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奇跡の鍼灸師と俺様お嬢様  作者: 美都さほ
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堕とされた天使達

「天使?私をバカにしているの?」


「お嬢様をバカになど致しません‼お怒りなら気が済むまで私を…」

「二十年前、私とトウヤは君と出会っている。覚えていないか?」

 マヒロの言葉を遮りレイナに問い掛けるミカ。

「二十年前?もしかして…悪漢から助けてくれたお姉さん…?」

「そうだ‼あの頃と同じ姿形をしているだろう?天使は年をあまり取らない」

 レイナはミカとトウヤを交互に見る。

「全く覚えていないけど…お前この前、神野ナギを追いかけていた時居たわよね?」

 顎に指を置きトウヤに視線を送る。


「はい。あの時は見知らぬものと言って申し訳ございません、レイナ殿」


「レイナ殿?何だか天童トウコを思い出させる呼び方ね」

 フンっと鼻で笑うレイナを横目にソウマとトウヤが目配せをする。


「ご覧ください、レイナ殿」


 トウヤが立ち上がり術を発動する。

 トウヤの身体が一瞬にして天童トウコに変化する。

 目の当たりにしたレイナは目を見開き驚愕する。


「信じて貰えたでしょうか?」

 変化を解き再び正座する。


「ええ。そんなモノを見せられては信じるしかないでしょう?」


「すみません先輩。今まで黙っていて」

 納得したレイナに頭を下げるソウマ。

「いいわ…でも貴方達の正体が世間に知れたら大騒ぎになるわよ?」

「ああ。正体を知られてしまう事は天界では禁忌だ。もしも知られたら神の力で記憶を消す事になる」

「何ですって?私は記憶を消されるの⁉」

 怪訝な顔のレイナにそれは無いと否定する。


「天使の祝福を受けた人間には正体を知られても良いという特例がある」


「便利な設定で…ムグッ…」

 ソウマに口を塞がれるマサト。


「天使の祝福?」


「レイナはとても美しい魂を持っている。美しい魂は悪しき者に狙われやすいんだ。だから私が祝福を与えお前を守っていた」

「現に仮装パーティーの時狙われました。マーカイ国の奴らは魔族です‼」

 トウヤが先日のパーティーの事を説明した。

「はぁ…頭が痛くなってきたわ」

 頭を押さえ首を振る。


「で…天使が揃って私に何の用なの?」

 顔を見合わせる天使達。


「実は…」


 数日前の天界。


「ナギ様が百年追放⁉」


 コハクの宣言に驚愕するアマネ。

「これより私の許可無しに下界へ行く事は出来ません」

 静かに答えた王妃の横で神の王が土下座させられていた。

「でしたら私に許可をお与えください」

「なりません」

「何故ですか⁉」

「ナギに力添えする者は許可しません‼」

「そんな…」

 うなだれるアマネ。

「下がりなさいアマネ。誰か、ミカとトウヤを呼んでまいれ‼」

 アマネと入れ替わりにミカとトウヤが謁見の間に入ってきて王妃の前に跪く。


「先ほどナギに天罰を下しました。次はお前達の番です」

「はい…」

 天罰を受ける覚悟をし頭を下げる。

「…と言いたい所ですが、猶予を与えましょう」

「えっ?」

「猶予?」

 顔を上げるミカとトウヤ。


「今すぐ下界に下りてソウマ、マサトと合流しナギを警察に突き出しなさい‼そして無事ナギを刑務所に送れたなら、お前達のしでかした事は不問にしましょう」


「王子を刑務所に…?」

「ナギにはそれ相応の罰が必要です。一度臭い飯とやらを食べさせて改心させなければ…」

(ナギ様の為に苦渋の選択をされたのですね…王妃様)

「私の気が収まらない‼天罰だけでは生温い‼」


(激おこなだけだった…)


「天罰で暫くは動けないでしょう。逃げられない内にサッサとナギを警察に突き出しなさい‼」

 天罰が下ると雷に打たれた状態になり暫く動けないのだ。

「仰せのままに」


「神野ナギが神⁉」


 驚きの声を発するレイナ。

「そうだ。王妃様の怒りを買い神の力を剥奪されてはいるが、れっきとした神だ」

「神が犯罪者…世も末だわ」

「俺達はミカ様と合流し王子のマンションに行ったんですけど…」

「逃げられたと言う事ね?」

 はい…とうな垂れる天使達。

「王子を刑務所に入れるまで俺達は天界に帰れません」

 再び顔を見合わせる天使達。

「そこで、レイナにお願いがあるのだが…」

「警察の力を借りたいんでしょう?」

「それもあるのだが…」

 言いにくそうなミカに代わりトウヤが口を開く。

「実は私達は、この身一つで天界から出されました。当面の生活費や住む所が無いのです。何でもします‼ここにおいて下さい‼」

 土下座するトウヤ。

「白井の所では駄目なの?」

「俺も天界からの援助を切られました。刑事の安月給では二人を養うことが出来ません」

「そう…仕方ないわ。どうせ私と天野兄弟しか居ないんだし好きに使って」

「ありがとう!レイナ」

 こうしてレイナと天使達の共同生活が始まった。


 ◆◇◆◇◆


 時間は遡り天罰が下った数時間後、名も無い公園のベンチにナギが苦しそうに横たわっていた。


「くそ…雷のせいで携帯電話が壊れた…ソウマに連絡したいのに…」

 携帯電話を地面に投げつけふらつく足取りでトボトボと歩き出す。

「でも…何故天罰が下ったんだ?術はちゃんと解いたのに…」


「指名手配されていた事が母上にバレたんだって」


 突然聞こえてきた声にビクっと身体が跳ねる。


「久しぶりだね?ナギ」

 振り返るとそこには眼鏡を掛けた黒髪の男が立っていた。


「ラギ兄さん?」


 ナギに声を掛けたのは数十年前、天界王の怒りを買い下界に落とされ永久追放となった長兄のラギだった。


「ヨギが知らせてくれたんだ」

 携帯電話をフリフリと揺らすラギ。

「何で天界と連絡取れてるの?」

「私の偉大な才能があれば天界のセキュリティなんてチョロい」

 眼鏡を中指で押し上げながらニヤリと笑う。

「何で僕の居場所が分かったの?」

「愚問だね?私の偉大な才能があれば街中の監視カメラ見放題さ」

 腕を組みふんぞり返るラギ。


「…僕も永久追放されたって事なの?」


「百年追放らしいぞ?神が結婚詐欺で指名手配なんて前代未聞だって」

「結婚詐欺なんてしてないのに…」

 ガックリと肩を落とすナギの頭を優しく撫でる。

「残念ながら王宮にはある事無い事知れてしまった。百年追放で済んだが…母上はお前を刑務所に入れたいらしいぞ?」


「えっ⁉」


「お前に加担した天使達を下界に落としたらしい…お前を刑務所に入れる為にね」

「あのくそババア‼」

 天を見上げ悪態をつく。

「行く当てがないんだろう?」

「匿ってくれるの?」

「勿論。大船に乗ったつもりで付いておいで」

 歩き出したラギの後を追いふと思い出した疑問を投げかける。


「そう言えば兄さん、下界に落とされた理由が伴侶の居る女神に手を出したからって噂されていたけど本当なの?」

「何そのガセネタ。お前じゃあるまいし」

「僕だってしないよ⁉」


 ◆◇◆◇◆


 緑川警察署、朝から課長の三木が血圧を上げていた。


「新垣、シャツのボタンをはめろ‼」

 シャツをはだけて足を組んで椅子に座る新垣マコト。

「ボタンはめたら俺の魅力半減ですよ~」


「中村!会議中だ、化粧ポーチをしまえ‼」

 コンパクトを覗き込みマスカラを塗っている中村ヨシキ。

「身だしなみは女の最重要案件なの‼」


「真中…足を下ろせ!腕を組むな!鞭を持ち込むな‼」

 机に足を乗せ右手に持った鞭を左肩にポンポンと打ち付ける真中ナツキ。

「お気になさらず会議始めてください」

 はぁ~と深いため息を吐く三木に署長の藤原が憐みの視線を送っていた。


「毎日あの三人に振り回されていますね、課長」

「その内慣れるわ」

 後方の席でコソコソと話す西園寺レイナと白井ソウマ。

「他人事みたいに言わないでくださいよ、先輩」

「他人事だわ?と言うか貴方達のせいでしょ⁉」

「返す言葉もありません」

 シュンとするソウマ。


「ところで、ミカ様達はどうしているんですか?」

「ああ…仕事を斡旋したわ」


「ええ⁉仕事⁉トウヤは兎も角、大天使に仕事をさせるなんて…」


「ここではダダの居候よ」

「仕事ってどんな?」

 内心で冷や汗をかき大天使に与えられた仕事が気になり言葉にする。

「カズキがいくつか経営している会社に入れてもらったわ」

「カズキって…もう一人の被害者…」


「丁度、興信所があったから…そこにね。人探しには打って付けでしょう?」


 マサトが居たらツッコんでいたなと思うソウマだった。


 ◆◇◆◇◆


 真中興信所。カズキが単独で立ち上げた会社の一つである。


「今日、社長がお見えになる」


 所長が青ざめた顔で皆に告げる。

「ええ⁉何か不手際があったのでしょうか?」

 どよめき出す興信所内。

「中途採用者を2名連れてくるそうだ」

「ああ…また社畜が増えるんですね?」


『サービス残業、休日出勤は当たり前だ‼労基法?真中の力でねじ伏せてやる‼』

 所員達の脳裏に浮かび上がるカズキの言葉。


「真中ブランドと給料に釣られた俺達が悪かったんだ…うっ…うっ…」

「泣くな…定年までの辛抱だ。老後に期待しよう」

「定年まで生きている自信がありません…」

 肩を抱き合い嗚咽を漏らす所員達。そこへ扉が静かに開きカズキ達が入って来た。


「社長‼」


 場に緊張が走る。一同起立して背筋を伸ばす。

「皆さん、お疲れ様です。楽にして下さい」


「えっ…?」


 物腰柔らかなカズキに目を丸くする所員達。

「紹介します。こちら天宮ミカさんと天童トウヤ君です。今日からこちらで働いてもらう事になりました」

「天草ミカです。皆さんどうぞよろしく」

「天童トウヤです。宜しくお願い致します」

 深々と頭を下げる。

「二人は私のフィアンセの古い友人で今まで海外で暮らしていたそうなので色々分からない事や失敗があると思います。皆さん、優しく丁寧に指導してください」

「…」


『ハア?対象者の所在が分からない…だと?』

 深々と椅子に座り所長を睨め付けるカズキ。

『はい…行方をくらませたようで見つかりません』

 冷や汗を拭いながら報告する所長に持っていたペンを突きつける。

『俺がはいそうですか、とでも言うと思っているのか?増員して明日までに探し出せ‼見つからない時は…お前の給料三か月分カットな』

『申し訳ございません‼』

『失敗して謝る時は土下座って決まっているんだよ‼這いつくばって頭を床にこすりつけろ‼俺がいいと言うまでな‼』


「…」

「それではよろしくお願いします。私は本社の方にいますので何かあれば連絡してください」

「はい…分かりました」

 所長の言葉に静かにうなずき踵を返すカズキ。ふと立ち止まり振り返る。


「ああ…それから…」

 ビクッとする所員。


「くれぐれも、サービス残業や休日出勤はしないでください。お願いしますね」


 パタンと扉を閉め出て行くカズキを見送りながら所員達が一斉に呟く。


「誰?」



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