表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第三席 異世界編
666/671

竜-13 対談と現実

おひさしぶりです!

「いやー。悪い悪い。神霊王のヤツがあまりにも買っていたのでな。はて、どれほど強くなったのかと確かめてみたわけだ」


 目の前に居る、角の生えたおっさん。

 星竜王ガルバザルム……と、自称していたな。

 妙にテンションの高い感じが、また少しムカつく。

 そしてそれ以上に、逆立ちしたって勝てっこないってことが苛立たしい。


 ――この世には、敵対してはいけない存在が居る。


 いつか、神王ウラノスが言っていた。

 その本当の意味を、今この瞬間に理解する。

 神霊王と対した時ですら感じなかった現実味が、絶望感と一緒に押し寄せてくる。


 だからこそ、思考は止めない。

 手も足も出ないこの化け物が……万一に、僕の仲間を襲おうとしたら。

 その時は、どうすれば僕は彼女たちを守り通せるか。


 ――否、逃がすことができるのか。


 それは刹那の思考。

 しかし、シングルナンバーの眷属からすれば大きな隙だったのかもしれない。

 トンっと額に軽い衝撃が走る。

 ガルバザルムの指が僕の額を弾いていた。


「――っ!?」

「警戒。なんとも難儀な人生を送っているな。敵ではない、恩がある。それだけ言ってもまだ信じられぬほど、お主の人生は疑いに満ちていたのか?」

「…………はぁ?」


 たった二言。

 それだけで信用を得られないことに、この男は心の底から困惑している。


 僕は純粋に、混乱した。


 なにを……馬鹿なことを言っている?

 コイツは気でも狂っているのか?

 本気の本気でそう思った。


 だけど、すぐに思い直した。



「……生まれながらの最強、か」



 言葉一つで相手を信じても。

 裏切りの一つや二つでどうにかなるほど弱くない。

 それが眷属。シングルナンバーか。


「……ガルバザルム、これが普通だよ。言葉一つで相手のことを信頼できる聖人だらけなら、人類史に戦争なんて起きてない」

「ふむ……難しい言い回しだな。つまり、貴殿は我を信用していないのか?」

「あぁ、これっぽっちも」


 どうやって逃げるべきか考えながら、並行して時間稼ぎを進めていく。

 視線は外さず、魔力も解かない。

 逃げ出せるだけの強化を身体に施したまま、警戒全開で男を見据える。


「まぁ、そのように身構えたところで、我が本気で殺そうとすれば意味無いのだが……まぁ良い。とにかく座ろうか」


 ガルバザルムはそう言った。

 ――次の瞬間、僕らは違う世界に立っていた。


「――っ!?」

「な、なんじゃこれは……!」


 白夜たちの困惑の声。

 周囲に広がるのは一面の草原。

 その中にぽつんと円卓が置いてあって、椅子が人数分だけ揃ってる。


 また世界の創造か……?

 そう考えたが、月光眼が、今までの経験が、本能が『それは違う』を囁いた。


「……瞬間移動……いや、正確には……【距離間の支配】か」

「……びっくりした。数度見ただけで我の力の本質に気がつかれるとは。いや凄いな……。洞察力なら我以上かもしれん」


 そう言いつつも、星竜王ガルバザルムは席につく。

 ……世界の創造。

 そう考えていたものが、その実はただの移動だった……なんていう、馬鹿げた考え。

 半分は当てずっぽうだった。

 まぁ、それが肯定されてしまった以上……受け入れるしかないのだけれど。


「我は腹の中に宇宙を飼っておる。その中で無数の星が生まれては亡び、知的生命体を生み出してきた。そういう意味では世界創造も正しいのだがな。お主が考えていたような短時間の再生崩壊などやってられんよ。というか、そんなこと出来んし」


 つまり、僕は勘違いをしていたわけだ。

 僕らは確かに世界を渡っていた。

 腹の中にあるあらゆる星を移動していた。

 だから、一瞬で世界が入れ替わる――生まれ変わったと誤解した。

 ……何とも恥ずかしい話だな。本当に。


「……眷属にもできないことがあるのか」

「できないことだらけじゃよ。それが眷属という生命体の最大の欠点でもある」


 そう言って、ガルバザルムは再び席を勧めてくる。

 ……これ以上拒否するのは、ガルバザルムの機嫌を損ねかねない……か。

 少し息を吐き、警戒を解かないままで席に座る。

 僕の両側に白夜達も腰を下ろし、再びガルバザルムは話し始める。


「眷属とは言ってみれば、()()()()()()()()()()よ。神霊王めに与えられた能力に関していえば、他の追随を許さない。ただし、他の能力は一切使えない。それが眷属」

「……いいのかよ、そんなことバラしてしまって」

「ん? お主のことだし、とっくの昔に察しているかと思ってな」


 考えてもいなかった……とは、言えないな。

 だけど、『かもしれない』と思ってた程度さ。

 炎魔神イフリートならば炎の力。

 機界王ギシギブルならば機械の力。

 それ以外の能力は一切使うことは無かった。

 つまり、その力に全てのリソースを注ぎ込んでいるために、他の力を使えないのでないか――と。

 身勝手で、『だったらいいな』程度の妄想として考えていただけだ。


「俗に言う『極振り』ってやつだな。だから強い」


 ま、たまに例外はいるがな、と彼は続ける。


「我らが力の極点だとするならば……人間の子らの戦い方は力の乗算。複数の力を用いて戦い、それらをいかに『足し算』ではなく『乗算』に出来るかという、一種の技量勝負。まあ、聞くに我らと似たような極振りもいるらしいが――おいお主、何故そこで苦い顔をする」

「……嫌な奴らのことを思い出した」


 毎度毎度。

 僕を極限まで追い詰めたのは、一種の力を極めた奴らだった。

 加速する、殴る蹴る、喰らう。

 この男の言う通り、多くの能力を乗算する僕にとって、個の力を極めた戦士は強敵だ。

 だけど――。


「一つの力を極めることこそ最強――とか。そう言うつもりならやめておけ。だって、()()()()()()()()()()()()()()()()()


 敗北なんていくらでもある。

 土を舐め、泥を啜り、涙を流したこともある。

 けど、僕はここに生きている。

 力の極点どもを相手にして、生きている。

 なら、力の乗算が極点に劣る理由は成り立たない。


 そう言い切った僕に、星竜王ガルバザルムは――にやりと笑った。


「……そう。個の力は強い。眷属という在り方からして強いのだ。……だがな、ふと考えてしまったのだ。()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()、と」

「……ッ!?」


 初めて見聞きする、神霊王の力の情報。

 何もかもが謎に包まれ、ただ、強いということしか分からぬ頂点。

 絶対強者、イブリース。

 彼/彼女の力を、この男は知っている……のか?


「ああ、ちなみに詳しい情報は伏せるぞ。というか、正直言って全部は知らない。どれだけ多くの能力を持っているのか、永くを生きた眷属をして知らない」

「……つまり」

「ああ、少なくとも現時点の最強は、力の乗算をしてその座に至ったという話だよ」


 ……その話を素直に信じるのなら。

 一つの力を極めるより、多くの力を乗算したほうがいい、ということになる。

 だけど、「ほーん、そうなんだー」とはならねぇよ。


「……それ、おまえも知らないだけの大量の能力を、何から何まで極め尽くしてるからこその最強――つまりは神霊王なんじゃないのか?」


 僕の言葉に、彼は何も反応しない。

 ただ、穏やかな顔で紅茶に口をつけ、ややしばらくして息を吐く。

 無言の肯定……と受け取るべきか。

 いや、事実そうなんだろうな。そうじゃなきゃ眷属の創造主として君臨し得ない。


「そろそろ……伝えてもよいかの。我が出てきてまでお主に言いたかった現実を」


 それは、とても穏やかな声だった。

 まるで春のそよかぜのようで。

 聞いているだけで心が和むようで。



 伝えられた言葉は、凶刃のように心を抉った。




「お前さん、それ以上はもう強くなれんぞ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
― 新着の感想 ―
[良い点] 更新待ってました!!ありがとうございます!! これ以上強くなれない。これからどうなるのか想像しがいがありますね… 次の更新も気長に楽しみに待ってます!
2022/03/10 18:54 エビテンリング
[良い点] 更新感謝!!
[一言] お久しぶりです!!!待ってました。ここ最近チェックしてなかったら更新されてて嬉しすぎて死にそう。どんな方法で強くなるのか楽しみです。更新お疲れ様です!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ