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奇跡の鍼灸師と俺様お嬢様  作者: 美都さほ
11/26

悪魔討伐隊

 ナギのマンション。


「はい僕だけど」

 ダラダラと午後を過ごしていたナギが気だるげに電話に出る。


 ⦅朗報です。天界に帰れますよ?ナギ様⦆


「えっ⁉嘘⁉マジ⁉」

思ってもみなかった急な朗報に飛び上がらんばかりのナギ。

 ⦅昼間、王宮から連絡があって近々使いの者が王子を迎えに下界に来るそうです。途中で電話が切れたので詳細は不明ですが…⦆

「母上もやっと許してくれたか~はぁ長かった」

 

 ⦅分かっているとは思いますが、このまま大人しくしていて下さいね⦆


「勿論だよ!大人しくしてまーす!」

 念を押すソウマに手を挙げて応える。見えはしないのだが。

 ⦅それでは、後ほど伺います⦆

「ハイハーイ!待っているよ」

 じゃーねと電話を切る。


「帰る前に下界の女の子とも遊んどこうかな…ソウマにバレない様にしないとね」

 ボン‼キッチンから音がする。

「マサト~!また何かやったね?」

「申し訳ございません。お茶を淹れようと…」


「お湯沸かすだけで何故ポットが火を噴くの~⁉」


◆◇◆◇◆


 下界、高級住宅街。


「へぇ~割と大きな屋敷じゃない?」

 ナチュが屋敷を見上げキャッキャと喜ぶ。

「魔王様がここの住人に暗示を掛けて下さっています」

「どんな暗示?」

「姫様達はこの屋敷にホームステイする、とある国の王子と王女の設定です」


「マンマじゃん」


 レオンの説明に突っ込む二人。

「お忍びでこの国の文化を学びに来ている事になっています」

「文化を学ぶ…だったらゲームし放題?」

「いや、まずは武器倉庫調べて…」

「設定だって言っているでしょう‼試験中だって事お忘れですか?」

 此処に来てもブレない双子に苦言を言う。

「えー違うの~‼」

 当たり前ですと諭され不貞腐れる二人。


「受験者の皆さんは街の様子を見てきてください。騒ぎで悪魔討伐隊が出動でもしていたら厄介です」

 テキパキと受験者に指示を出す。

「エレベーター使えないから来るわけないじゃん!」

「天使の翼で…」


「無い‼」


 ◆◇◆◇◆


 とあるお金持ちの屋敷。


「ナギ先生の施術でお肌の調子がとてもいいの」

 施術が終わり紅茶を飲んで寛ぐナギ。

「ありがとうございます、奥様」

「もう先生なしじゃ生きていないわ。毎日来て欲しいですわ」

「警察に追われてなければ伺えますけどね~」

 ハハハと苦笑いする。


「あっ!そうそう!今週末にウチが主催するパーティーがありますのよ?先生も来て下さるでしょう?」

 慌てて立ち上がり引き出しの招待状を持ってくる。

「行きたいのは山々ですが、大勢集まる場所にはちょっと…」

「大丈夫よ。仮装パーティーですから…誰だか分かりませんよ?」

 ニッコリと笑う婦人が招待状を渡す。

「ありがとうございます、奥様。必ずお伺いしますよ」


(最後にパーっと遊んじゃおうかね~)


 ◆◇◆◇◆


 西園寺邸。


「お帰りなさいませ、お嬢様。皆様もお待ちしておりました」

「すみません天野、急にこんな事になって」

 急遽、天童の歓迎会を西園寺邸でする事になった新垣班。

 当然の如く中村も付いて来た。


「このくらいの事。もっと無理難題を仰っても良いんですよ?お嬢様」

 笑いながらそんな事しませんと言うレイナにガッカリ顔の天野。


「紹介します、天童トウコさんよ」

 紹介された天童が天野の前に来て挨拶する。

「天童トウコよ‼おもてなししなくても良いから楽にしてて…よね…」

 天童が天野を見て絶句する。

「お初にお目にかかります、西園寺家執事の天野と申します」


(マヒロ様⁉何故下界に?)


「俺も初めましてかな?よろしくね、天野さん」

「白井様ですね?お嬢様がお世話になっております」


(ソウマ様は驚いた様子無いな…お二方は天界でも面識無いのか?それとも側近のソウマ様では無いのか)


「さあ、パーティーの準備は出来ています。リビングへどうぞ」

 天野はリビングのドアを開けお辞儀をしながら客を通す。


(どちらにせよナギ王子の居所を探るまでは正体がバレるのはまずい…暫くは黙っていよう)


 リンドーン、リンドーン…玄関のインターホンが鳴る。

「あら?お客様かしら?」

 天野がインターホンに出る。

「はい。はい。少々お待ちくださいませ。お嬢様、お隣の綾小路様がお見えです」

「お隣の?どんな御用かしら?」

 レイナが玄関を開ける。

「レイナちゃんこんばんわ。こんな時間にごめんなさいね」

 恰幅のいい初老の婦人が愛犬を抱いて立っている。

「いえいえ、おば様。お気になさらずに」

「実は今日から我が家にマーカイ国の王子と王女が来られているの」

「王子と王女?」


「初めまして、お姉さん」


 数十分前、綾小路邸。

 ナチュは二階の窓から外を見ていた。


「見てホグ、人間がぞろぞろ隣に入って行っているわ」

「パーティーでもするんじゃないの?」

 ホグはテレビの画面から目を逸らさず興味無さげに答える。


「ああ‼」


「何?うるさいよナチュ」

「あの女の魂、ピッカピカなんだけど?」

 立ち上がりナチュの横に並ぶ。

「うわっ⁉マジ?ポイント高そう‼」

「すぐにチェッカーで調べましょう」

 いつの間にかナチュの後ろに居たレオンがニヤッと笑う。


「お忍びでこの国の文化を学びにいらっしゃったのよ。暫くご滞在されるので御挨拶したいと仰って…」

「僕達お姉さんの話が聞きたいな」

「いいでしょう?お姉さん」

 突然の申し出も拒否できないレイナ、ニッコリと頷く。

「分かりました。どうぞお入りください」

 私はこれで…と帰っていく綾小路婦人。


「私は王子と王女のお世話係の者です。お見知りおきを」

 ガチャ!レイナはレオンに手錠を掛ける。


「えっ?」


 固まる魔界の三人。

 手錠を掛けたレイナ本人はキョトンとしていた。

「はぁ⁉おいこら小娘‼何故手錠を掛ける⁉」

「あれ?無意識に手が…申し訳ございません。すぐに外します」

 自分の行動に首を傾げながら手錠を外す。


「お姉さん、もしかして警察の人?」

「そうですよ。刑事です」

 ナチュはポケットに仕舞われる手錠を見ながら話し掛ける。

「拳銃持ってる?」

 ホグは目をキラキラさせながら問い掛ける。

「今は持っていません」

 リビングの扉を開き三人にどうぞと促す。

 突然現れた中学生位の子供に誰?という顔の面々。

「皆さん、こちらマーカイ国の王子と王女…名前は…?」

 

「姉のナチュです」

「弟のホグです。僕達双子の姉弟です」

「お世話係のレオンで御座います」


 聞いた事の無い国名に世界は広いなと受け入れる刑事達だった。


「お忍びでこの国の文化を学びにいらっしゃったそうです」

「どんな文化を学びたいのですか?」

 姉のポジションには食いつかないナツキが口火を切る。

「この国のゲー…」

 レオンに口を塞がれるナチュ。


「ゲー?」


「姫様達はこの国に伝わる伝統芸能を学びたいと仰ってます」

 コホンと咳払いし代わりに答える。

「歌舞伎とか能とかでしょうか?」

「火武器?そうそれ⁉」

「それじゃない‼」

 察したレオンが突っ込む。

「暫く滞在しますので機会があれば色々教えて下さい」

 よろしくね~と愛想をふりまく双子達。


「それではマーカイ国の皆さんも一緒に天童さんの歓迎会始めましょう」

 やったー!パーティーだとはしゃぐ双子。

 席に着きチェッカー付きカウンターを取り出す。

 レイナに向けてスイッチを押す。


「⁉」


 そこには、200ポイントと表示されていた。


「都合のいい人間いましたね…」


 ◆◇◆◇◆


 天界、王の宮殿。


「悪魔討伐隊に命ずる‼直ちに下界へ降り悪魔どもを殲滅せよ‼」


 悪魔討伐隊…それは、神を隊長とし優れた能力を持つ天使からなる悪魔殲滅部隊である。


「いやいや王様、殲滅したら国際問題になりますって」

「分かっているよ~1度言いたかっただけ」

 もとい…神を隊長とし優れた能力を持つ天使からなる悪魔懲らしめ部隊である。悪魔は光の矢に貫かれると3日間苦しみ続ける。


「隊長、前へ」


「はっ‼」


 軍服に身を包み、長い髪をなびかせ颯爽と王の前に出てきたのは、数年前婚約者を失くし、その悲しみを乗り越え心も体も強くなった女神アマネであった。


「討伐隊隊長アマネよ…立派になられたな」

「ありがとうございます。王子を失くし悲しみに打ちひしがれていた私が、この職務で喜びを感じ笑えるようにまでなりました」

「辛い思いをさせたな…」

「いえ、ナギ王子は私の心の中でいつまでも生きておられますから‼」


「下界でも生きておるよ?」


 王のツッコミは聞き流された。

「して、今回の討伐対象者は把握しているのか?」

「はい。モニターに映っていた悪魔の顔は隊員20名全員、しっかり覚えております」

「20名…少し多い気がするが…その姿では悪目立ちしないか?」

「10名は治癒能力に長けた者を連れて参ります」

「なんと…それほどに手強い相手なのか⁉」


「いえ…下界に飛び降りた際、無事では済まないと思われますので…」


「あっ…すまん、無理言っちゃって」

 討伐隊一同が跪く。


「これより我が悪魔討伐隊、下界に向け出動致します‼」



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