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領主の館へ

「それじゃあ行ってきますね。留守を頼みます」


 領主に人員の補充をお願いするために、馬を借りてシグリスの街に戻る。

 冒険者達が事の顛末や村の状況の事を記載してギルドに渡す書類と領主に見せる書状を用意してくれた。


 冒険者達は俺達が留守の間、村の警備や遺体の埋葬などを引き受けてくれた。

 だがあまり長くは頼れない。彼らはギルドのお抱え冒険者であり、調査の期限は限られている。


 道中は特になんと言う事もなく無事に辿り着き、ギルドでのやり取りも書状のおかげですんなりいった。

 報奨金とともに、今回の功績が認められて銅級になるそうだ。領主への嘆願書も用意してもらった。


 だがこれについては書類を渡してハイサヨナラでは人員の補充などいつになるかわからない。

 俺はヘルメスを連れて領主の屋敷へと向かった。



「とまれ! なにものか!」


 門のところで衛兵が槍を交差させ俺達の行く手を阻む。


「銅級冒険者のゲオルグと申します。ギルドから書状を預かってまいりました。領主さまにお目通り願いたいのですが」


「あぁ? 領主様が銅級冒険者などに会う訳がないだろ。帰れ帰れ!」


 マジかこいつら。直談判は難しいだろうとは思ったが、書状すら受け取る素振りもない。

 面倒だから知らんフリして、後でなにか問題が起きても自分達の担当時間には来ませんでしたとでも言うつもりだろうか。

 ただ、こっちに原因がない訳でもない。普段はギルドから連絡がある時はそれなりの人を寄越すんだろう。と、なると困ったな……


 俺がどうしようか考えてると、ヘルメスがずいっと前に進み出た。


「なにをしているのですか? 我が主が領主に面会したいと申し出ているのです。くだらない口上を述べてないでさっさと案内しなさい」



「…………え?」


 ヘルメスが衛兵の頭をガシっと掴む。


「ぶち殺しますよヒューマン」








 ちょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっと!!

 ストップストップすとぉぉぉぉぉぉぉぉぉっぷ!


 突然の爆弾発言に俺がパニックになって固まる。固まる。衛兵も驚いている。物凄く驚いている。


「き、きさまっ!?」


 もう一人の衛兵が槍を構えようとするが


「ヒィッ!?」


 ジロリ、と一睨みされて槍をカランと落としてしまった。


 真っ黒な瘴気を発しながらヘルメスが更に一歩前に出る。


「ま、まて! まってくれ! うえのもの。上の者と相談してくるから!!」


 衛兵は走って中へ逃げていってしまい……



「なんだなんだ!?」「どうしたどうした!」



 まもなく30人くらいの人が出てきてしまった……



「……はっ!? ぼ、ボケっとしてる場合じゃない!」

 

 いつまで固まってんだ俺は。

 この状況でもう一度さっきのシチュエーションを再現させれたおしまいだ。

 かろうじて我にかえったところで、人垣をかき分けていかにも執事っぽい服をきた白髪のじいさんが声をかけてくる。


「わ、わたしが執事長のカーターです。本日はいかなるご用件で?」


 よかった。じいさんはかなり警戒しているようだがまだ話を聞いてくれる気があるらしい。


 俺は即座に隣に立つ危険人物に目線をとばしてけん制する。

 もう2度とあんな悲しいすれ違いを繰り返してはいけない。


「ヘルメス! わかってるな?」


「はっ」


 ヘルメスが 真っ黒な瘴気を発して一歩前にry


「ちがぁぁぁぁぁぁう!!!」


 咄嗟に首根っこを捕まえて後ろに下がる。


「しょ、少々お待ちを!」


 俺達は彼らに背を向けてヒソヒソと打ち合わせを始めた。




「お ま え わぁ! 盗賊のアジトにカチコミにきてんじゃないの! わかってんの?

 相手偉い人なの! お願いしにきてんの! 話し合いにきてんの!」


 俺は一言一句間違えないよう、1文字ずつ縦に手をきって説明した。


「HA NA SI A I」


 最後に両手を合わせ、顔の横にもっていき首と共に傾げる。


「HANASIAI」


「HANASIAI」


 ヘルメスも笑顔で首を傾げるが「いつでも殺ってやりますよ」と言わんばかりで目がらんらんとしている。

 くそぅ、恐いのに可愛いじゃないか。


「おーけぃ。良ぃ発音だぁ。わかったらぜっっっっっったい喧嘩うるなよ。暴力もダメ。睨むのもダメ。殺すとかえぐるとかも全部禁止な!」


「わかりました」




 ヘルメスに全身全霊でクギをさして振り返り、満面の笑顔で執事のじいさんに話しかける。決して苦笑いなど混じってはいない。


「お、お待たせいたしました。実はこれこれこういう事情で、これが書状になりまして……」


 おずおずと書状を差し出す。衛兵の1人がまるで危険物を預かるように緊張して書状を受け取る。

 執事のじいさんもまた危険物を扱うかのように書状に手を伸ばすが、途中で何かに気づいたようにハッと表情が変わる。


「こちらの蝋印は、もしやウーノ殿が?」


「あ、はい。よくおわかりになりましたね」


「開けてよろしいですか?」


「どうぞ」


 執事のじいさんはしげしげと書類に目を通すと、衛兵達に槍を下ろすように指示した。


「失礼いたしました。領主様に面会を申し出て参りますので2時間ほど客室でお待ちいただいてよろしいでしょうか?」


「あ……ありがとうございます!」


 

 最初はどうなることやらと思ったが、じいさんが話のわかる人だったみたいで助かった。

 こうして俺達は客室へ通された……

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