第61話
遅れました、申し訳ないです。
直後、僕の影から何かが現れた。
そして......
次の瞬間、圧倒的な威圧感がその場を包んだ。
白夜どころでは足りない、圧倒的な理不尽。
バジリスクたちはもちろん、僕でさえ恐怖に震え上がってしまった。恐らく、白夜がここに居たとしても、それは変わらなかったに違いない。
────それ程までの、圧倒的な、威圧感。
それを発している存在が、僕の目の前に立っていた。
蒼い炎の模様が描かれた漆黒のフード付きローブ。
背中には僕のコートの背中にあるものと同じ形をした、蒼い紋様が描かれており、前のようなボロボロな印象は欠片も感じられなかった。
魔法使いとは違い、奴の右手には、これまた圧倒的な威圧感を持つデスサイズ。これも、前回街中で見た時よりも遥かに大きく、鋭く、凶悪な見た目になっていた。
奴はこちらに背を向け、フードを目深に被っているため、本体の変化はよく分からないが、一つだけ確かなことがある。明らかに身体が大きくなっているのだ。
前回、対峙した時には、僕より一回り小さな身長だった
が、今は二メートル近い身長へと変化している。
僕は思った。
というか、登場した瞬間───威圧感を感じた瞬間───にはもう確信していた。
うん、間違いない。
コイツ......ナイトメア・ロードを卒業しやがった!!
......気が向かないが、鑑定するか......。
本当に気が向かないが......仕方ないのだろう。
(はぁ......『鑑定』)
名前 未定 (6982)
種族 ゴッドオブ・ナイトメア
Lv. ?
HP ???
MP ???
STR ???
VIT ???
DEX ???
INT ???
MND ???
AGI ???
LUK ???
ユニーク
???
アクティブ
???
パッシブ
???
称号
???
ほら来たよ、やっぱり。
そもそも何ですか? ゴッドって。
ネーミングセンスの欠片も感じられないね。
ロードの状態でもユニークスキル使えば下級神倒せたってのに、ゴッドとか、もう既に神格得てるんじゃないですか?
────この時の僕はまだ知らない。
コイツが真面目に神格を得てしまったということに。
まぁ、そんな感じで現実逃避していると、
───ッッ!?
突如、僕の目の前で起こる魔力の爆走。
もちろん奴だ。狙いはバジリスク。
「ちょっ!? 僕の全魔力よりも遥かに多いんですけどっ!? ちょっ、マジでストッ......」
ちゅどーんっっ!!!
酷い効果音だった。
但し、こちらは威力が高すぎて、そうとしか聞き取れなかったのだ。僕の耳が悪いのだ。
真面目に、アーマー君のライトボール三十連とは違うからね?
何故なら......
「......あ、あはははは、いい眺めだなぁ......」
その謎の魔法の効果範囲にあったであろう、山頂付近が完全に消滅してしまった為である。
ぴろりん!レベルが上がった!
ぴろりん!レベルが上がった!
ぴろりん!レベルが上がった!
ぴろりん!レベルが......
申し訳ない。
レオンよりも、こっちの対策するべきでした。
................が上がった!
ぴろりん!レベルが上がった!
ぴろりろりん!種族進化の条件を一つ満たしました!
まぁ、そんな感じで、僕の生命と街は救われたのだった。
山の一角の消滅と、新たな神格保持者の誕生と引き換えに。
☆☆☆
「クハハハハハハッ! 我かっこいいッ!」
放心している僕の耳に、そんな声が届いた。
.........届いた?
ここには、生命体は僕とコイツしか居ないのだが......
ってまさかっ!?
「い、い、今のってお前かッ!? 今喋ったのッ!!」
問、僕は何故ここまで驚いているのでしょう?
正解は、
「クッハハハハハハッ! 久しいな、人間よ! いや、今はご主人様とでも呼べば良いかなッ!? 全くもって影の中と言うのは快適であったぞ? クハハハハハハッ!」
「え? 貴女、どちら様ですか?」
「なっ!? なんだとッ!?」
聞こえた声は明らかに女性のものであり、
振り向いた奴のフードの下からは金髪蒼眼のお姉さんが出てきた為である。
って......あれ?
振り向いたはいいけれど......なんだ? あのローブ。
胸のあたりが異常に......
────ッッ!?
僕は気付いてしまった。
コイツッ! めっちゃでかいじゃねぇかッ!!!
自称オールラウンダーの本領発揮である。
「あぁ、やっと、やっと僕のパーティに癒しが.....」
山を消し飛ばした事は、もう既に頭の中には無かった。
頭にあるのは二つの双丘。
「んん? 癒し? よう分からんが、お迎えが来たようだぞ? クハハッ!」
「......お迎え?」
天国からのお迎えでしょうか?
そんな冗談を考えていると、聞き慣れた声が聞こえてきた。
『主様ぁぁぁぁぁっっ!!』
消し炭となったこの山の向こうから白銀のドラゴンの姿が見える.........。
あ、バジリスクの死体、どうしよ?
......僕の片腕まで消滅......してないよね?
そんなことを思った僕でした。
※片腕は見つかりませんでした。
ゴッドオブ・ナイトメアでした!
出番はもっとあとの予定だったんですけどね......




