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奇跡の鍼灸師と俺様お嬢様  作者: 美都さほ
16/26

お嬢様のライバル?

 王の宮殿の柱の陰、一人の神が様子を見ている。王妃コハクが怒り狂いミカとトウヤを責め立てていた。女神アマネはオロオロとその場に立ちすくみ、王は正座させられ、従者達はブルブルと震え傍観する事しか出来ないでいた。神がフッと笑い携帯電話を取り出す。


「あっもしもし、ナギ兄さん?ヤバいよ、今直ぐそこから逃げて」


「ん?ヨギ?逃げてってどう言う事?」

 耳元で聞こえるポカンとした声にヨギがまた笑う。

「母上の雷が落ちそうだよ?兄さんに、アハハハ」

「何笑って…うわあああああ‼」

 電話がプツンと切れた。


「ほらね?」


 ◆◇◆◇◆


 西園寺家のリビングに正座するミカ、トウヤ、ソウマ、マヒロ、マサト。

 その前には眉間に皺をよせ仁王立ちするレイナの姿があった。


「説明して貰いましょうか?」


 ◆◇◆◇◆


 十数年前の下界、とある中学校。

 シオリの机の周りにクラスメイトが群がっている。

「藤堂さん、今日僕の家に来ない?」

「私達とショッピングだよね、シオリちゃん」

「何言っているんだい、シオリちゃんは僕とデートに…」


「ごめんなさい。今日はユウキ君にお呼ばれしているの」


 クラスメイトが次々と誘う中、シオリが申し訳なさそうに断るとユウキと呼ばれたクラスメイトが誇らしげに微笑んでいた。

「悪いね君達。みんなのアイドルを独り占めして」

 えーっと不満の声を上げるクラスメイト。

「アイドルだなんておこがましいわ」

 頬を赤らめ顔を両手で隠す。

「そんな事無いわよ‼藤堂さんはこのクラスのアイドルよ‼」

「違うね‼この学園のアイドルさ」

「やめてちょうだい。私なんてどこにでもいる普通の中学生よ」


 藤堂シオリ…大手の貿易会社、銀行、ホテルを経営する藤堂グループ総帥の孫娘。

 容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能な彼女は男女問わず絶大な人気があった。

「じゃあ明日は私達とショッピングしてね」

「いいわ。約束ね」

 数人の女子と微笑み合っているとクラスメイトが息を切らせて教室へ駆け込んできた。


「みんな、大変よ‼このクラスにとんでもない不良が転校して来るんですって⁉」


「えっ?どういう事?」

「不良ですって⁉」

 ザワザワと騒ぎ出すクラスメイト。

「職員室で先生方が話していたのを聞いたの」

 女生徒は息を整え語り出す。

「その人、年少の頃から問題児で、クラスメイトを裸にしたり、先生を病院送りにしたり、先日は暴走族と乱闘したらしいのよ⁉」

 数人の女子がキャーと悲鳴を上げる。

「なんて野蛮な奴なんだ⁉」

「私怖いわ‼同じクラスだなんて嫌よ‼」

 男子生徒は青ざめ、女子生徒は涙ぐむ。


「みんな落ち着いて。大丈夫、学級委員の私がみんなを守るから‼」


 驚いた顔のクラスメイト達ががシオリを見る。

「藤堂さん‼何言っているんだい⁉危ないよ‼」

「そうよ‼シオリちゃんは守られる方でしょう⁉」

「そうだ‼みんなでシオリちゃんを不良から守ろう‼」

 そうだそうだと盛り上がる教室。

「みんな…ありがとう。嬉しいわ」

 涙ぐむシオリ。


(フフフ…ちょろい愚民共だわ。せいぜい私の盾になって、そいつから私を守りなさい。まぁそいつもいずれ私の魅力でひれ伏す事になるのだけれどね…)

 しかし、心では悪態をついていた。


「安心してシオリさん。何があっても僕達は君の味方だ‼」

 ええと言って涙を拭く。


(私はこの学園の女王。あんた達は下僕よ‼)


 そこへ先生が入って来た。急いで席に着く生徒達。


「突然ですが転入生を紹介します。君入りなさい」


 クラスメイトに緊張が走る中、その生徒が教室に入って来る。

 長い髪をなびかせ、優雅に教壇の前へと歩いて正面を向く。


「西園寺レイナよ。よろしく」


 凛とした佇まいにクラスメイトが息をのむ。


(女ですって⁉)


「西園寺って、あの西園寺グループの?」

「誰だよ、とんでもない不良って言ったのは⁉」

「う…美しい…」

「天使が舞い降りてきたみたい…」

 クラスメイトはレイナの美貌にうっとりするのだった。


(愚民共‼何を呆けているの‼あんた達は私だけを見てればいいのよ‼)

 ギリギリと歯ぎしりをするシオリ。


「とある事情で今日からこの学園の生徒になりました。皆さん仲良くしてください」

「先生!僕が西園寺さんのお世話をします。丁度隣の席が空いているので」

 ユウキが手を挙げ立ち上がる。


(何ですって?あんたは私の下僕でしょう!)


「そうか、頼むよ。西園寺君、席に着いて」

 先生に促され席に着くレイナ。

「よろしくね、西園寺さん」

「よろしく」

 ニッコリ微笑むユウキ。


(騙されてんじゃないわよ‼こうなったら私が化けの皮剥いであげるわ‼)


 ホームルームが終わりレイナの周りにクラスメイトが集まる。

「西園寺さん、ご兄弟はいらっしゃるの?」

「一人っ子よ」

「休みの日は何しているの?」

「武道の稽古だけど?」

「今日用事ある?僕の屋敷で君の歓迎会したいな」

「あら?ユウキ君今日はシオリちゃんと約束していたじゃない」

「歓迎会が優先だよ~」

 ワイワイと盛り上がるレイナの席にシオリがやって来る。


「あの…西園寺さん、学級委員として聞きたい事があんだけど…」


「何?」


 遠慮がちに聞いてきたシオリに視線を向ける。

「あなたに変な噂が立っていて、クラスメイトが気にしているのよ」

「あらそう。どんな?」


「前の学園で、生徒を裸にしたとか、先生を病院送りにしたとか、暴走族と乱闘したとか…」


「ああ…本当だけど?」

 ええ⁉と驚き騒ぎ出すクラスメイト。

「本当に不良だったの?」

「信じられない…」

「こ…怖い‼」

 レイナから距離を取るクラスメイト。


(自分でバラすとか馬鹿なの?)

 心でほくそ笑みながら驚くふりをする。


「弱い者虐めしていた奴を裸にしたわ。生徒にセクハラしようとしていた先生を投げ飛ばしたわね。後、ウチの周りで爆音上げて走っていた奴らを懲らしめたけど…何か問題ある?」


「えっ⁉」

「じゃあ、悪い人をやっつけたって事?」

「全く問題ないよ‼」

「正義の味方じゃない‼」

「尊敬するよ!西園寺さん‼」

 打って変わってレイナを絶賛するクラスメイト。


(チッ‼)


 その時、校庭に爆音が轟く。

 ブーンブンブンブン‼ブーンブンブンブン‼一台のバイクが校庭の真ん中で停車する。

 学園中の生徒が窓際に集まり校庭を見下ろし困惑している。


「西園寺レイナ出てこい‼この学園に転入した事は分かっているんだ‼」

 バイクに跨った若い男が叫んでいた。


「またアイツか…面倒くさい…」


 そう言うとレイナは窓を開ける。

「危ないよ、西園寺さん‼」

「そうよ、隠れて⁉」

「あ~大丈夫だから」

 そう言うと窓枠に足を掛け校庭に飛び降りた。

 教室内に悲鳴が上がる。

「ここは二階だよ⁉」

 シオリが窓から下を見下ろす。


「アンタもしつこいわね~」


「西園寺レイナ…」


 レイナと対峙する男を見てシオリが驚愕する。


(カオリ兄さん?)


「お前のせいでマコト先輩は変わってしまったんだ‼」

「こっちもアンタのせいで転校させられたんだけど?」

「転校ぐらいなんだ‼俺達は心の拠り所を失くしたんだぞ‼」

 騒ぎを聞きつけた先生や生徒達が校庭に出てくる。

「関係の無い生徒はここから出て行きなさい‼」

「うるせぇ!こいつに落とし前付けたら出て行くよ‼」

「何回来ても同じだって言っているでしょう?」

 そう言うとカオリとの距離を詰めバイクごと蹴飛ばすレイナ。

 バイクから投げ出されたカオリは低く唸り声を出す。

「くっそ…」


(家出して何やっているのよ、カオリ兄さん‼)


 そこへ一人の若い男が走って来た。

「カオリ‼」

 その声に顔を上げ振り向くカオリ。


「マコト先輩?」


 マコトはカオリの横を通り過ぎ、みんなの前で土下座する。

「お騒がせしてすみません。どうか、警察沙汰にはしないでください」

 マコトは地面に額を押し付け大声で謝罪する。

「やめてください、マコト先輩‼先輩が土下座する姿なんて俺は見たくない‼」

 立ち上がりマコトに近付く。

「馬鹿野郎!」

 ドカッ‼頬を殴られるカオリ。

「目を覚ませカオリ‼俺達がしてきた事は間違っていたんだよ‼」

「マコト先輩…」

「俺達が集まれば何者にも負けない強い力があると思っていた…だがどうだ。一夜にして俺達の族はたった一人の女子中学生に壊滅させられた…」

 マコトの言葉にその場の生徒が驚く。


「その子が体を張って教えてくれたんだよ。思いあがるなってさ」


 いや…只の害虫駆除だからと思ったレイナだったが口にはしなかった。

「これからは世の中の為になる事にこの力を使わないか?カオリ」

「先輩‼」

 涙を流し抱き合う二人。


(何この茶番‼正体ばれる前にサッサと帰れ‼)

 カオリを睨み付けるシオリ。

「これから先、この学園に足を踏み入れないなら今日の事は問題にしませんよ」

 表に出てきた学園長が穏やかに告げる。

「ありがとうございます」

「どうもすみませんでした」

 帰るぞとカオリを促し学園を去って行くマコト。


(はぁ~カオリが私の兄だと知れたら女王に君臨計画が頓挫する所だったわ)


 胸を撫で下ろし再び校庭を見る。

「西園寺君。君の正義感の強さはこの学園の誇りだよ」

「次の生徒会長は西園寺さんに頼みたいな」

 学園長と生徒会長が微笑みながらレイナに語り掛ける。

 レイナを囲んで生徒達が拍手をする。

「西園寺様‼」

「レイナ様‼」

「様はやめてよ‼王様じゃないんだから」

 心底嫌そうな顔のレイナ。

「君は女の子だから女王様だよ?レイナ様」

「何でもお申し付け下さい。レイナ様」


「嘘でしょう…?」


 シオリの嘆きは生徒達の歓声に消されたのだった。



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