あいつら何処で油売ってるのよ!早く出てきなさい‼)


 ◆◇◆◇◆


「何でレイナ居ないのよ~」

「子猫ちゃんとパーティーしようかとお酒沢山買って来たのに」

「天野、隠し立てするとお仕置きだぞ?」


 西園寺邸に押しかけてきたモンスター達がレイナの留守に立腹していた。

今日のホームパーティの事は収拾がつかないからとモンスター達には内緒にしていたのだ。


「お嬢様は元同級生のお宅のホームパーティにお出かけになっています」


 マヒロがナツキの言葉に反応してゴクリと喉を鳴らしながら説明した。


「ちょっと待て、ウチの愚兄もホームパーティに呼ばれたって出掛けたけど?」

「えっ⁉カズキさんと?」

「おいおいおい、愛しの子猫ちゃんを独り占めか?」


「天野!何処の家に行ったのか白状しなよ!」

「兄上に危害を加える事はこのマサトが許しません」


 鞭をパシパシ鳴らし詰め寄るナツキの前に立ちはだかるマサト、何故か後ろから舌打ちが聞こえた。

 その時、西園寺邸の電話が鳴る。


「西園寺でございます。ミカ様?……ええ⁉お嬢様が行方不明⁉」


 ◆◇◆◇◆


「うわっ⁉父上!」

「ゲッ⁉母上!」

「ヤバッ!」

「今度は何処よ⁉」


 四人が落ちた先は広い執務室だった。

そこに居たのは一人の老人と天界王サクヤと王妃コノハだったのだ。


「あなた達は…もう‼」


 怒り心頭のコノハにまあまあと宥める老人、長い髪と長い髭は白く顔は深い皺が刻まれていた。椅子に座ったまま杖をつき穏やかな表情で四人を見つめていた。


「おぬし達が来た理由は分かっておる」


 三兄弟が「えっ⁉」と声を揃える。


「ラギは異界ゲートを使ってみたかった。ナギはナミに逢いたかった。ヨギは兄弟が心配でついてきた。レイナは巻き込まれた。違ったか?」

「誰です?この爺さん」

「ヨギ‼」


 思わず声を上げたサクヤをよいよいと制し話を続ける。


「ワシは冥界王、天界の神に呪いを掛けたのは此のワシじゃ」


 再び三兄弟が「ええ⁉まだ生きてたの?」と声を揃える。


「失礼ですよ‼」

「申し訳ございません、ウチの愚息共が…」


 冷や汗タラタラの二人に苦笑いしている冥界王にナギが詰め寄った。

 手錠で繋がれているレイナも有無を言わさず引きずられる。


「お願いします!ナミに会わせて下さい!」


 懇願するナギに深い溜息を吐いた冥界王は静かな声でそっと漏らす。


「ナミはもう此処には居ない」


「えっ…?」


「死んでしまったのじゃよ」


「嘘だ‼呪いは解けたんでしょう?元気になったんでしょう?」

「呪いは解いたがナミの命の灯はもう尽きていたのじゃ」


「そんな…」


 その場に崩れ落ちるナギをレイナが支える。

 冥界王は後ろで待機していた従者の一人を呼ぶ。

 その従者は以前天界国に来た一人だった。


「あの日の事を話してあげなさい」

「畏まりました」


 ◆◇◆◇◆


「呪いを解いても私の命はもう尽きているのでしょう?」


 ナミの言葉に黙り込む冥界人達、無言の肯定にフッと微笑みを漏らす。


「だったらお願いが有ります」


 力強いナミの眼差しに息を飲み「何なりと」促す。


「私には愛する人がいます」


「ああ、成る程…その方と余生を共にしたいのですね?」

「呪いを解き、また此方へ送って差し上げます」

「心安らかに余生を過ごしてください」


 勝手に解釈した冥界人に苦笑し静かに首を振る。


「逆です…私は冥界国へと赴き二度と此処へは戻りません!」


「えっ?」


「崩れ行く私の姿を見せたくありませんので…」


 冥界人は分かっていた。

 呪いを解こうが病を治そうが命の灯は増える事がない。

 病無き神の身体でも命の灯が消える時は衰弱し命を落とす。


「しかし相手の方は残り少ない余生を共に過ごしたいと思うのでは?」

「心配いりません…私が冥界に発った後、忘却の術を掛けて貰いますので」

「其れでは貴方があまりにも不憫です」


「彼が泣くのです…死に行く私の姿を見たらきっと…また…」


 頬につたう涙がホロホロと握りしめる手に落ちる。


「私は死ぬ事よりも彼の涙を見る事の方が辛い…」


 シンと静まり返った部屋にはナミの声を殺した嗚咽だけが響いていた。


 ◆◇◆◇◆


「ナミは僕の事を思って…」


「安らかな最期じゃった…」


 冥界王の言葉を聞き大きな涙を流し泣きじゃくるナギ、傍らでレイナが優しく背を撫でる。サクヤもコハクも心配そうに見つめていた。


「忘却の祝詞は使わなかったみたいじゃな?」


 チラリと視線を送られたヨギが気まずそうにコクリと頷く。


「父上、母上、ナギ兄さんを許してあげてください。僕が忘却の祝詞の代わりに使ってしまった暗示の所為で不真面目な兄さんになってしまったんです」


「まあ⁉そうなの?」


「それからラギ兄さんはナギ兄さんをナミ様に会わせたくて異界ゲートを造ったんです」


「そうだったのか」


 うんうんと頷く二人を余所にヨギを見るラギの顏はポカンとしていた。


「兄弟愛に免じて不正入国は不問としよう」

「ありがとうございます」

「ラギもナギも追放を免除しよう」


 サクヤの言葉に何故かヨギだけが喜んでいた。

 兄二人が追放され仕事が増える事を懸念しての策略だったとは両親は知る由も無い。


「ナミの魂は今…何処に?」


 少し落ち着いたナギが濡れた顔を拭いながら問い掛ける。


「ナミの魂は転生して下界で幸せに暮らしておる」


 目を見開くナギ、先日見掛けたナミと瓜二つの女性を思い出し笑顔が戻る。


「やっぱり!あの時の彼女がナミだったんだ!」


「兄さん…あの人は違うと思うよ?」

「僕には分かる!今直ぐ下界に行って探さないと」


「待て待て、一体誰の事を言っておるのじゃ?」


 今にも飛び出して行きそうなナギを怪訝な顔の冥界王が慌てて止める。


「下界で出会ったんだ!間違いない、僕とナミの絆は繋がっていたんだ!」

「いやいや、兄さん…人違いだよ?」

「そうじゃぞ、転生したら姿形は全く違う者になるからの」


「ナミの魂が僕をあの場所に呼んだんだ!」

「魂は前世の記憶事洗い流すのじゃ、お前の事など覚えていない」


「絶対間違いない!彼女がナミだ‼」

「だから…兄さん違うって」

「ナギ、お前は神の力が無いから分かる筈無い」

「そうですよ?少し落ち着きなさい」


 ナギの訴えに聞く耳を持たない面々に怒りを覚えキッと睨め付ける。


「僕には分かるんだ‼」

「全く分かってない‼」

「何故言い切れる‼」


「転生したナミはさっきからお前の隣に居るからだ‼」


「……へっ⁉」




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