リアル乙女ゲーム
西園寺邸リビング、歓迎会はまだ続いていた。
「ねえねえ、どうやって魂汚す?」
「純度200ともなれば相当の悪事をさせなければなりません」
「大量殺人とか?やっぱり爆弾必要じゃん‼」
コソコソと話す魔界組。
「必要有りません⁉」
じゃあどうするのさ~と頬を膨らませるホグ。
「例えば彼女が一番大切にしている人間を裏切るとか…」
「なるほど、家族かな?」
「あの年齢なら恋人だよ」
「この中に恋人らしき人物は…?」
バタン‼リビングの扉が開く。
「おい嫁!居るか?」
「旦那様‼いらっしゃいませ」
いきなり入って来たカズキに天野が対応する。
「えっ⁉嫁?旦那様?」
カズキとレイナを交互に見るナチュ。
「誰だ貴様?俺の相棒を何故嫁呼ばわりする?」
中村が立ち上がり睨み付ける。
「俺の相棒?」
ナチュ、中村を見る。
「お前こそ誰だ⁉レイナは俺の婚約者だ‼」
睨み合う二人、リビング内に不穏な空気が漂い始める。
「俺の大切な部下に婚約者などいないが?」
「大切な部下?」
ナチュ、新垣を見る。
「はい。兄はずっと振られ続けています。気にしないでいいです」
スッパリ兄の応援を止めたナツキが肯定する。
「ナツキ‼お前は俺の下僕だろ?俺の味方をしろ‼」
「僕はレイナだけの味方です」
「レイナだけの味方?」
ナチュ、ナツキを見る。
「皆さん、落ち着いて。先輩がまた混乱しますよ~‼」
白井はレイナの耳を塞ぐ。
「おおお…」
白井を見たナチュの目がキラキラ輝く。
「こらこら下々の者‼姫様の前で乱闘など‼許されない事ですよ⁉」
「誰が下々の者だ⁉真中家を愚弄するつもりか‼」
レオンの言葉に憤慨するカズキ。
「殴り合いに発展するなら、この天野が全部引き受けます‼」
一触即発の場でナチュはウキウキとしている。
「ナチュ、さっきから何ブツブツ言ってんの?」
「これぞまさしくリアル乙女ゲーム‼」
「はい出た、たまバカ」
ナチュが顎に手を当て語りだす。
「まず…カズキは俺様ドS系‼『何故かお前にだけは優しくしてしまう』」
「大きくなっただけのガキ大将じゃね?」
「弟の方は…幼馴染の隣のお兄ちゃん‼『いい加減お兄ちゃんって呼ぶのやめろよ‼』」
「魂、薄汚れているぞ?絶対病んでるよ」
「中村は…熱血で一途‼『この命尽きてもお前だけは俺が守る‼』」
「ヘタレ臭がするけど?」
「新垣…真面目で情熱的‼『無防備過ぎだ‼俺の理性が飛んでしまう‼』」
「影薄そう…サブキャラに持っていかれるタイプ」
「白井は…爽やか年下男子‼『先輩がいけないんですよ?いつまでも年下扱いするから‼』」
「腹黒、陰険。実は黒幕でした~みたいな?」
それぞれの分析が終わるとホグをチラッと見るナチュ。
「ホグ、あんたも加わりなさいよ」
「何?あざとい小悪魔系?」
「ショタ枠」
◆◇◆◇◆
「それで…カズキさんは何の御用があってここへ?」
歓迎会が終わり解散した後、真中兄弟と中村、新垣はまだ居座っていた。
「今週末、とある財閥主催の仮装パーティーが開かれる。レイナ、お前も一緒に行くぞ」
招待状を差し出すカズキ。
「その招待状ならここにも来ましたよ?一緒に行きましょう」
「駄目だ‼俺が一緒に行く‼」
中村が割って入る。
「お前には招待状来てないだろう?貧乏人‼」
「ぐぬぬ…」
「招待された人の知人であれば入れるはずですよ?仮装は必須ですけど…」
言い返せない中村にナツキが助け船を出す。
「じゃあ俺も行く‼お前らだけじゃまた揉めそうだからな」
ナツキの言葉に新垣も手を挙げる。
「下僕め…余計な事を…」
「それでは皆さんで一緒に行きましょう」
「この天野、お疲れになったお嬢様の椅子になりましょう」
◆◇◆◇◆
ナギのマンション、ソウマはインターホンを押す。
「私です」
オートロックが外され中に入る。
その後ろを犬に変化したトウヤが付いていく。
「わっ‼犬入ってきちゃったよ…まあいいか」
2階へ上がるとナギが待ち構えていた。
「遅いよソウマ‼何やっていたの?」
「申し訳ございません。急用が出来たので」
「まあいいけど、それより天界に戻れる詳しい話聞かせて」
「それが、急に天界と通信が出来なくなりまして…」
パタンとドアが閉まるのを確認し変化を解く。
「矢張りナギ王子…師匠見つけましたよ」
トウヤは躊躇する事無く玄関のチャイムを押す。
「あれ?誰か来たよ、押し売りかな?」
「マサト、追い払って」
「畏まりました」
ドアスコープを見たマサトが目を見開く。
「トウヤ様⁉」
「えっ⁉」
慌ててドアスコープを見る二人。
「ああ⁉こいつだよ、僕に攻撃してきた奴‼一体何しに来たの?」
「何故ここがバレた?くそ…もうすぐ帰れると言うのに⁉」
「こうなったらトウヤ様を拉致して…」
「余計に事態が悪くなるよ‼」
物騒なマサトの提案を却下して居留守を使う事に決定した。
ドンドンドン‼ドアを叩く音が部屋中に響く。
《ナギ王子‼いらっしゃるのでしょう?》
「きゃあああ⁉どうする?どうする?」
名前を呼ばれ慌てふためく。
「落ち着け‼くそ王子‼居るのがバレるだろう!マサト、うまく誤魔化して何しに来たのか聞きだせ!」
「はい‼ナギ王子の事は口が裂けても言いません‼」
玄関のドアを開けるマサト。
「どちら様ですか?ハッ⁉トウヤ様ではありませんか⁉何故下界に?陣中見舞いですか?」
「めちゃくちゃ棒読み…」
マサトの対応にダメ出しする二人。
「マサト…?お前はここで何をしている?」
突然現れた意外な顔に驚くトウヤ。
「隠密なので内容は話せません」
「おっ‼うまいぞマサト‼そのまま追い返せ」
ソウマがガッツポーズをとる。
「先ほどナギ王子らしき方がここに入るのを見たのだが?」
「ナギ王子?こんなみすぼらしい住まいにそのような高貴な方は居ません」
「マサト、このマンションみすぼらしいって思っていたのか…」
ナギが悲し気に呟く。
「あくまで白を切る気だな?」
マサトの不自然な対応に確信を持ったトウヤが鋭い視線を向ける。
「何の事でしょうか…?」
あくまで白を切るマサトにとっておきの切り札を切る。
「実は今日、マヒロ様をお見掛けしたのだ…この下界で。知りたく無いか?」
「あ…兄上を⁉下界で?矢張り先日お見掛けした方は兄上だったのか⁉一体何処に居るのですか?兄上は⁉」
「ナギ王子は?」
「居ます!居ます!どうぞ中へ‼ソウマ様も一緒です‼」
「アイツ、売りやがった…」
◆◇◆◇◆
「申し訳ございませんナギ王子‼兄を盾に取られて仕方なく…」
リビングで土下座するマサト。
「仕方なく?進んで差し出したように見えたのは幻?」
呆れ顔のナギが突っ込む。
「脅すような事を言ってすまない、マサト」
「それで…トウヤだっけ?何の用でここに来た?」
ソファーに足を組み座っているナギがトウヤに冷たい視線を送る。
「奇跡の鍼灸師」
トウヤの口から出た言葉に固まる三人。
「な…何の…こ…事かな?なあソウマ」
「俺に振るな…さあ?聞いた事ありませんが?」
「これ以上王子を売るような事は言えません‼」
(それ自白しているって‼)
マサトの言葉を心で突っ込む二人。
トウヤは溜息を吐き天童トウコに変化する。
「うわっ⁉トウコちゃん⁉」
「えっ⁉えっ⁉どういう事?ソウマの知り合いなの?」
二人に顔を交互に見て困惑するナギだった。
「私は…師匠ミカ様の命で警察に侵入致しました…師匠が加護する方をお守りする為です」
変化を解いたトウヤが居住まいを正し語り始める。
「矢張り…西園寺先輩に天使の祝福を与えていたのか?」
「はい。そして、私を警察に侵入させる為神の力をお貸しくださったのが、王妃様です」
「はい終わった。僕の永久追放決定‼」
半ば開き直るナギ。
「俺も同罪にされるのか?」
青ざめるソウマ。
「兄上が下界に居るのなら100年でも200年でも…」
嬉しそうなマサト。
「ご安心ください。王子が下界で指名手配されている事は王妃様には知られておりません。そして師匠も私も報告するつもりはありません」
マサトの言葉に前のめりになる三人。
「えっホントに?」
「はい。王妃様の知る事となったら、とばっちり…お心をお痛めになるかもしれませんので、それは避けたいと思っております」
「ああ…とばっちり食らうのが嫌なんだね?」
言い直したがちゃんと聞こえていた。
「幸いな事に術を掛けたのは悪魔だと思い込んでいらっしゃるので、それで通しましょう。しかし…」
言葉を濁しナギを見る。
「しかし?」
「王妃様のお力をお借りしてこのまま帰る事は出来ません‼レイナ殿の術を解いて頂かなくては…」
「あ~ハイハイ解く解く‼」
コクコクと頷く。
「簡単に解けるのですか?」
「簡単だよ?前回鍼を刺した同じ場所にもう一回刺せば解けるよ」
「便利な設定ですね?」
「お前は黙っていろ‼」
何故かソウマに口を塞がれるマサト。
「良かった。これで師匠も安心なさるでしょう」
トウヤはミカに報告しようと携帯電話を取り出した。
「あれ?また圏外になっている」
「ああ、昼過ぎからずっと圏外になったままなんだ」
ソウマも携帯電話を取り出し見せる。
「何かあったのでしょうか?」
「気になるが今日はもう遅い。明日巡回の時見に行こう」
「そうですね。明日確認しましょう」
トウヤが同意し頷く。
「だったら今すぐ兄上のもとへ‼」
「そんなのは後の後だ‼それよりも西園寺レイナの事を話し合いましょう」
「兄上~‼」
◆◇◆◇◆
翌朝、綾小路邸。
「ひと狩り行こうぜ‼」
カウンター片手に張り切るナチュ。
「朝から元気だね?」
「姫様、ゲームではないのですよ?もっと慎重に‼」
バタン‼部屋の扉が開き受験者の悪魔が息を切らして入って来る。
「姫様、若様。大変です‼」
「騒がしいですよ⁉屋敷の人間が不審に思うでしょう⁉」
「申し訳ございません。ですが…急を要する事態で…」
ハアハアと息を整える受験者。
「どうしたのよ?」
「数名の受験者が悪魔討伐隊に出くわし、光の矢に倒れました…」
受験者の報告に顔を見合わせる三人。
「もう来たの?エレベーター直ったんだ」
「まさか⁉木端微塵のエレベーターがそんなに早く直りませんよ?」
「天使の翼…」
「無いって!」
食い気味に突っ込まれ頬を膨らませる。
「きっと飛び降りたんだ…こっわ⁉」
「マズいですね…ひと狩りされるのは我々ですよ?」
「いかが致しましょう?」
「取り敢えず他の受験者をここに集めて下さい」
「分かりました、では‼」
今度は静かに出て行く。
「暫くは街に出られませんね…」
溜息交じりのレオンの言葉にホグがニヤリと笑う。
「だったら、隣のお姉さん一点狙いで行くしか無いよね?」
「バカなの?隣のお姉さん200点だよ」
「…」
無言でホグにぶたれるナチュだった。




