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奇跡の鍼灸師と俺様お嬢様  作者: 美都さほ
15/26

復活俺様お嬢様

 ホテルの客室廊下を逃げ回るナギ。

 追うふりをして逃げ道を探すトウコ。


「こうなったら鍼で動きを押さえる‼」


「駄目です‼それは最終手段に取っておいて下さい!」

 本末転倒でしょうと諫める。


「100回殺す‼神野‼」

 鬼の形相のナツキが猛ダッシュで追いついて来る。


「来たー‼もう駄目だー!最終手段発動!」


 ナギは鍼を構え投げようとする。

「駄目ですって‼」

 咄嗟に腕を掴むトウコ。

 鍼がナギの手を離れナツキに向かって飛んで行く。

 

 プスプスプスプスッ‼


「あっ‼」

 額に手をやるトウコ。


「あああ…」

 ナツキは声を上げその場にうずくまる。


「あ~…あのツボは…」


「そこか‼」


 カズキが飛び出して来る。

 うずくまるナツキに気付き怒りに火が付く。


「貴様‼俺の下僕にまで…」

 射貫くような目で近付くカズキ。


「キャー‼怖い~‼」

 思わず鍼を投げる。

 

 プスプスッ‼プスッ‼


「あああ…」

 うずくまるカズキ。


「王子~」

 トウコの悲痛な叫びが客室廊下にこだまする。


 再びロビー。


「放せー‼放せー‼」

「兄上‼兄上‼」

 マサトに羽交い絞めされたマヒロがジタバタしている。


「まさか…男にまで愛されているなんて…さすがですナギ様」

 勘違いしたままのアマネが感心しているところへ隊員が戻って来る。

「隊長、申し訳ございません。取り逃がしてしまいました」

「そう…どうでもいいわ。天界に帰る。エレベーター直ったんでしょう?」

「はい。今朝直ったと連絡がありました」

 作戦の練り直しでしょうかと問い掛ける隊員達に向き直り…。


「討伐隊辞めて下界で暮らすわ‼後はよろしく‼」

 軍服を脱ぎ捨て去って行く。


「ええええ⁉」


 アマネは扉へと急ぐ。

 ふと視線の端に交番の掲示板が入る。

 足を止め視線の先にあるポスターを見て目を見張る。


「えっ?ナギ様のポスター⁉もしかしてアイドル?奴らは追っかけとか言う輩だったのね?」


 それは指名手配のポスターだった。


「再会の記念に持って帰りましょう」

 アマネがポスターを剥がす。


「そうだ‼王妃様にお見せしよう。きっとお慶びになるわ。」

 

 箱入り娘のアマネはアイドルは知っていても指名手配のポスターの事は知る由も無かった。


 ◆◇◆◇◆


「う…ん…」

 騒がしさに目を覚ましたレイナ。

 羽交い絞めされた天野と羽交い絞めしているマサトに気付く。

「さあ兄上!ウチに帰りましょう」


「帰れると思うか?」


 ガチャ。マサトに手錠を掛ける。

「娘!何をする⁉」

「お嬢様…?」

 レイナの声で正気に返るマヒロ。

「天野、戻って来たの?」

 薄ぼんやりと行方不明だった事を思い出したレイナ。

「兄上‼助けて下さい‼」

「マサト⁉何故ここに?」

 我に返ったマヒロがマサトに気付き驚く。

「お前達、兄弟なの?」

「はい。えっ?手錠?マサトが何か?咎めるなら兄の私を‼そのガラスの靴で‼」

「兄上…」

 兄の真意には気付かず喜ぶ。

「こいつは神野の一味よ‼神野は何処へ行ったの?」

「知りません!それに私はナギ様の一味ではありません‼脅されて護衛をしていただけです‼」

 レイナをキッと睨み付け弁明する。


「お黙り‼罪は罪よ‼刑務所で反省する事ね‼」

 マサトの弁明に聞く耳を持たないレイナ。


「…お嬢様…?何だか様子が変です…いや、変だったのはこの前で…」


「そうね、何だか頭の靄が取れたみたいにスッキリしているわ」


「術が解けたからじゃないですか?」

 不貞腐れて呟くマサト。


「術が解けたって⁉」

 ぐるんとマサトに向き返り口をパクパクする。

「はい。ナギ様が解いていました」


「お嬢様‼」


 レイナに抱きつくマヒロ。

「主に気安く抱きつくな‼」

 スパパパーン‼レイナの往復ビンタが炸裂する。


「お帰りなさいませ、お嬢様~‼」


 ◆◇◆◇◆


 再び客室廊下。


「どこ行ったんだ?くそ王子は?」

 白井はキョロキョロと辺りを窺う。

 居たぞ‼と新垣の声が聞こえる。

「チッ‼見つかったか‼」

 最終手段‼とナギの声。


「何が最終手段なんだ?」


 急いで声のする方へ向かうと新垣と中村がうずくまっていた。

 近くにナギとトウコが居た。

 壁に隠れて手招きをする。

「ソウマ‼」

 気付いた二人が駆けて来る。

「シッ‼兎に角逃げるぞ‼」

「怖かったよ~」

 涙目で訴えて来るナギに舌打ちをして階段を駆け下りる。

「申し訳ございません。逃げきれず、大変な事に…」

 不穏なトウコの言葉に耳を塞ぐ。

「聞きたくない‼俺は何も知らない‼」

 忍者の衣装を脱ぎ、ホテルの裏口からタクシーに乗り込む。


「はあ~助かった」

 ホッと息を吐く。

「これから一歩も外へ出るなよ⁉」

「頼まれたって出ないよ⁉」

「これで王妃様に報告出来ます」

 変化を解いたトウヤが頭を下げる。

「ところで…マサトは?」


「あっ‼」


 ◆◇◆◇◆


 翌日、緑川警察署。


「マサトと言う男は、神野に脅されての犯行で書類送検で済みそうだ」

 課長の三木の言葉に頷くレイナ。

「今後、ウチで面倒見るから心配無いわよ!」

「で…神野は逃走…被害にあったのがこの4人か…」

 目の前の光景を見ながら深く溜息を吐く。

「神野を逃がした責任をとって天童君は警察辞めちゃうし…」

 署長の藤原が残念そうに呟く。

(トウヤめ!サッサと天界帰りやがって‼)

 白井が内心で毒を吐く。

「これから大変だけど…レイナが元に戻って良かった、良かった」


「良くないだろう‼どうするの?こいつら」

 署長に食って掛かる課長。


「どうでもいい‼」

 腕組みをしたレイナがスパッと切る。


「どうでもいいなんて素直じゃないな、子猫ちゃん。今夜俺とデートしようぜ‼」

 黒いシャツをはだけさせた新垣がレイナに向かってウインクする。


「新垣さん、困ります。レイナさんは私の婚約者ですから近付かないで頂きたい」

 スーツ姿のカズキが黒縁の眼鏡を上げながら抗議する。


「兄さんこそ何言っているんだ?レイナは僕のペット。飼い主の許可無しに婚約者を名乗らないで貰える?」

 机に足を乗せたナツキが気怠そうに兄に冷たい視線を送る。


「レイナ⁉朝ご飯ちゃんと食べた?サンドイッチ有るから食べる?アンタ細いんだからしっかり食べなきゃ駄目よ‼」

 バッチリ化粧した中村がサンドイッチを差し出す。


「おい中村‼僕のペットに勝手に餌やるんじゃない‼」

「子猫ちゃんはサンドイッチよりも俺とのモーニングコーヒーがお望みなんだよな?」

「新垣さん、セクハラです‼訴えますよ?」

「レイナ、見て見てこの口紅!新色なんだって。アンタにも塗ってあげるわ」


「カオスだ…」


 白井の呟きはモンスター達の喧騒にかき消された。


 ◆◇◆◇◆


 天界、王の宮殿。


「王妃様のお力添えで無事悪魔を撃退しレイナの術が解けました。ありがとうございました」

 跪き頭を下げるミカとトウヤ。

「ご苦労様でした。エレベーターを壊した悪魔も大方退治出来たと聞いています。これで一安心。後はナギを迎えに行くだけです」

「そうですね‼急いでナギ様をお迎えしましょう」

「何でしたら私が今すぐにでも…」

 立ち上がるトウヤの後ろから足音がした。


「王妃様‼ご相談があるのですが…」

 アマネが駆け寄り跪く。


「アマネ、どうしたのです?討伐は終わったのですか?」

「その事なんですが…私、本日をもって討伐隊隊長を退きたいと思います」

「それは一体どういう事です?」

 アマネの言葉に驚くコノハ。

「実は下界でナギ様にお会いして、私もナギ様のお側で暮らしたいと思いまして…」

 頬を赤らめて話すアマネ。

「オホホホホ‼それには及びませんよアマネ。もうすぐナギは天界へ戻ってきますから」

「えっ?それは本当ですか?」

 パッと顔を輝かせるアマネ。

「勿論です。それでナギは下界でどのように暮らしていましたか?」


「ナギ様は下界で凄い人気です‼皆に追い掛けられていました‼」


「まあ⁉そうなの?顔だけは良いですからね~嫌だわ、親の欲目かしら…」

「あちこちにポスターが貼ってありました。王妃様にお見せしたくて持ち帰ってしまいました」

 持ち帰ったポスターを渡すアマネ。


「⁉」


(私の本能が逃げろと言っている)

 それを見たミカとトウヤが心の中で警鐘を鳴らす。


「こらこら、勝手に持ってきてはいけませ…ん…」

 固まる王妃。


「逃げるぞ‼」

「はい‼」

 そっと後退り逃げようとする。


「お待ちなさい‼そこの二人⁉」


「ヒィ⁉」

「何故逃げようとしたのか説明してくれるわよね?」

「ヒィーー⁉」

 この後待ち受ける恐怖にブルブル震えるミカとトウヤだった。


 ◆◇◆◇◆


 ナギのマンション。


「術も解いたし、警察からは逃げられたし、後はお迎えを待つだけか」

 ソファーに寝転び寛ぐナギ。


「いざ帰るとなると下界生活も名残惜しいな~下界の女の子も可愛いし、もうちょっと居ても良かったかな」


 数時間後、その言葉が現実になる事など今のナギは知る由も無い。


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