第83話
最高神たちの名前が明らかにっ!?
新キャラ登場です!
これはゼウス家での出来事であった。
「なぁ、やっぱり地球での神話とかって嘘の話とかも多いのか?」
僕は神話について調べている途中で、ふと、そんなことを思ったのだ。
そもそもゼウスが女神な時点で何かおかしいと思い始めていた。そして今、本物の神話を見て確信に変わった。
「そう、......嘘、と言うより、伝言ゲーム......みたいなもの? 少しずつ...時が、経つに従って......話が曲解されていったの」
.........お前が男神になってるのは曲解で済ませておいていいのか?
「いい、わけが無い」
でしょうね。
「だけど......私たちは、基本的に......下界に干渉禁止。天界では......最上位の重罪になる」
へぇ、そんなこともあるのか。
と、僕はその時、そんなことを思った。
そして、ここからが本題。
「うーん、嘘の歴史ねぇ.........あ、そういやゼウス? 僕が貸してもらってるグレイプニルあるじゃん、猫の足音とか女の口髭とかの概念がどーたらこーたらってやつ」
地球の神話では、どっかのドワーフに幾つかの概念を元にグレイプニルという一つの縄を作らせ、それをテュールって神様が腕を噛ませている間に巻き付けて封印。後の戦争時にオーディンを飲み込んで、その息子に殺される。
と、そんな感じだったか?
───無意味に本ばっか呼んでたからこういう情報には詳しい僕である。
「......封印されたのは、ほんと。テュールが腕を噛まれたのも......ほんと。オーディンが飲まれたのも、ほんと。......だけど、それ以外は嘘。......当時は上級神だったけど......オーディンはそんな事では死なない」
........え? なに、自力で出てきたってこと?
「.........あの筋肉、『ちょうど寝心地の良さそうな空洞があったから入ってみたら服が溶けた。ふざけんな』って言って全裸でフェンリルから出てきた.........寝惚けてなかった.........多分、地......だよ?」
.........一番関わっちゃいけなさそうな神様だな。
「アイツは、頭沸いてる。......脳筋。全裸でフェンリルを捕獲して、封印した。.........今はロキと、私、それにオーディンしか、その場所知らない」
「へぇ、ロキってことは、悪戯とか、狡賢い系の神様か? 確かロキの子供がフェンリルだっけ?」
「......それも、嘘。ロキのペット」
そ、そうですか......。
「って、もう封印されたのって随分と前だろ?」
「.........数億年前......かな?」
.........人間生まれてねぇんじゃねぇのか?
ま、まぁ、気のせいだろう。
「なぁ、そんなに何億年も閉じ込められてて......」
僕は今になって思い出す。
この時、ゼウスに聞いた、その内容を。
「フェンリルって、まだ生きてんの?」
☆☆☆
ぴろりん!狡知神からのメッセージを受け取りました!
.........この場合はどう反応すればいいんだ?
ちょうど今、その話を思い出してたんだが......?
うーん、ステータスでも開けばいいのかな?
(『ステータス』)
すると、いつも通りに現れる透明なウィンドウ。
───しかし、そこに書いてあることはまったく違っていた。
拝啓ならぬ背景、わたしは今あなたの後ろにいます。
敬具(笑)
By 狡知神ロキ
「なぁっ!?」
今までで一番早いのでは、と思うような速度で後ろを振り向く。
そしてそこには...............って、えっ?
「「ん? どうしたよギン.........? あれ、なんで俺、二人居るんだ?」」
何故か二人に分身したマックス。
片や際どいブーメランパンツ1丁に蝶ネクタイ。
片や漆黒のベストを着て、右眼に眼帯をつけた中二病。
「よし、面倒だから両方刈るか」
「「なにをっ!?」」
いや、もちろん決まってるでしょ。局部だよ局部。
大丈夫、大丈夫。そのうち髪の毛みたいに生えてくるから安心しろって。
「生えてくるわけないでしょッ!? .........あっ」
何故か半裸の方が女喋りで叫びだした。
ほうほう、お前も死神ちゃんやゼウスと同じく心が読めるんだなぁ.........よし、切り落とすのは乳首だけにしてやろう。
「ちょっ!? ち、ちち、乳首切り落とすって!? や、やめて変態っ! 近寄らないでっ!」
しゃがみ込んで両腕で胸を抱えるマックス......。
────気持ち悪っっる!
「.........ギン君だっけ? もう狡知神の座を上げようか?」
「いや、いらねぇです」
半裸のマックスはニヤリと笑うと立ち上がった。
「はっじめましてぇっ! 私が狡知神、ロキっていうんだぜ? ヨロシクゥ!」
こうして僕は、最高神の一角と出会ったのだった。
.........せめて姿を変えて欲しかったが。
☆☆☆
「.........狡知神さん、だっけ? 俺の服装、戻してくんね?」
もう既にエウラスやゼウスで慣れてしまったのだろう、マックスが驚きもせず、そんなことを言い出した。
────コイツも、成長したんだなぁ......。
(うむ、諦めているだけだと思うのである)
まぁ、そうとも言うな。
「おお、すまないねぇ、いまから戻すよん♡」
「おいロキ、その前にその姿をやめろ。正直今すぐにでも殺したくなって来る」
「.........ちょっとぉ? その鎌ってレプリカじゃない方だよねぇ? くふふっ、流石に冗談......じゃないっぽいね。分かった分かりましたー。全くぅ、仲間思いなんだからっ♡」
ぶちっ!
「『月光斬』ッッ!!!」
僕は躊躇いもなく最強の技を放つ。
そもそも僕はっ! お前が仲間の姿を騙ってるから怒ってるんじゃねぇっ!!
ただその姿だとマックスがオカマっぽくて気持ち悪いだけだァっっ!!
───今日から恐ろしくて夜も寝れなくなるっっ!!
「ぬわぁぁぁッッッ!? 危ないでしょっ!? しかも考えてること最低だよっ!?」
そんな事を言いながらも人差し指と親指で挟めて受け止めるロキ。...........流石はNo.4と言った所かな。
「くふふ、聞いてたみたいだねぇ、最高神の序列。ま、私のこと知って無きゃ扱いも出来ないアダマスの大鎌なんて、使わないっか!」
......コイツはあれだな、オーディンより面倒臭い奴だ。
絶対そうに違いない。
「ムカぁぁっっ!! 流石に風神より面倒臭いとか言われるのは私でもおこっちゃうよっ!?」
「あぁ、すまんすまん。誠に申し訳ない。先程の思考を悔いるばかりだー。..........んで? なんでこんな所に最高神の序列4位様が来てんだ? ま、要件はわかってるけどよ」
最高神は全員で10柱存在しているらしく、そのそれぞれの強さを基準に序列が組まれているのだとか。
ゼウスから聞いた序列は、こうだった。
序列1位 全能神 ゼウス
序列2位 海皇神 ポセイドン
序列3位 冥府神 ハデス
序列4位 狡知神 ロキ
序列5位 創造神 エウラス
序列6位 風神 オーディン
序列7位 雷神 トール
序列8位 太陽神 アポロン
序列9位 地母神 ガイア
序列10位 軍神 テュール
見れば分かるかと思うが、1位がトップ、10位がドンケツ。まぁ、簡単な強さのランキング表だ。
───つまりはこの女神(?)は、世界で4番目に強い生命体、という事だ。そんな奴がわざわざ下界まで降りてくる理由なんざ、一つしか思い浮かばないぞ?
「さっすが噂のギンくんだねぇ......」
ロキは目を細めてニヤリと笑い、パチンッと指をならす。
次の瞬間、そこに居たのは1人の少女だった。
いつの間に変身した.........いや、この場合は元に戻った、という方が正しいかな?
───手品師、魔術師、魔法使い......トリックスター。
そんな言葉が頭に浮かぶ。
彼女は中学生のような外見で、身長は150cm前後。ボブカットにした紫の髪に紫の瞳。それでいて黒いスーツを来ているのだから、酷く奇抜な格好であった。
「.........いきなり改まってなんだ? 狡知神」
僕は狡知神ロキに、答えのわかりきった質問を投げつける。
「ギン=クラッシュベル。あなたを見込んで、一つ依頼をしたい」
その顔は、僕が初めて見るロキの真剣な表情であった。
☆☆☆
「私の依頼は私の家族である所の『神獣フェンリル』の捕獲及び討伐。今現在、この山の中に居座っている、群れのボスだ」
やっぱりアレはフェンリルだったか。輝夜に匹敵する魔力にあの筋肉。それに加えてあの大きさの狼なんて.........うん、フェンリルくらいしか思いつかないし。
「正解だよ。実はフェンリルは天界ヴァルハラの私の神殿の地下に封印していたんだけどね。一緒に幽閉されていたある中級神が馬鹿やって、フェンリルを逃がしてしまってね.........下界に降りる前に仕留めようと追ってきたわけだが......まぁ間に合わなかった、という事さ」
ゼウスは言っていた。下界に干渉する事は重罪だ、と。
「そう、唯一許されたのが『自身の加護持ち』への干渉。だからこそこうして頭を下げに来たってわけさ」
.........加護持ち......ねぇ。
つまりは今現在、僕はこいつの加護を受けたってことになるのか。
「......仮にもお前の加護を受けたとしても、お前は、今の僕があの化け物に勝てるとでも思ってるのか?」
「勝てないよ」
即答であった。
「でも、まぁ当然だな」
「流石のギンでもEXはなぁ.........」
「がうっ(今回ばかりは自分も足でまといであるな)」
才能はあるが経験の足りないレオン。
同じく才能はあるが、圧倒的に力の足りないマックス。
そして、弱い僕。
そんな僕たち三人は弱者だけれど、相手との力量を測れないほど愚かじゃあない。
僕たちじゃあフェンリルには勝てないことは分かりきっていた。
「ならどうする? 僕達の中で唯一対応できるのが輝夜だ。輝夜一人に任せて僕達は他の敵二万の掃討でもやれってのか?」
もし、そんなこと言ってみろ。今度は本気で狩りにいくぞ?
思わず魔力が漏れそうになる。
......ふぅ、コイツに怒っても仕方ない。
恨むならその中級神を恨もう。
「くふふっ、そんな訳ないじゃないか。でもさ、今の君じゃあせいぜいフェンリルの足止めくらいでしょ? 出来るとしても」
「まぁ、そうだな......」
悔しいが圧倒的に実力が足りていない。
白夜が進化条件をすべて満たしてるから、白夜に雑魚どもを掃討させて進化させてから二人で向かわせる.........とでも言いたいのか?
だったとしても......
「いやいや、私はね、君にフェンリルの捕獲.........いや、討伐を依頼してるんだよ。グレイプニルの所有者さん?」
.........はっ?
「フェンリルは、君が単体で倒すんだよ」
やはり僕の予想は正しかったようだ。
────コイツはオーディンより頭が沸いている
と、そんなことを思った。
ロキちゃんでした!
相手はフェンリル。
.........勝てるんでしょうかねぇ




