二話
叔父さんの車に乗せてもらった。
叔父さんの車は田舎にありそうな後ろに荷物を乗せることができる、普通の車。
叔父さんは車の中で色々話を聞いてくれた。
学校のみんなが別れを惜しんでくれたこと、本当は向こうに残りたかったこと。
都会と田舎の違いをいろいろ話していて、駅であった女の人について聞こうと思った。
「ねぇ、叔父さん」
「ん?どうした」
「白無垢の女の人に声を掛けられたんだけど」
「・・・」
「叔父さん?」
「返事は?」
「えっ?」
「声を掛けられて、返事はしたのか?」
「うん。どうしたの?いきなり怖い顔をして」
ただ、気になって振った話題だったけど、優しい表情からは想像できない怖い顔になって、イライラしたような何かを怖がっているような表情でピリピリした空気を出して背筋が凍ってしまうんじゃないかと思うくらい気まずい空気になってしまった。
「何を聞かれた?」
「ここに来たのは初めてか聞かれて、はいと答えたら駅からまっすぐ行ったところにある、神社に参拝した方がいいって言われたけど」
「そうか」
「答えちゃダメだったの?」
「・・・」
まただんまりになってしまった叔父さんに、焦ってしまう。
聞いちゃダメだったのかな?
「祥子、いいか」
「うん、何?」
「次からは白無垢の女にあっても、話してはいけない。他人のふりをするんだ。いないものと思って行動するんだぞ」
「どうして?」
「それがこの村にいるルールだ」
「・・・分かった」
何もわからないよ。いきなり白無垢の人にあって、不思議なことを言われて詳しく聞こうと思っても、教えてくれない。
叔父さんに久々に会って、気になるから聞いてみればルールだと言って、詳しくは分からなかったし。
この話題が終わると叔父さんは、まるで何事もなかったかのように優しい表情にもどり会話をしていた。
私はまた話題をふる気にはなれなかった。まだ話していないことが二つあったから。
一つは、駅で拾った使い古されたような感じで、教科書とかに出てくるような古い櫛を拾ったこと。
もう一つは、今この瞬間もトラックの荷台の所にいる白無垢の人が、こちらをずっと見つめながら口元が笑っていること。
さっきはいなかったはずなのに、どうしてそこにいるのか疑問に思った。
でも車が走っていても、人が乗ったような揺れはなかったし、叔父さんだって後ろを見るそぶりさえなかった。
それに、手をこちらに振っている。
これはどうなっているのだろう・・・
もしかすると、自分だけしか見えていないかもしれない。
こんなことを誰にも相談できないし、無視なんてキツイなぁ・・・