筋肉に願いを込めて
「よし、お前ら。ちょっとは動けるようになったな。今日から本格的に特訓にはいるぞ。まずは筋肉トレーニングからだ!」
「筋トレですか? なぜ今更?」
「バカ野郎! お前らは一体昨日、何を学んでたんだ!」
アレンがすっとぼけた事を言うので喝を入れる。
「いいか。俺達は今ヘルメスと共闘できるようになるために恐怖に対する耐性を鍛えている。ここまではいいな?」
「はい!」
「古い文献にあった、恐怖に打ち勝つための知恵。それが太陽の光。仲間。感謝。そして……筋肉だ!」
「筋肉!?」
「あぁ。筋肉には恐怖に対する謎の耐性があるんだ! どんなに怖い話でも、明るい場所でムキムキのマッチョ達が集団で大地に感謝しながら聞けばなんという事はないだろう。
古い文献にも書いてある。筋肉とは物理であり、信仰なんだ」
「筋肉にそんな効果が!?」
「筋肉は信仰だった……?」
「筋肉すげぇ!」
「筋肉万歳!」
昨日、俺に騙されたおかげで気分が楽になったことが効いているのだろう。みんなすぐに乗り気になった。
とにかくヘルメスの恐怖を頭から払拭するために、なんでもいいから誰かの意見に縋りつきたいのだろう。そして今に限ってはそれは正解だ。
「それでは今から腕立てや腹筋ですか?」
「バカ野郎! そんな事やってたら何か月もかかるだろうが!」
「え?」
「今からみんなの隠された力を引き出す……みんな、死ぬんじゃないぞ……」
「…………え?」
特訓とは得てして過酷なものだ。だがみんななら必ず困難を乗り越えられるはずだ。俺は信じて禁断のスイッチを押した。
「グルァァァァァ!!」
「引っ張れぇぇぇぇ!」
「村長! やばいです! やばいですってこれぇ!」
「ふんぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ヘルメスの闇魔法の1つ、バーサーク。レジストに失敗すると理性を失くし、一定時間敵味方関係なく襲いかかる。
バーサークにかかると無意識のリミッターが外れると言う副作用があり、本来ありえないような膂力を発揮する。
アレンの四肢にはバーサークにかける前にくくりつけていた縄が繋がれている。そして俺達は今、狂化したアレンが暴れださないように縄を全力で引っ張っていた。
しばらくして。人間が本来出してはいけない100%の全力を出し切ったアレンの体は、筋繊維が引きちぎれてボロボロになっていた。
縄を引っ張っていた他の面々も汗だくになって息も絶え絶えに倒れ伏している。
「ここまで! メディック メディィック!」
「あいよー!」
ここからがマナの出番。患部に手を当てて意識を集中する。
この程度の怪我の治療など彼女にとっては造作もない。だが。マナは筋肉細胞には一切手をつけずに、痛めた筋や腱だけを治療すると言う離れ業をやってのけた。
ヘルメスの力があまりにも驚異的で目を奪われがちだが、マナはマナで常人には到底一生たどり着けないような頂きにいるのだ。
俺達は交代でローテーションを回しながら特訓をこなしていった。
「よし、食え。食うんだぁ!」
魔猿を討伐した時の報酬金の残りのほとんどを費やして大量に買い込んだ牛乳、豚肉、鶏肉などを存分に使った料理を振舞う。
「そ、村長。これは!?」
「……食え。感謝して食べろ」
だが、貧しい村で肉を焼く良い匂いをさせてれば当然人が集まってくる。
「し、しかし我々だけが頂く訳には!」
子供たちはよだれをたらして物欲しそうな顔をしている。
だが、その中の一人が口を開いた。
「大丈夫。僕たちの事は気にしないで食べて。だって兵隊さん達は僕らのために戦ってくれるんだから!」
みんなよだれをたらしながらもコクコクと頷く。
アレン達は俺の方を向いて最後の確認をする。
「食え……それがやがてお前達の筋肉になり。それが村の財産となる」
「う、うおぉぉぉぉぉ!」
ゴードンがかぶりついた。
「すいません。頂きます!」
「頂きます!」
「食えぇぇ! 感謝して食うんだぁ!」
みんな泣きながら肉に食らいつく。
「ちくしょう! うまいです!」
「ありがたくて涙が出てきそうです!」
苦痛に耐え。感謝して食べ。そして強くなった自分をイメージする。そうやって筋肉には、恐怖に対抗する魔法が込められていくのだろう。
そして特訓の日々は続いた。
更新遅れてて申し訳ないです!
4章が最終になる予定なんですが、そこと辻褄があうように
設定だけちょっと改稿させてもらいたいのです。
話の大筋には影響ありません。
3章はいよいよパワーアップした小隊を率いてニューゲート争奪戦。
索敵。奇襲。罠。そして裏切りと信頼。
それぞれのバックの顔色を伺いながらお互いの利を探る
飼い犬と狼の駆け引きをお楽しみください!
更に追記
すいません、ちょっと更新遅れそうです。
良かったら新作のほうも見て行ってやってください。
https://ncode.syosetu.com/n0100ex/




