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奇跡の鍼灸師と俺様お嬢様  作者: 美都さほ
20/26

三兄弟集合

 藤堂邸に客が来た。

 執事に呼ばれたラギとナギが客間の扉を開ける。


「やあ!兄さん達、お久しぶり」


 豪華なソファーで寛いでいたのは天界国、第三王子ヨギだった。

「何故此処に…」

 冷や汗をダラダラと流しそう呟いたナギがラギを見る。

 ラギは知らないと言うように無言で首を振る。

「母上怒らせちゃって堕とされました~」

 テヘへと笑い舌を出す。


「お前もか‼」


 同時に突っ込む兄達。

「元はと言えば兄さん達の所為だからね⁉」


 昨夜、ナギの近況を知りたくてラギに電話を掛けていたヨギ。

「それは下界用の携帯電話…一体誰と話しているんです?ヨギ」

 振り返れば幼い子は必ず泣くレベルの恐ろしい顔の王妃コハクが立っていた。


「一週間、下界で反省しなさいって」

 兄達の眉間に皺が寄る。


「一週間だけって…甘いな」

「そうだね、贔屓だ‼」


 メイドが紅茶を淹れて出て行く。

「何でお前だけケーキ付なんだ?」

 ヨギの前には高級店のケーキが置いてある。

 甘い物好きのラギが不満を言う。

「だって僕、此処の大事なお客さんだもの」

 そう言った直後、失礼いたしますと客間のドアが開く。

 藤堂家一同がぞろぞろと入って来た。

 朝だというのにビシッと正装していた。


「これはこれは天神家のヨギ様、ようこそ御出で下さいました」


 当主の藤堂サオリが深々と頭を下げ挨拶をする。

 既に七十に手が届く年の割には肌には色艶があり活力に溢れていた。

「畏まらなくていいですよ。気軽に接して下さい」

 ソファーに仰け反り足を組んだヨギが片手をフリフリと振る。

「ありがとうございます。何かありましたら何なりとお申し付けくださいませ」

「分かりました。じゃあ早速ですが、この者達と話が有りますので退出して下さい」

 悪びれることなく言い放ったヨギを口をポカンと開けて見ている兄達。

 藤堂家一同はそんな二人に目もくれず再び頭を下げぞろぞろと出て行く。


「ね?」


 ニッコリ笑いウインクする。

「ね?じゃ無いよ‼どうやった?」

「まさか…お前…」

「神の力で暗示を掛けました」

 うふふと笑い目の横でピースする。


「お前だけ~⁉」


 神の力を剥奪されず堕とされた末っ子に憤慨する兄達。


「激アマだな‼」

「差別だ‼」


 ◆◇◆◇◆


 緑川警察署の署長室。

 カオリが着任に当たり説明を受けていた。


「君は確か…新垣君の知り合いだったね?」

「はい‼マコトさんにはガキの頃からお世話になっています」

「そうか…」

 コホンと咳払いした藤原が話を続ける。

「君には特別捜査班の一員となってある犯罪者の捜査を担当してもらう」


「特別捜査班?」


 泳いだ目をしている藤原に一抹の不安を感じる。

「新垣君も同じ特別捜査班だ」

「なら問題ありません‼特別捜査班で精進します」

 不安は新垣と同じ班という言葉で吹っ飛んだ。

「本当にいいのかね?過酷な職場になると思うよ?」

 尚も窺うように見て来る藤原に心配性なのかと思い力強く答える。


「華奢でひ弱に思われがちですが、これでも体力には自信が有ります!深夜の張り込みだろうと連日の泊まり込みだろうとならず者の取り調べだろうと大丈夫です‼」


 安心させるよう言った言葉は藤原を一層不安にさせる。

「うん…そう言う事では無いのだが…」

「?」

「諸々の説明は班長から聞くと良い」

 面倒になった藤原は溺愛する姪に丸投げした。

 じゃあ付いて来たまえと促し魔物の巣窟へと連れて行くのだった。

 そして、数分後。


「マコトさんの皮を被った悪魔がいる」


 と言って後ろにぶっ倒れるカオリだった。


 ◆◇◆◇◆


  藤堂邸のある閑静な住宅街。


「この辺りで降ろしたみたいだな」


 タクシー会社で聞き込みをしたミカ達が地図を片手に歩いていた。

 可愛い少女達が通り過ぎる。


「如何にも豪邸って感じの屋敷が多いな」

 そうですねとキョロキョロと辺りを窺う。

「あの公園で張り込みますか?」

 近くにある公園を指差しミカに提案する。


「よし!トウヤ、アンパンと牛乳を買って来てくれ」


「いやいや師匠、ドラマの見過ぎです」

「お前に言われたくないわ‼」


 その様子を藤堂邸の二階の客間からヨギが見ていた。

「あれミカじゃん!もう見付けたのか~優秀だな~流石は大天使」

 小声で呟きナギに声を掛ける。


「ところでナギ兄さん。此処の娘の要求は聞いてやれそうなの?」

 大天使の登場を知らせる気は微塵も無かった。


「ああ、ラギ兄さんと共同で近い内に仕掛ける予定」

 ちゃちゃっと終わらせるよと成功を確信している。


「カズキとシオリを二人きりにした後、僕の術でカズキに激しい動悸を起こさせる。吊り橋効果で知らず知らずの内に恋に落ち、兄さんが作った媚薬を撒けば後は勝手に既成事実の出来上がりさ」


「へ~凄い作戦だね(大丈夫なの?その作戦)」 

 若干棒読みのヨギの言葉にご満悦のナギ。

「だろう?西園寺レイナはアイツらが如何にかしてくれるし僕等の未来は安泰さ」

「此処のセキュリティは万全だしな。開発中の装置が出来るまでは居座らせて貰うさ」

 二人顔を合わせフフフと不気味に笑う。


「ラギ兄さん、何の装置作っているの?」


「秘密だ。元々天界で作っていたモノなんだが堕とされて頓挫した」

 一から作り直しだったよと顔を顰める。


「他所の奥さんに手を出すから」

「そうそう不倫は良く無いよ?」


「だから、誰情報だよ⁉」


 呆れ顔のラギが突っ込む。

「国中の噂だよ?」

「ふん!大方くそジジイが流した噂だろう。百歩譲って倫理に欠けていた事は事実だし」

 一体、何をやらかしたのかと凄く気になる弟達だった。


 ◆◇◆◇◆


 緑川警察署の医務室で目を覚ますカオリ。

 見慣れない天井をボーっと眺めていたらすぐ横から声がする。


「やっと起きたわね」


 声のした方へゆっくりと顔を向けるとレイナが腕を組んで椅子に座っていた。


「お前は⁉西園寺レイナ‼」


 ガバッと起き上がった瞬間、ズキッと頭に痛みが走る。

「ウッ‼」

「まだ寝ていなさい!倒れて頭を打ったんだから」

「何でお前が此処に居る?」

 頭を押さえ鋭い目で問い掛ける。

「はぁ?私は此処の刑事でアンタが配属された特別捜査班の班長だからよ。さっき会ったでしょう?」


「さっき…?」


 倒れる前の記憶を辿る。

 それは一時間程前。


「ここが特別捜査班の詰所だ」


 署の裏口から出た所に急遽建てられたプレハブ小屋。

 ドアには特別捜査班室と書かれたプレートが貼ってある。

 勢いよくドアを開けると室内のメンバーがカオリに顔を向ける。


「今日からお世話になります。藤堂カオリです!宜しくお願い致します」


 深々と頭を下げ挨拶する。

「カオリじゃないか~新顔ってお前だったのか」

 聞きなれた声が前方から聞こえ嬉しさを噛みしめながら顔を上げる。


「マコトさん‼」


 視線の先には軽薄そうなチンピラが黒いシャツをはだけて座っていた。

「あれ?マコトさん?」

 キョロキョロと視線を走らせマコトを探す。

「何だよカオリ、ひと月会わなかっただけで顔も忘れたのか?」

 チンピラからマコトさんの声がする…?思考がついていけないカオリはそのままフリーズした。


「そいつ、新垣さんの知り合い?固まっているみたいだけど緊張してる?僕が緊張をほぐしてあげようか?」

 ナツキが掌で鞭をピシピシと打ち付ける。

「チョット、ナツキ止めなさいよ⁉イイ男じゃない?分からない事があればこのトシキお姉さんに何でも聞いてね」

 バッチリメイク済みの中村がカオリにウインクを投げかける。

「先輩達、静かに!藤堂さんが困ってますよ?宜しくお願いします藤堂さん!」

 固まったままだったカオリの手を取り握手する。

 握手の振動で我に返る。


(そうか‼このチンピラの格好は捜査の為のものなんだ!俺とした事がとんだ失態を!)


「少し緊張していたみたいで、すみません。もう大丈夫です」

 頭をかきながら苦笑いする。

「しかしマコトさん、凄い恰好ですね?潜伏捜査ですか?」


「あ?私服だぞ?」


 ニッコリ微笑むカオリに真顔で返す新垣。

「センス無いわよね~」

「悪趣味だ!調教が必要だな?」

 何かを察した藤原が無言で出て行く。


「署長、何の説明もしてませんね?」

「みたいね」


 レイナと白井が耳打ちしている中、カオリの心は現実逃避を始めていた。


(なるほど…これは俺のサプライズ歓迎イベントだな?硬派なマコトさんが軟派男に変身的な?ドッキリ企画乗ってやろうじゃないか)


「お似合いです、マコトさん」

「だろ~?」


(あの日以来生真面目になったマコトさんがどこまで耐えられるかな?負けませんよ)


「改めまして、宜しくお願いしますマコトさん」

 差し出された手を心底嫌そうな目で見る新垣。

「俺は男の手を握る趣味は無い」


(おっと、中々手強いですね?心が折れそうです)


 涙目になりながらも耐える。

「そうだ、マコトさん。俺とバディを組むって話覚えてますか?」

「お前とバディ?」

 薄ぼんやりした記憶の中では当然覚えている筈も無く首を傾げる。


「全く覚えて無いな」


 ピシッと心にヒビが入る音がしたが気を取り直して手錠を取り出す。

「見て下さい!お揃いで作った手錠です。これで犯人を…」


「カオリ…気持ち悪いぞ」


 カオリの手から手錠がスルリと床に落ちる。

 憐みの目がカオリに集まった。

「それに俺のバディは子猫ちゃんだけって決まってるし」


「子猫ちゃん…?」


 新垣は両手を広げレイナに向き直る。

「さあ!子猫ちゃん、俺の胸に飛び込んでおいで!君の為にへそまでボタンを開けておいたよ」

 突進していき顔面に蹴りを入れられる新垣の姿を遠い目で見ていたカオリ。

 脳内ドッキリ企画は惨敗に終わった。



「あれは悪夢か?」

 昔の仲間達と飲み歩いては女性に声を掛けられていた。


『悪いが野郎だけで飲みたいんだ』


 その都度断り続けていた新垣。カオリは女性に興味を示さない新垣が所謂そっちの人間かもと思っていたほどだ。

 服装も非番だというのに何時も白いワイシャツを着ていた。偶に水色のワイシャツを着て冒険してみたと言っていた。


「誰がマコトさんを堕落させたんだ‼お前か?子猫ちゃん!」

 カオリの鋭い視線がレイナを射抜く。


「奇跡の鍼灸師、知ってる?」


 何の脈絡も無く投げかけられた言葉にポカンとレイナを見る。

 次の瞬間怒りが込み上げてきた。


「何の話をしている⁉」


「だから…奇跡の鍼灸師。知っているの?」

 尚も話を続けるレイナに怒りを通り越して呆れ果てた。

「もういい‼一人にしてくれ」

 レイナから視線を外し窓の外に目をやる。


「新垣がああなったのはそいつの所為よ」


 振り返ったカオリは再び激しい頭痛に見舞われるのだった。



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