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ヒトへの羨望

「これが……例の魔物ですか……」

 

 俺は冒険者達に、事の顛末について説明した。


 敵の首魁と思われる魔物を倒し、当面の危機が去った事。村の中の遺体は埋葬出来たが、森の方はまだ手が回ってない事。そして犠牲者の概算や村の現状について……


 冒険者達はギルドから依頼されて調査に来ていて、期間に猶予があるので数日間は埋葬や村の再建に手を貸してくれると申し出てくれた。彼らに対する報酬は税金から賄われるらしい。


 そしてその晩、俺はテーブルを挟んで商人と向き合い、布にくるまれた魔物の頭部を取り出して彼に見せていた。



「えぇ、私も驚きました。獣に知能を与える魔物など聞いた事がないので……」



 統率系の魔物と言えば、孤独と恐怖に耐えかねたネズミやコウモリ、人間などが闇の精霊に取り込まれて発生するネクロマンサーと呼ばれる魔物が代表的だ。彼らは死体や骨を魔力で操り、それを家族や召使と思い込んで共に暮らしている。


 ネズミのネクロマンサーはネズミを人間のネクロマンサーは人間を、と同族を襲う事が多い。話が通じる事は稀でほとんどの場合頭がおかしくなっており決して近づいてはいけない。



「討伐依頼は出ていませんでしたが、被害状況を鑑みてもギルドに報告すれば報奨金が出るでしょう。それに、どうも元が異国の猿のようですしこの辺りで発生した魔物とは思えません」



 驚いた事に魔猿は水の眷属だった。水の魔物は嫉妬と思慮を司る。引退した老賢者などの人間や、クジラなどの一部の水棲生物から成る事がほとんどで、知性の低い陸上生物から成る事は非常に稀だ。


 特徴としては特殊な能力を持った個体が多い反面、独自の研究や思想に没頭しており積極的に他者を襲う事が少ないと言う特徴がある。最もその思考は倫理観が崩壊しており、近づくとやはり危険なのだが。


 ちなみに一番目撃例が多いのが自由と狂気を司る風の魔物で、虫や鳥の出身者が多い。最も少ないのが光の魔物で、過去の歴史に一度も目撃例がない。



 魔猿はどこから来たのだろう。どうして水の精霊と出会ったのか。何を考え、何に対して自我を崩壊させるほど嫉妬したのか。今となってはすべて闇の中か……



「私もそう思います。村ごと壊滅して目撃者が消されていただけで、他にも犠牲になった村があったのかもしれない」



 ギルドには行方不明者の捜索などの依頼は出ていなかった。異変に気付いた時点で街に使いの者が出たはずだが彼は消されたんだろう。


 と、すると今回はたまたま無事だったがケイルさんを1人で向かわせたのはかなり悪手だった…… 


「そうですね。事態が解明されれば追加の報奨金が出るかもしれない。ただ、その件は片付いたとして……」


 彼が言いよどんで渋い顔をする。おそらく俺と同じ事を考えているはずだ。


「えぇ……まずいです」 


 視線を彷徨わせる。

 俺達は村の生存者たちのこれからの事を考えて頭を抱えた……

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