第76話
新キャラ登場ゼウスちゃん!
※このお話の中の神様は、実際の神話とは結構(性別からして)違うのでご注意を。
カポーン。
アニメの中ではよく聞くような、竹の音。
場所は正に僕のイメージ通りの和風な豪邸。
その、庭に面した一室だ。
机を挟んだ目の前には座布団に正座している少女。
顔に無表情を貼り付け、大人びた様子の少女であった。
その少女が、じぃっ、とこっちを見ている。
「.........ゼウスは可愛いな」
そう言うとピクッと身体を震わせる少女。
だが無表情。
い、いや、良く見ると、少しだけ口の端がピクッと動いているみたいだ。
白夜辺りなら今のでも反応するのだが.........。
やはり神といったところか。
「.........今のは、ずるい」
「いやいや、可愛いってのはまじ......」
「.........それに、ほかの娘の事、考えた」
えっ......心読めるの?
「うん」
は、はは、そ、そう言えば手紙とは雰囲気違うねー......
「話、......逸らさないで」
............僕は机の上に置いてあるお茶を啜ることにした。
あぁ、何故こうなったんだろう?
そんな事を考えながら。
☆☆☆
時は遡ること少し。
「.........どこだここ?」
どうやら転移は無事出来たようだ。
───本当にここが目的地であっているのなら、だが。
僕が転移したのは、どうやら日本風な豪邸の庭のようだ。
.........間違って日本に転移させちゃいましたっ!てへっ♡ とか言いやがったら真面目にすり潰すからな? あの野郎。
そんなことを思った時だった。
「......うぐっ!? な、なんだ......痛っ!?」
なっ、なんだこれ、脳が縮小と膨張を繰り返しているかのような───いや、手を頭蓋にぶっ刺してぐちゃぐちゃと弄り回しているかのような、そんな.........ぐっ! ちょっと洒落しならな.........うぐぅっ!?
最初はまだ耐えられたものの、時が経つ度に増してゆくその痛み。そのあまりの激痛に、数秒後には僕は限界を迎えた。
「ぐぁぁぁぁっっ!! 痛ッてぇぇぇぇッッ!!」
恥も外聞も捨てて痛みに転げ回る。
それこそ白夜による一刀両断や、ブラッドメタルの鑑定、そしてついさっきの両腕切断すらも超える、馬鹿みたいな痛み。それが脳に直接走っているような感じだ。
チカチカと景色が白く見え始め、涎をだらしなく撒き散らし、頭を掻きむしる。
僅かに働く脳が『神の髪を使え』と、そう命令を出す。
力を振り絞ってアイテムボックスから神の髪を.........
「......貴方にそんなことさせない」
その声が響いた瞬間、僕の脳内を──文字通り──占めていた痛みがすうっと消えてゆく。まるで、先程までの痛みが嘘だったかのように。
「.........ごめんなさい。創造神が無理なことをした」
またも響く、その凛とした声。
僕はその女性にお礼を言うべく、顔を上げようとしたのだが、
「あ、ありが......うぐっ!?」
消えたと思っていた痛みがまだ多少は残っていたのだろう。
脳は簡単に限界を迎え、僕の意識はそこで途絶えた。
☆☆☆
「.........ここ、どこだ?」
それが僕の寝起きの言葉だった。
.........確か、僕はゼウスに会うためにここまで転移して.........あぁ、なんか知らないけど頭痛がして倒れたんだっけか?
上半身を起こしてみるが、もう頭痛は完全に無くなったようだ。
「あぁ、そう言えば誰かが助けてく........れ.......た?」
そう、誰か女の人に助けてもらったのだ。
それは、まぁ、この際どうでもいい。
────その人には悪いのだが、それ以上の案件が発生した。
「君............だれ?」
僕の右腕を腕枕にして横になっている金髪少女が、そこには居た。
何故か寝てはおらず、じぃっとこっちを見ていた。
黒地に金の刺繍が施されたゴスロリに、セミロングの............なんて言うんだろ、ハーフアップ? 良く分からないがそんな感じの髪型。
だが、何よりも。その瞳を見て、僕は少し驚いた。
「.........オッドアイ.......?」
右が赤色、左が金色。
それは間違いなくオッドアイであり.........
「.........うん.........初めまして......? 私.........ゼウス。......よろしく.........ね?」
その声は、間違いなく僕を助けてくれた人物のものだった。
まぁ、そんなこんなで、僕と彼女は出会った。
☆☆☆
はい、回想終了。
あれから何だかんだあって、現在に至る。
色々聞いた内容によると、
①ここは天界とも隔離されており、時間の流れがそもそも異なっているらしい。簡単に言えば、こっちでの一日が向こうでの十分なのだそうだ。
②転移の際に起きた頭痛は完全にエウラスのせい。アイツがカッコつけて難しい転移魔法陣を書いて失敗したらしい。
と、まぁ、こんな感じであった。
何故僕と一緒に寝ていたのかは頑なに答えてくれなかった。きっと可愛らしい理由があるのであろう。
「ふぅ、それにしてもここは落ち着くな.........何だか実家を思い出す」
あまり言っては来なかったが、僕の両親は結構なお金持ちであった────と言っても、それも全て叔父に奪われていたようなのだが。
まぁ、小金持ちであった僕たちの両親はこんな感じの和風な家を建てた。まぁ、カポーンと鳴る竹なんて無かったけどな? ある程度は広い、そんな家だった。
「......? ギン......さん、の家も、こんな感じ......?」
......きっとこの娘は、あれだな。俗に言うクーデレ系の、無口キャラなのだろう。あぁ、静かな女の子っていいよね。
『カカッ! カカカッ!』『クハハハハハハハハッ!!』
頭の中に二人の笑い声が響く。
.........本当に静かな女性は素晴らしい。
「......あ、あぁ。まぁ、似たようなもんだったよ。あと、さん付けは要らないぞ? お前は一応命の恩人だしな。もう友達みたいなもんだろ?」
彼女は僕を救ってくれたのだ。
悪いのは全てあのジジイである。
────神格得たら、覚えてろよ?
そうして鎌術を覚える決心をしたのだったが.........
突如瞬間移動して僕の目の前に現れたゼウス。
「うわぁっ!? ど、どうしたゼウス?」
瞬間移動出来るのか? とは聞かなかった。全能神が瞬間移動如き出来ないはずもなかろう。
「い、今.........友達って.........?」
彼女はその無表情だった顔に隠しきれない歓喜を滲ませながら、僕にそう聞いてきた。
「わ、私.........友達に......なっていいの?」
そこには既に、無表情も大人びた様子も存在せず、ただの友達が欲しいだけの女の子が居るだけだった。
ならば僕も言うことはただ一つだろう。
「ゼウス。もちろん良いに決ま.........ってうわぁっ!?」
いきなり僕に抱きついてきたゼウス。
神様がガチでタックルしてきたようなものだし、僕のあばら骨は全壊、内蔵は数カ所破裂、口からは吐血、等々、かなりの生命の危険を感じたのだが、僕が文句をいうことは無かった。
だって、彼女は泣いていたから。
「あ、ありがとう..........ギンくん.......ぐすっ......」
.........ホントにこの世界はぼっちしか居ないのであろうか?
そんなことを思いながらも、彼女を抱きしめ返す僕だった。
次回、閑話です。
一方その頃女子部屋は、と言いう感じです。




