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奇跡の鍼灸師と俺様お嬢様  作者: 美都さほ
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過去との遭遇?

 藤堂邸の一室、魔界組が密談を交わしている。


「お姉さんにどうやって接触する?」


 大きなクッションを抱いたナチュがカーペットの上に胡坐をかいている。

「姫様‼女の子がそんなはしたないお姿で…記念に一枚撮っておきましょう」

 カメラを取り出したレオンに抱いていたクッションを投げつける。

 その衝撃で手から落ちるカメラ、すかさずホグが壁に蹴りつけた。


「あーー‼フィルムが~‼私の姫様コレクションが~‼」


 パカッと開いたカメラからフィルムが剥き出しになっていた。

「もう‼真面目に考えなさいよ、レオン‼」

「これからどうするのさ?」

 二人に怒られたレオンは二重にしょんぼりする。


「分かりました。デジタルカメラにします」

 分かってない‼と袋叩きされる。



「そうですね~今晩あたり屋敷に訪問しましょうか?」

 双子にボコボコにされたレオンが正座している。

「賛成!グズグズしてたら第二王子に何されるか分からないし」

 ナチュが即座に同意する。

「ご安心ください。姫様はこのレオンが身を挺してお守りします」

「イオリじゃなくて?」

 ナチュの冷ややかな視線に身悶えする。

「ヤキモチですか姫様?」

 冷ややかな視線を都合よく勘違いしたレオンは再びクッション攻撃に遭う。


「あの格好に騙されてしまっただけです!」

 あのツインテールがいけないんですと言い訳する。


「レオン一緒に遊ぼう‼」


 噂をすれば影が差す。

 学校から帰って来たイオリがリードを持って入って来た。


「小僧、何用だ?私達は忙しい」

 手のひらを返したレオンが冷たく突き放す。

「友達が遊びに来たんだ。レオンと一緒に遊びたいんだって」

 可愛い少女達がこんにちはと入って来た。

 音速を超える速さで着ぐるみに着替えたレオンがワンと鳴く。

 ジト目の双子に見送られて部屋を出るレオン。

 レオンは知らない。

 少女と思っていた友達はサイトで知り合った女装仲間である事を。


 ◆◇◆◇◆


 特別捜査班の詰所。


「必ず俺が神野を逮捕しマコトさんを元に戻してみせます」


 一通り話を聞き意欲を取り戻したカオリが声高らかに宣言する。

 その宣言も当の新垣は全く聞いておらず、子猫ちゃんを連発しては男の色気を振り撒いていた。

 少しだけしょんぼりするカオリだった。


「それでは捜査会議を始めます」


 レイナの一声で室内が静まり返る…筈も無く。

「その前にチョット化粧直し」

 コンパクトを取り出す中村。

「初日でぶっ倒れる新参者の調教が先では?」

 鞭と手錠を両手に掲げるナツキ。

「取り調べがしたいな、ベッドで」

 レイナに薔薇を差し出している新垣。


「白井」


 冷たく寄越されたレイナの視線と呼び掛けに白井の心臓と胃が締め付けられる。

「皆さん真面目に仕事しましょう。藤堂さんも意気込んでいますし」

 早く仕舞ってと其々手にした物を回収していく。


「今日は神野が懇意にしていた患者を当たるわ。メンバーを三つに分けて其々聞き込みをしてちょうだい」

 レイナの説明で再び騒ぎ出すモンスター達。

 自分がレイナと組むと言って譲らない。

 白井の顔が引き攣る。


「だーかーらー女性同士私と…」

「黙れ変態!レイナは僕が首輪を付けて…」

「さっきも言っただろう?子猫ちゃんは俺のバディ…」

「……い」

「エロ親父はすっこんでろ‼」

「中村、男に戻ってるぞ」

「あらやだ、私とした事が」

「…しい」

 レイナは溜息を吐き、カオリは淋し気な目で見守り…


「喧しいっつってんだろ‼」


 白井はキレた。

 今まで積み上げてきたチョット気弱でドジな後輩キャラの仮面が外れる瞬間だった。


「おいこらモンスター共!黙って言う事を聞かないと痛い目を見るぞ」


 豹変した白井に目がテンになる三人。

「どうしたの白井ちゃん?悪い物でも食べた?」

「先輩に向かって暴言を吐くとは調教が必要だな」

「ストレスが溜まってるんじゃないのか?」

「きっとそれだわ」

 ストレスの原因達が思い思いに勝手な事を言っている。


「先輩、藤堂さんを外に」

 レイナは無言で頷きカオリを伴い外へ出る。


「いいか、よく聞け!俺達にはやらなきゃいけない使命があるんだ!一刻も早くな」


「白井ちゃん、怖いんですけど?」

「オイオイどうした白井。お前らしくないぞ」

「使命とか大げさだな」


 ちっとも黙らないモンスター達。

 白井は一つ深呼吸をして両手を前に突き出す。

 掌から見えない光が放たれる。


「命令だ!俺の言う事を聞け」


 絶対的命令。術を掛けた相手を数時間だけ使役出来る能力。

 この能力でナギの証拠隠滅や情報操作をしていた。

 術が切れるまでは白井の命令には絶対服従するのだ。



「何をしたんだ?白井君…」


 直立不動で並んでいる三人を見たカオリが怪訝な顔で問い掛ける。


「チョットした催眠術です」


 察したレイナがああと頷く。

「俺だけの言う事を聞いてくれます」

 凄い特技を持ってるんだなと感心する。

「数時間しか効き目が無いので直ぐに捜査に向かいましょう」

 患者のリストが書いてある捜査資料を三つに分ける。


「じゃあ、俺はマコトさんと…」

「俺のバディは子猫ちゃんだ‼」


 食い気味で拒絶する新垣、カオリは白井に期待の目を向ける。

「俺と西園寺先輩、中村さんと真中さん、新垣さんと藤堂さんに分かれて捜査します」

 白井には逆らえない。


「了解‼」


 満面の笑みのカオリ、ずっと催眠術掛けてくれないかなとコッソリ思うのだった。


 ◆◇◆◇◆


 ナギとヨギは藤堂家のリムジンで街中を走っていた。

 ヨギが下界の観光をしたいと言い出してナギが同行する事になったのだ。

 ラギはヨギが下界に居る間に装置を完成させると言ってラボに籠っている。


「シャバの空気は旨いぜ」

 暫く外に出ていなかったナギは久し振りの外の空気にご満悦だ。

「それ、収監された人のセリフだよ?入る気満々だね」

 冗談でも言うんじゃないとヨギの頬をつねる。


「あっ、あれがJKって言う女の子?」


 数人の女子高生がクレープを頬張りながら歩いている。

「JKって…どこで覚えた?」

「ラギ兄さんが下界の事色々教えてくれてたんだ。ナギ兄さんの事も堕とされた直後から知っていたみたいだよ」

「だったら直ぐに助けに来いよ‼」

 衝撃の事実に憤りを感じるナギだった。


「この辺りは高級そうな建物が多いね」

 いつの間にかリムジンは高級マンションが建ち並ぶ通りを走っていた。

「この辺りに僕のお得意様が住んでるよ」

「ああ、鍼灸師って仕事をしてたんだったね?」

「奇跡とまで言われた僕がいつの間にか犯罪者扱い!納得できないよ‼」

「結婚詐欺か~天界でも似たような事してたじゃない?自業自得」

「モテるんだからしょうがない」


「あの子が居れば今頃こんな目には遭ってなかっただろうね?」


 あの子と言うヨギの言葉に固まるナギ。

 険しい顔のナギを横目で見たヨギは地雷踏んだかと焦る。


「もう忘れたよ」


 そう呟き窓の外に顔を向け黙り込む。


 忘れてはいない。

 忘れる筈がない。


 目を閉じると浮かんでくる栗色の柔らかな髪。

 透き通るほどの白い肌、薄く紅を刺した唇が微笑み掛ける。


『ナギ…』


 優しく囁かれた声に微笑みを返し、幻へと手を伸ばす。


「何処に行っても人多いね」

 ヨギの声で現実へと戻される。

 リムジンは赤信号で停まっていた。

 そうだねと苦笑し横断歩道を横切る人の波に視線を移す。


 目の前を栗色の髪がフワリと通り過ぎる。


 一瞬の静寂。ナギの時が止まる。


(まだ幻を見ているのか…?)


 ドクン‼

 心臓が一つ鼓動する。

 ドクン‼ドクン‼

 息をする事すら忘れ横切る栗色を視線だけが追う。


「ナミ…?」


 ナギの小さな呟きが聞こえたかのように栗色の髪が振り返る。

 ナギが愛した唯一の女神の姿が其処にあった。

 白い肌の美しい女はナギと視線を合わせる事も無く再び歩き出す。


 信号が変わる。

 ナギはゆっくりと走り出すリムジンのドアを開ける。

 転げ落ちるように飛び降りたナギに辺りが騒然となる。


「えーー⁉兄さん?運転手さん、車停めて‼」


 驚いたヨギは飛び出していった兄を追う。

 焦ったように左右に目を走らせる姿に半ば呆れて腕を掴んだ瞬間。


「ナミーー‼」


「えっ?」

 自ら忘れたと言っていた名前を叫び駆け出す兄を必死に繋ぎ止める。


「放せ、ヨギ‼ナミが…ナミが居たんだ‼」

「落ち着いて!居るわけないでしょ?」

「この目で見た!あの頃のままで此処に居たんだ」


「あり得ないよ!彼女は冥界に行ったんだから!」


「あ…」


 ナギの力が抜ける。

「下界に居るわけないよ」

 崩れ落ちそうになるナギを支え帰ろうと声を掛ける。


 だが…ヨギは感じていた。


 かつて兄が愛した女神の気配が其処にある事を。

 そして確信した。

 この事実は兄に残酷な現実を突きつける事となる事を。


 リムジンのドアを開け乗り込もうとしたその時。


「先輩!こっちです」


 聞き覚えのある声に振り向くと王の従者ソウマがマンションを指差し誰かを呼んでいた。


「直ぐに出して‼」


 ナギを押し込みドアを閉める。

 遠くなるソウマをバックミラーで確認して一息つく。

「危機一髪…」

 そして隣で放心状態のナギを見つめ呟く。


「全然忘れて無いじゃないか…」


 ◆◇◆◇◆


 西園寺邸のリビング。 

 レイナと白井が顔を突き合わせている。


「この辺りに潜伏しているのかしら?」

 お得意様の聞き込みは不発に終わり、ミカ達の情報をもとに地図を広げ検討していた。

 ミカ達は夜の張り込みがしたいからと公園に戻っていった。


「白井が把握してないお得意様が居るのかもね」

「そうかもしれません。フットワークの軽いクソ王子ですから」

「明日は周辺の聞き込みでもするか?目撃者が居るかもしれないわ」

「場所の特定が出来る有力な情報が欲しいですね」


 リンドーン、リンドーン。インターホンが鳴る。


「誰かしら?」

 時刻は夜の八時を回っていた。

「真中兄弟じゃないですか?」

「あり得るわね、天野に言って居留守を使いましょう」

「大丈夫です、俺が絶対命令で追い返します」

 などと話しているとマヒロが魔界組を伴って入って来た。


「お嬢様、マーカイ国の方々が明日帰国なさると言う事でご挨拶したいそうです」

 正体を知りながら何食わぬ顔で迎え入れたマヒロ、何故通したと後で叱責される事を期待しての事とは言うまでも無い。


「夜分に失礼致します」

「こんばんわ、お姉さん」

「パーティー以来だね」


 レイナが正体を知っている事を魔界組は知らない。

 レイナ以外が天使と言う事も知らない。

 ミカが結界を強化したことも勿論知らない。

 よって、魔界組に勝ち目はない。


「この三人が例の?」

「ええ、まだ下界に居たのね?」


 下界?レイナの言葉にキョトンとする三人。


「何をしに来たのかしら?魔界の皆さん」


「えっ⁉バレてんじゃん」

「どう言う事?」

「あの第二王子、謀ったな‼」

 第二王子と言うレオンの言葉に白井が怪訝な顔をする。


「第二王子ってナギ様の事か?」


「そうだよ!その王子に脅されてお姉さんの魂を汚しに来たんだよ」

「見逃してやるとか言って、まさかグルだったとは思わなかったわ」

「姫様に手を出したら天界国と魔界国の全面戦争は免れませんよ‼」


 魔界組は各々の手に漆黒の矢を出現させレイナを睨み付ける。

 場に緊張が走る…と思ったが返って来たのは白井の深い溜息とレイナの穏やかな言葉だった。


「懲りて無いな?あのクソ王子‼」

「アンタ達、神野ナギの居場所を知っているの?」


 臨戦態勢の魔界組が一瞬ポカンとする。

 その隙に白井が光の矢で漆黒の矢を弾き飛ばした。


「光の矢を食らいたくなければクソ王子の居場所を吐け‼」

 

顔を見合わせる魔界組。


「喜んで‼」


 ◆◇◆◇◆


「ナギはどうしてる?」

「眠っているよ」


 藤堂邸の離れに造られたラギのラボに訪れたヨギは一連の騒動を話していた。


「そんなにナミに似ていたのか?」

「僕は見て無いよ…でも、ナギ兄さんの取り乱し方は尋常じゃ無かった」

「まだ引き摺っていたんだな…ナギを捨て冥界を選んだ女を…」

「捨てたわけじゃ無いよ?ナギ兄さんが悲しまない選択をしただけさ」


「ナギにとっては同じ事だ」


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