以蔵と半次郎
ガラッ
よぉ、と言って入ってきたのは俺の見たことの無い二人の剣士だった。
「半次郎!」
新八が走ってその半次郎という男の方へ行く。
「久しぶり。元気にしてたか?」
半次郎の隣にいる男がいう。
「うん!」
「団子屋にでも行こう」
半次郎の隣にいる男がそう言うと、新八と半次郎は頷いた。
「魅那兎、少し出てくる」
新八がそう言う。
「あれ、そちらは?」
半次郎という男が俺達の方をさして言った。あぁ、自己紹介しないとだな。
「魅那兎だ、よろしく」
「左近です。よろしくお願いします」
赤壱まで言うと、俺の正体がバレる可能性があるからな。
「俺は、岡田以蔵。よろしくね」
「俺、中村半次郎。よろしくお願いしますね」
岡田以蔵、中村半次郎。どちらもきいたことない。なにか偉いやつらなのか?
「魅那兎、半次郎は俺の親友。仲良くしとってね」
新八が目を輝かせて言ってきた。親友か、羨ましいの。俺の親友は……いや、今そんなこと考えてる時でない。
俺は、あぁ、もちろんと返事をした。
「以蔵さんとは行きつけの店が一緒でね、それで親しくなった。そしたら案の定、半次郎と関係があったってことがわかってね。それから親しくさせてもらってるよ」
新八は、友達が多いな。俺もあの時、ああしていれば、新八のようになれたのだろうか。
「魅那兎に左近、一緒にどうだい?」
以蔵がそう言う。俺達は、お言葉に甘えてと言ってぺこりと礼をした。
「じゃあ行こう」
半次郎がそういった。
「やはり、ここの団子は上手い」
以蔵が団子を頬張りながらいう。
「以蔵さん、のりも美味しいですよ」
新八が両手にのり団子を持って言う。なんか、愛らしいな。
「赤壱さん、やっぱりみたらし団子ですよね!」
俺が新八をじぃっと見ていると、左近が話しかけてきた。
「え、あぁ。そうだな」
俺は素っ気ない返事をした。
「盗っ人や、盗っ人!誰か捕まえてくれ!」
急に大きな声が町に響く。そしてそれに反応する半次郎と以蔵。この頃は物騒だな。近々はこういう事件がかなり起きとるけんの。
「行くぞ半次郎」
急に以蔵が席を立つ。
「わかったわ以蔵。わしは援護致す」
「了解」
二人は少し顔に笑みを浮かべ、店から出ていってしまった。続いて俺達も外に出た。
「おい商人共!死にたくなけりゃ下がりんさい!」
半次郎が声を張り上げた。すると、皆は道の真ん中をあけてくれる。
「俺に楯突こうとは死ぬのと同然よ」
盗っ人が自分の腕を自慢するかのようにいう。
「そんなことほざく暇あんなら逃げたらええんに」
以蔵がそう言うと同時に、ブスッと音をたて、盗っ人のお腹に剣が刺さった。
「お前ら……まさか……」
「それ以上は言わせんよ」
盗っ人がなにかを言おうとしたが、それを遮るように半次郎が声を上げた。半次郎は盗っ人の手に縄を縛り付けた。
「致命傷にはならねぇさ」
以蔵がそう言う。
それから俺達は道場へと戻ってきた。
「今日は泊まってきな。いくら以蔵さんと半次郎でも、夜の人斬りは怖い。腕はあっても暗闇には勝てんからな」
新八がそう言うと、二人はそうするよと言った。