第80話
やっとプロローグへと繋がってきましたね。
.........本当にやっとです。
久瀬竜馬、鳳凰院真紀子、桜町穂花。
上記の順に、
theチーレム系のオタク。
爆乳くっ殺お嬢様。
キャラぶれぶれの僕っ子幼女。
という僕の印象である。
ネイル曰く、
「まだそれぞれのリーダー格しか二つ名がありませんが、それでも全員がかなりの実力を持っているらしいですよ? 勇者さんはギルド登録されてないので存在が噂になっている程度ですが」
との事である。
───まぁ、アイツらのことだから、三人のうちの誰かが『本物の勇者』で、ソイツがその誰かを『勇者』に仕立て上げでもしたのだろう。
.........となると僕っ子幼女が勇者っぽいな.........大穴がお嬢様で、久瀬はまず無いな。
アイツはどちらかっていうと『巻き込まれたけど勇者よりチートでした』みたいなやつだ。二つ名から考えて『黒炎魔法』でも使えるのだろうか。
まぁ、穂花が勇者で、鳳凰院と久瀬は巻き込まれチート、とでも考えておこう。それに、多分だけど向こうもこっちに気づいていそうな気もするし。
───まぁ、これだけやらかしてるんだから当然か。
「ん? そう言えばネイル、僕になにか用事あったんじゃないの?」
「あぁっ! そ、そうでしたっ! じ、実はギンさんに手伝ってほしいことがあるんです!」
最初はレイシアに話をしてさっさと帰ろうかと思っていたが、何だか急に暇になったからな.........用事があるならそれを手伝うのもいいかもしれない。
「まぁ、アーマー君みたいな迷惑野郎の退治以外なら手伝ってもいいよ? んで? どんな仕事なんだ?」
.........そう言えばアイツのことすっかり忘れてたな。
そろそろ、僕退治の仲間集めの具合でも確かめに行くかな。
───執行者って口にした途端逃げ出すと思うけど。
「あ、あははは、流石にそんなんじゃないですよ。ただの......と言っては変ですが、まぁ、調査依頼ですね」
調査依頼。
魔物の生態調査から彼氏の浮気調査まで、ありとあらゆる調査に関する依頼のことだ。
魔物の生態調査なんて時には、普通なら確実に戦闘になるため報酬金もかなり高いらしい。
ちなみにゼウス家で調べたことである。
───何だかんだで恭香に頼りっきりだったからね。流石にダメかなって思って色々調べてました。
「調査依頼.........ねぇ、猫探しとか?」
「いえ、今回のはかなり重大な問題になりそうですから、ある程度実力のある冒険者さんたちを集めてるところなんですよ.........こんな時にギルドマスターが外出とは、先が思いやられます」
へぇ.........重大な問題......ねぇ。
全然主人公らしくないのに、何故か『普通』『平和』などという文字からは程遠い僕のことだ。
きっとまた何かがありそうだな.........。
(主殿よ、今回は自分がついているのである。噂に聞くバジリスクの件のようにはさせぬ故、安心なされよ?)
ふっ、なかなかカッコいいこと言ってくれるじゃないか。
「うん、その仕事受けることにするよ。レオンの初仕事だしね」
「がうっ!」
まぁそんなこんなで、僕とレオンの二人パーティは、新たな厄介事へと首を突っ込んだのだった。
────まぁ、後にその気まぐれに感謝することになるのだが。
「っておいっ! 俺のこと忘れてねぇかっ!?」
.........いやいや、もちろん忘れてないよ、マックス。
☆☆☆
「それでは依頼内容の説明がありますので、こちらの会議室にてお待ちください」
そうして僕は受付嬢さんに、会議室へと通された。
ちなみにマックスは冒険者登録をして一緒に依頼を受けるらしく、今現在進行形で登録中だ。マックスも十九歳だ、やはり冒険者には興味があったらしく、かなりニヤけていたのを覚えている。
ん? レオンの事か?
レオンはバレないように変身してついてきてる、とだけ言っておこうか。まぁ、お楽しみ?
会議室の中には大きな長方形テーブルに椅子が約三十個。そのうち幾つかの席には既に冒険者が座っているようだった。
おっ、丁度角っこが二席空いてるな? マックスも来ることだし、とっとと座っと.........
「ちょっとあなた、ここは子供の来るところじゃないのよ? ここがどこだかわかってる? ギ・ル・ド、ギルドよっ。どうやってここまで来たかは知らないけどねっ、早く帰らないとギルドの人来ちゃうわよ?」
ふぅ、この一時間ちょいの間ずっと歩きっぱなしだったからな。確かにレオンにモノを覚えさせる時は立ち止まったりはしたけど、流石に足が疲れるな.........何より昼間だし。
「なぁっ!? 無視っ!? .........ちょっと、私が誰だか分かってるの? Sランク冒険者のフランとは私の事よっ! どうかしら、聞いたことくらい......」
(なぁ、レオン。今回の調査依頼ってどんなのだと思う?)
(うーむ、これだけの冒険者が集められている、という事から考えられるのは強い魔物の生態調査や、広い地域の調査、もしくは......)
(魔物の大量発生、だろ? 僕個人としては最後のだと思うけど..........レオンはどう思う?)
(ふっ、流石は主殿であるな。自分も大量発生だと思うのだ)
「なぁっ!? .........くっふっふっ、もう分かったわっ! 今から実力行使に出るわっ! 元々はお節介のつもりだったけどねッ! 大人を舐めたらダメだって教えてあげるわぁっ!!」
「ふん、そんなガキになにムキになってんだ」
「そ、そうですよフランさん! 流石にギルド内で抜剣は.........あぁっ!?」
.........さっきから誰か騒いでるな。
全く、ここをどこだと思ってるんだか......はぁ、こんな所で騒がれるとまともに話もできな............
「ぐはっ!?」
気付けば腹にレイピアが刺さっていた。
───正直な話、直前に気づいていたので躱せたことは躱せたのだが、正直めんどくさかったし、剣速も速くて、避けるのも辛そうだったので受けてみた。それに、あの短時間では影化も変身も不可能だっただろうし。
うまーくコートの無いところを突いてきたのか、鳩尾の辺りに完全に刺さってる、と言うか貫通してる。椅子の背もたれは破壊不能の死神コートによって守られたようだが、きっと凹みが出来ているに違いない。
あっ、この下の服、さっき買ったばかりのやつじゃん。
そんなことを呑気に考えていると、その僕を刺し殺した張本人が叫び出した。
「な、何でよけないのよぉっっっ!?!?」
「「「「「ひっ、光魔法使いはどこだぁっ!?」」」」」
............うるせぇ奴らだな。
「なに? さっきから煩いと思ったらいきなり殺傷事件ですか?」
「そっ、それは話しかけてるのに無視されて.........って! あ、あなた大丈夫なのっ!?」
「えっ? もしかしてアンタって僕に話しかけてきてたの? 僕は違う人に話しかけているもんだと......」
「あなたに決まってるでしょッ!! ......あっ!ご、ごめんなさいっ! き、傷に響く......」
.........あっ、いいこと思い付いた。
「ぐぼぁらぁっ!?」
思いっきり吐血した。
目を見開く一同。
「ごほっ、ごほっ......、ぐっ.........僕はここで死ぬのかなぁ.........はぁ、はぁ.........、あぁ......童貞のまま死ぬのはっ、......ごほっ......嫌だなぁ。.....心残りとして...は.........それくら......い.........ガクッ」
「ちょ、ちょっとぉっ!? な、何でいきなりっ、さ、さっきまで余裕だったのに............って、息してないじゃないっ! だ、誰か光魔法使いか水魔法使いはいませんかっ!?」
「.........何してるんですか? ギンさん」
「流石だな......もう詐欺師に転職しても食っていけんじゃねぇか?」
結局、僕の茶番は、会議室に入ってきたマックスとネイルによって打ち切られたのだった。
まぁ、ドッキリをバラすには良い頃合いである。
☆☆☆
僕たちはあの後、まるで何事も無かったかのように依頼の説明を受けることにした。
......まぁ、僕を刺した───フランだっけ?───あの人も悪い人では無いのだろう。すこーーしお節介が過ぎるのと、やりすぎ感が否めないだけだ。白夜あたりと比べたら可愛いものさ。
それに、あれだって元はと言えば無視したことになった僕が悪い、とも考えられるしね。
だから、僕の服に血がこびり付いていたり、傷跡だった場所に血が滲んでいたりしても気にしないのだ。
フランや他の冒険者がとても難しげな顔をしてこちらを見ているのもキニシナイ。
───あぁ、もちろん服は後で着替える予定だぞ?
ん? あぁ、どうやって吐血したかって?
いや、ただ単に唾液を血液に変身させただけだよ。もう既に変身という部類ではなくなってきている感があるけど.........まぁ、強くなる分には文句は無いさ。
「そ、それでは依頼のご説明に入らせて頂きますね?」
どうやらこの依頼の説明はネイルが担当するらしい。
もしかしてネイルはベテランなのだろうか? 二十代だけど。
「多少は聞いている方がほとんどだと思いますが、ここではそれについて詳しい説明をさせていただきます、質問がお有りでしたら、その度に挙手をお願い致しますね?」
そう前置きしてネイルは話始めた。
彼女の説明を略すと、
①この街の東にある山の魔物が大量繁殖しているとの情報が入った。確認したら事実、そうであった。
②今回の依頼はその魔物たちの調査、原因の探索、そして出来る限りの討伐。調査は日没までで、冒険者は街の東門前に午前九時半に集合とのこと。およそ一時間後のことだ。
③報酬金は、参加者全員に五万ゴールドの支払い+討伐数や貢献度に応じて加算される。
④基本的には二つ以上のパーティでの行動を勧める。実力のある者は別に単独行動でも構わないが、自己責任。
⑤危ないと思ったら逃げること。ただしトレイン(魔物を引連れて他人の方へと向かうこと)はするな。
⑥かなりの数の魔物が居るため、命の危険がある。依頼を断りたい人は会議室から退出するように。
と、簡単に言えばこの六つであった。
元々この部屋に居たのは二十数人であったが、今はもう既に十八人くらいまでに減っている。⑥を聞いて退出したのだ。
「他に退出者は居ませんか? ペナルティはありませんよ?」
ネイルが再びそう問うが、席を立つものは居なかった。
「では、ここに居る計十八名に依頼を受注します。最後ですが、何か質問はありますか?」
「はい、いいですか?」
最初に挙手をしたのはフランであった。
「はい、フランさん。どうぞ?」
「魔物の大量発生と聞きましたが、一体どれほどのランクの魔物が集まっているのですか? この街には私が居ますからAAAくらいまでなら何とかなりますが.........」
.........あら、この人ってば、僕のこと知らないのか?
すぐに僕に絡んできたことからも、恐らくはほかの街からの冒険者であろうか?
......僕のすぐ近くにSSSのレオンが居るって言ったら驚くかな?
「.........変なこと考えるんじゃねぇぞ?」
隣のマックスが小さな声でそう言ってくる。
......まぁ、今はふざけるような場面じゃあないか。
「えー、資料によると、最も多く見受けられたのがゴブリンやコボルト、オークのようですね。そのようなFランクやEランクの魔物を中心として、D、C、Bランク、と生息しているようですね」
「そ、そう.........ちなみにその資料では最高ランクはどれ位になっているのかしら?」
「Sランク......ですね」
「そう、Sランクならまだまだ楽勝............Sランク?」
突如訪れた静寂。
何故か誰かの欠伸だけがその室内に響いている。
「「「「「「Sランクッッッ!?!?」」」」」」
フランとその他数人───恐らくはフランのパーティメンバーを除く全員がこちらを振り向く。
「「「「「.......倒せるか?」」」」」
おい、Cランクに聞くなよ。
そっちにSランクの冒険者が居るじゃねぇか。
そんなことを考えたが、皆が皆、縋りつくような眼差しでこちらを見ていた為、流石に正直に話すことにした。
「.........昼間なら僕一人でSランク十体が限度かな? SSだったら一体......でギリギリくらい?」
あの事件から既にいくつか魔法を開発しているし、その上全属性耐性がLv.4になっているのだ。今の状態でやっとSSの中位クラスといったところであろう。
ほっと息をつく冒険者たち。
何故か目を見開いてこちらを凝視するフランパーティ。
.........血走った目が怖いです。
「ん? ......あぁ、SSSの従魔を一人連れてきてるから.........まぁ、SSランク十体くらいまでは余裕じゃないか?」
「「「「「つ、連れてきてるっ!?」」」」」
おっと、口が滑った。
「SSSと言えば...............レオンさんですね?」
何故か白夜を除外するネイル。
.........遠まわしに酷ぇこと言いやがるぜ。
「うん、まぁそうだね。一応この部屋に居.........」
「SSSランクッ!? あ、ああ、あなたっ! 一体何者なのっ!?」
「そ、そそ、そんなヤツ居ないじゃないかッ!! 大人を馬鹿にするのも大概にしろッッ!!」
「さ、流石に冗談がすぎますぅ.........」
なんだろう、少し、感動した。
まだ僕相手に「いやいや、話盛ってね?」って言える人物、存在したんだな.........。
この街の人たちと来たら、『今度は何? 神様でもテイムしてくるの?』とか言ってくるんだもんね。SSSとかEXに慣れてしまったんだろう。
くっくっくっ、仕方ない、自己紹介でもしてやろうか。
「僕? ただのしがないCランク冒険し......」
「あ、そう言えばギンさん、Bランクに上がってましたよ?」
............はっ?
やはり最後まで締まらない僕だった。
次回、スキル検証なるか!?




