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過去

店につくと、みんなは早速酒を頼み出す。まだ昼だってのに。

「魅那兎、お前は俺の隣だ」

そう土方が言う。俺はそれに頷いた。

「左近、隣にこい」

俺は隣に左近をつける。左近は頭を下げてから座った。沖田は近藤さんの隣に座っている。

「お前、酒飲むか?」

土方がきいてくる。俺はいらない、と言っておつまみを口に運ぶ。

「左近は?」

土方は左近にも酒を進めるが、左近も首を横に振った。

「そうか。じゃあ、焼酎ひとつで!」

「今日は赤壱と左近の歓迎会だ!好きなの頼んでいいぞ!」

近藤さんがそう言うので、俺は礼を言った。


みんなは酒に酔っている。それも、かなりドロドロだ。あれから1時間程たった、酒を飲んでいないのは俺、左近、沖田だけだ。新八は飲みに来ていないがな。

「魅那兎、話がしたい」

沖田が話しかけてきた。沖田は外に目線を行かせる。外で話したいのか。俺は頷いた。

左近も席を立つが、俺は待っていてと言った。きっと沖田は、2人で話したいんだろう。

「なんだ?話って」

俺がきくと、沖田は苦笑いする。

「思い出したよ。君のことをね」

「俺のこと?」

もしかして、過去の俺がバレたのか?

「赤壱魅那兎。きいたことあるさ、何回も、何回も。どこできいたのか、それが思い出せなかった。でも、今さっき、すべてに筋が通った。」

そうか、思い出してしまったのか。もう、誤魔化しはきかないか。

「幕末の三剣士。剣術の腕前が特に優れた幕末期の3人の剣士。そのひとりがお前なんだろ。だが、ある事件があり、その称号を失った。その事件とは……」

「やめろ、それ以上言うな!」

俺は叫んだ。やめてくれ、俺の過去を掘り出さないでくれ。思い出したくないんだ、あの光景を。

「約50名が犠牲になった人斬り事件……」

沖田がそう口にした。やはり、言ったか……。

「その人斬りの犯人が、お前。お前は友を守ろうとして、と証言したらしいが、証拠不十分でお前は罰せられたらしいな」

あれは、左近を守るためにやったことだ。だが、やはり事実は見事に隠蔽され、俺は罪を被った。

「詳しいんだな。あまりおおやけにはされていないのに」

「剣士なら、誰であろうと知っている名前……赤壱魅那兎だからな」

「幕末の三剣士までは知っていても、そこまで知ってるやつは中々いない」

俺がそう言うと、沖田はふふっと笑う。

「あれは、半年?1年程前の事だろう?この短期間に、腕をかなり落としたな魅那兎。元幕末の三剣士として恐れられた赤壱魅那兎が、今じゃ俺にさえ負けるほど弱くなっているとは……がっかりだぜ」

それは否定できない。なんたって、俺はあれから剣を握っていないからな。持ってはいても、使うことはあまりない。それを半年、1年続けていたら、腕も落ちるさ。

「付けられた異名は『天狗』……。団扇を扇ぐように剣を振り続けることから生まれた。ふらっと現れては、ふらっといなくなる、天狗のような存在」

「悪かったな。今は腕が訛ってるんだ」

天狗も、今となっちゃ懐かしい名前。俺の過去はあまり綺麗ではない。むしろ、とても汚れている。だから、思い出したくなかったのだが。

「このことはまだ、近藤さん達には黙っておきますよ」

そうニコッと笑った沖田。こいつは悪い笑だ。俺は礼を言って酒の席へ戻った。

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