壬生浪士組
幼き頃から腕前だけは褒められてきた。そしてどんどんと力を上げていった。
現在はもう元服している。剣筋は一級品だが、残念ながら職業はない。つまりはニートということだな。そしてあまりタチの良くない俺は不良をしている。カツアゲをしているくらいだ、捕まったりはしないだろう。
自慢ではないが、これまでに負けたことは1度もない。全勝だ。
「赤壱さん、壬生浪士達がきました」
「じゃあ帰るか」
はい、と返事をした左近。左近は俺の弟子。いつも一緒に行動している。
「今日は結構とれたからな。5日は持つ」
「そうですか」
左近はニコニコしながら俺の後ろを着いてくる。
「壬生狼だ!逃げろ!」
他の不良共が騒いでこっちへ走ってきた。壬生浪か、近頃はあまりきかなかったが……。壬生狼に逃げなきゃいけないのは俺も一緒だな。
「待てお前ら!」
走って隊員が追いかけてくる。
「逃げるぞ左近」
「了解です赤壱さん」
俺達も走り出した。
「残念だな。ここは包囲したぜ」
コツコツと歩いてくる壬生狼の中で位の高そうなやつ。
「お前らには制裁を与えさせてもらうぞ」
そう言って剣を取り出した。
「俺の剣筋をやめてもらっちゃあ困りますよ」
俺も剣を取り出した。
「俺は、土方歳三。よろしくなぁ」
「俺の名は赤壱魅那兎だ。お前さんはこれから殺し合いだってのに、随分と余裕そうだな」
俺がそう言うと、土方はニヤニヤと気味の悪い笑顔を浮かべる。
「勝つ気しかねぇからな」
そう言って土方は俺の方へ走ってきた。
「左近、ちょいと離れときな」
「はい」
俺は構えた。俺の腕をなめてるなこりゃ。俺はこんな不良でも、腕はかなりのものなんだよ。
「お前…強いねぇ」
大きな音をたてて、俺の剣と土方の剣がぶつかる。土方は剣をあわせながら話しかけてきた。
「どこの道場だい?」
土方はまた話しかけてくる。
「独学さ……」
そう言うと土方は鼻で笑う。
「すげぇよお前」
「そりゃどうも」
カキンッと音をたて、俺達はお互いに距離をとる。
「魅那兎、壬生浪士組に来ないか?」
「壬生浪士組?なんでそんな死の淵に行かなくちゃならないんだよ」
「お前には、才能があるぜ」
今度は俺から仕掛けていく。俺は一気に土方に詰め寄った。
「ここまで俺と殺りあったのも、中々いない。お前なら、俺の後にさえなれるさ」
少し剣を握る手の力が緩んだのを土方は見逃さなかった。その瞬間、手から剣が離れた。
「壬生浪士組にくれば、お前より強いやつもたくさん出会えるぜ」
俺は急いで剣を握り直した。
「俺より強いやつか……いいじゃねぇか面白い」
「お前らは今日から壬生浪士組だな」
土方はそう言うとニコッと笑った。つまりは、左近も一緒だと言うことだ。
「早速、総司にみせないとだな」
俺達は剣を収めると、土方の後についていった。