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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第二席 帝国編Ⅱ
652/671

失-22 強欲の罪

この章ラスト!

混沌編、完結です!

 はるか昔。

 気が遠くなるほど昔のこと。

 人という概念すら存在せぬ頃。

 私は生まれた。

 私より先に生まれた神の方など、指の数より少なかったろう。


 私の父は、神王ウラノス。

 対して、私は母の名も顔も知り得ない。

 それは、ひとえに神王ウラノスが隠していたから。

 頑なに隠していたから。

 神界においてその話は禁忌とされていたから。

 だから、私は母親のことなど知りはしない。


 ただ、物心覚えた頃には察してた。


 あぁ、私の力は……悪魔の力なのだろう、と。




 ☆☆☆




「死ね!【全てを貫く力】!」


 簒奪王の周囲へと無数の魔法が浮び上がる。

 それらは槍の形を取ると、真っ直ぐに私へと突き進む。

 その魔法ひとつとっても今まで見てきた中で最強クラス。

 それを前に、私はただ、手を前に掲げた。


「止まれ」


 瞬間、銀色の魔力が周囲へ弾け、全ての攻撃が停止する。


「本来……こうして口にする必要も無いのだがな。私の半径五メートル以内に侵入した【害ある攻撃】は、全てその場で停止する」

「……ッ! こ、この……!」

「ロッド! 私もやるわ! 同時に行きましょう!」


 今ここに至って、初めて言霊王が動き始める。

 今までは迎撃に専念していたようだが……攻撃に転じられると少々厄介だな。私は左手を掲げると、次の瞬間、その手がその場で固まった。


「……?」

「何故神の力を封じた状態で戦えるのかは分からない。だが! 時を操る魔法! それが貴様の専売特許だと思い上がったが敗因よ!」

「なるほど、局所的な時間停止か」


 それに、あの男はギルの月光眼さえ奪っている。

 まだまだ使いこなせては居ないようだが、空間固定まで織り交ぜてきたらそれなりに手が焼けるだろう。まぁ、使()()()()()()()()()()()()()()()()()()の話だがな。


「――児戯」


 私は難なく、手を動かした。

 その光景に簒奪王は目を見開き、私は拳を握る。

 時間停止が使えるのか、それは良かった。


 ――()()()()()()


 瞬間、移動していた言霊王はその場で完全に硬直し、締め付けられるような痛みに喘いで吐血する。


「が、はっ……!? こ、れは……!?」

「【独裁魂域(オートクレジィ)】」


 と言ったか? 弟の能力だったはずだ。

 膨大極まる魂で周囲の空間全てを埋めつくし、その空間の中においてありとあらゆる事象を支配するという最悪のチート能力。

 まぁ、その本質は【溢れた魂を全て体に収納することによる身体強化】にある訳だが、今回はこちらの能力を使わせてもらおう。


「ふ、ふざけ……」


 騒ぎ始めた言霊王を、そのまま遠くへ投げ飛ばす。

 彼女の体はそのまま闘技場の壁へと突き刺さり、痙攣の果てに脱力する。気絶したか、死んだか。まぁ、お前はそこで黙っていればいい。


「チッ……使えない女だ!」

「お前もだろう?」


 私は奴の背後へと瞬間移動すると、そのまま右手を突き出した。


「『部位召喚』」


 瞬間、私の眼前へと()()()()()()()()()()()が現れる。

 それは一瞬にして簒奪王を飲み込むと、勢いそのまま言霊王の体すら巻き込んで、尽く周囲を破壊し尽くす。

 闘技場は、既に崩壊を始めている。

 駆けつけた者も多くが避難を始め、ギルやサタンも、アスタロトが回収しているのが目に映る。


「……なるほど。なかなか使い勝手がいい。あの男……こんな力を使っていたのか。これは負けるな。むしろよくあそこまで頑張ったぞ、私」

「ぐ……ッ、き、貴様! どれだけの能力を持っているというのだ!」


 黒い虎のアギトは、衝撃と共に弾け飛んだ。

 その下からは……なるほどな、言霊による【戻し】を使ったか。無傷に戻った言霊王と簒奪王が姿を現す。


「無様だな。格下相手に何度【待った】を使う気だ?」

「黙れ! 黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れェ! 貴様は喋るな! もはや抵抗さえしなくて良い! 貴様はただ負けていれば良いのだ!」

「……話にならんな」


 私は肩をすくめると、言霊王が不安をこぼす。


「ろ、ロッド……だ、大丈夫なの!? あ、アイツ……なんでか知らないけど、間違いなくシングルナンバー……」

「黙れ! 神如きが我ら眷属に勝る道理などどこにも無い! まして、シングルナンバーだと!? ふざけるな! 俺よりあの女が強いとでも言いたいのか!」

「で、でも……でもでもでも!」


 どうやら、言霊王の方が幾分マシなようだな。

 正確に、私との力量差を理解しているらしい。

 対して……簒奪王、お前はダメだ。

 まるで駄々をこねる子供のよう。

 やはりお前は、姿は変われど【糞ガキ】なんだよ。


「……はぁ。まぁいい、どーせ殺す。内情なんて興味もない」

「……! 貴様! 貴様貴様貴様貴様ァ! 殺すと、俺を殺すと言ったか下郎! なればよし、我が全身全霊を持って、貴様が言った言葉、後悔させてやる!」


 奴の全身から、見知った魔力が吹き上がる。

 それは、紛うことなき【終焉(ジ・オーラス)】だった。

 先程まで使っていた力を、赤の他人に奪われるとは……なんとも言えない微妙な気持ちだが、お前はなにか勘違いしているぞ、眷属。


「残念ながら、その力に自身を強化する能力はない」

「馬鹿が! この力は喰らう力なのだろう! ならば貴様の一切合切を喰らい果たして、正真正銘、シングルナンバーの眷属として俺は君臨する! その力……貴様程度が使って良い代物ではないと知れ!」


 そう言って、終焉を撒き散らしながら簒奪王が迫る。

 ……だけでは無いな。

 ギルの【絶望の燈】、サタンの【憤怒の罪】。

 だけでもなく、数多の、無数の強化能力を並列使用している様子だ。

 その動きは先程までよりずっと早い。

 もはや目で追うのも一苦労だ。

 これは【裸眼】であることを辞めるべきかもしれないな。



「借りるぞ小僧……【運命眼】」



 私の瞳が、紺碧に染まる。

 奴の攻撃は私に触れることすら無く、私の目の前の地面へと吸い込まれた。


「な、ば、馬鹿な……その眼は、その眼は! どこで手に入れた貴様!」

「どこで? ()()()()()だとも」


 それに、手に入れた訳では無いさ。

 この眼は【三大魔眼】の中でも頂点に位置する。

 今の私とて十分に使いこなせるとは思えない。

 だから、手にしたのではなく、今は間借りしているだけさ。

 この目を使えるのは、この時代では二人だけだろうからな。


「数分だ。それが終われば消えていい」


 銀色の魔力が紺碧の両眼に吸い込まれてゆく。

 私は拳を握りしめると、奴の頭蓋へと振り下ろす。


「【空撃】」


 どこぞで聞いた、【攻撃】の転移能力。

 自身の攻撃を視界の中好きな場所へと転移できるという力だ。

 私の拳は、威力そのまま奴の眼前へと発生し、簒奪王は衝撃と共にその頭を地面へと叩きつけた。


「がフッ……!?」

「言わなかったか、眷属よ」


 その頭蓋を蹴りあげる。

 無論、空撃により直接の接触は避けている。

 触れれば奪われる。なれば触らなければいい話だし。


「お前は二度と、私に触れること敵わん。喰らう、奪うなど、夢のまた夢と知れ、愚か者が」


 奴の体は、鮮血と共に空を舞う。

 言霊王が焦ったように動き出すが、遅い。

 私はセイズの背後から喉を穿つと、奴は焦ったように振り返る。


「ゴボッ……お、ま、……ェ!」

「喋るな。動くな。お前はもう力を使うな」


 奴の喉は、今潰した。

 言霊王は咄嗟にその腕を【再生機器】へと伸ばしたようだが、音声を再生される前にその両腕を切り飛ばす。


「ぎ、ァァァァァァァァ! ァ、ァァァァアアアアア!」

「おめでとう。これで、やり直しは効かなくなった」


 アダマスの大鎌から手を離し、指を鳴らす。

 言霊王の身体中から【砕ける音】が響き渡り、無数の金属がボロボロとこぼれ落ちる。これで、お前の声を登録した機械も全て壊れた。

 お前はもう、二度と力を使えない。


「だが……眷属は時に想像を超えてしぶといからな。ダメ押しと行こう。『言霊王セイズは、死から戻ることは二度とない』」

「…………ぇ?」


 私の言葉が、奴を縛る。

 言霊王は愕然と目を見開いていた。

 私は、情け容赦なく、その首を捻り潰した。


 嫌な感触が手に残る。

 首の骨を砕く感覚と、肉を握り潰す感触。

 奴は手先を大きく痙攣させると、そのまま全身から力を抜いた。


 ――死んだ。


 私の体へと膨大な力が流れてくる。

 それが【巻き戻される】ことは、もうない。

 私は言霊王の体を捨てると、その体は地面に触れるより先に消えていった。

 その光景を、簒奪王は身体を震わせながら見つめていた。



「あとは、お前だけだよ。泥棒眷属」



「ふ、ふざけ……ふざけるな! こんなことが、こんなことがあってたまるか! 俺は、俺たちは上位眷属! 神霊王様に認められた最高にして至高の存在! そんな俺たちが、貴様ごときに負けるなど……ォ!」


 あるんだよ。

 だから言霊王は負けていったし。

 だからお前は、負けそうになってる。


「厄介な女が消えたからな。冥土の土産に聞かせてやろう」

「く、来るな! 来るな来るなァ!」


 私は歩き出す。

 同時に、奴の周囲へと無数の魔法が浮び上がる。

 一撃一撃が即死級。

 だが、それらが私に触れることは無い。

 半径五メートルの【停止区域】に達することも無く、迫った攻撃は逸れて、弾けて、私とは関係の無い方向へと飛んでゆく。


「何故、何故だ! なぜ貴様がその眼を……!」

「私の力は【強欲の罪】。決してレベルが上がらず……その代わり、反則の限りが与えられる力。おそらく、この世界でも最高級の反則だ」


 だからこそ、私はLv.1でも、最高神だった。

 神界において最高クラスの地位に立てた。

 サタンの父親、空亡の後任を打ち倒せた。

 神の王にさえ、牙を突き立てることが出来た。


「く、来る、なァ……ッ」


 私は、目の前まで迫った簒奪王を見据える。

 その体は、非常に小さく見えた。

 二メートルの巨漢でも、見上げるほどの体格でも。

 その体からは、弱さ以外を感じ得なかった。


「な、なんなんだ……なんなんだよ、お前!」


 叫ぶ眷属へと、私は笑顔で手を伸ばす。

 その首を素手で掴み、その体を持ち上げた。


「――強欲の罪……その力は【()()】だ」


 私の力は、全てが思い通りにならないと気が済まない。

 簒奪王は、首に触れた私の手を見て笑顔をうかべた。

 咄嗟に私の能力を奪おうとしたようだが――それは不可能が過ぎる。



「私は能力を奪われる――【はずがない】」



 告げた瞬間、奴の能力は無効化された。

 その事実に簒奪王は目を限界まで見開いていて。

 私は、相反するような笑顔を浮かべ、言葉を重ねる。



「私は【万強奪(オールテイカー)】を使えない――【はずがない】」



 次の瞬間、私の元へと奴の力が流れてくる。

 最初に先ず、【万強奪】の能力を。

 次いで【絶望の燈】【憤怒の罪】等など……ありとあらゆる力を奪い、吸い取ってゆく。搾り取ってゆく。


「や、やめろ! やめろやめろォ! き、貴様……ふざけるな! ふざけるなふざけるな! 何をしているのか分かって……やめろと言っているのが分からないのか!」

「ほう、ほう。なるほど。素晴らしい力だな。全て貰うとしよう」

「やめろおおおおおおおおおおおおおォォォォォ!!」


 叫び声すら愉悦を深めるスパイスに感じる。

 そうさ、私は悪の王。

 全ての悪魔の覇王、混沌。

 善なる者は、支えよう。

 悪なる者は、叩き潰そう。


 やがて、奴の力は1つ残らず消失する。

 あぁ、いや、あまりにも情けなかったから、情けはかけたのだぞ?

 全てを奪うのは可哀想で【聖剣ミスティルテイン(偽)】というスキルだけ残しておいた。ただ、普通の剣が聖剣に見えると言うだけの力らしい。


「あ、ぁぁ、あ、ぁああああああ……!」

「どうした、諦めたか? ほら、使えよ力を。どこから奪ってきたかは知らないが、聖剣なんだろう? 使ってみろよ、上位眷属」


 既に、奴の瞳から光は消え失せていた。

 今まで、ありとあらゆる者たちから力を奪い、命を奪い、尊厳を踏みにじってきた貴様にお似合いの最期だ。最期は惨めったらしく、あらゆる力を失って、無能の象徴たるスキルを抱えて死ぬがいいさ。


 私は手を離す。

 奴は、苦しさから解放されて膝を着くと、希望に縋って私を見上げる。



 その首を、大鎌で一思いに断ち切った。



「……ぁ?」


 悲鳴などなかった。

 困惑ばかりが浮かんだ首は転がってゆき、やがて、自分の死を目の当たりにして涙を流した。


「な、何故……何故何故何故! なぜ俺がこんな目に……! 神霊王様! 我らが王よ! この女に天罰を……そして、私を助け――」


「情けない遺言だな」


 奴の顔面へと無数の亀裂が走る。

 やつは限界まで目を見開いて――次の瞬間、細切れとなって風に消えた。

 首から離れた肉体が光と消えて、私に三つ目の王冠が宿る。


 私は右腕へと視線を向ける。

 全てを奪い返したからな。

 まぁ……もちろん【終焉】もまた戻っている。


「なるほどな……。ふむ。終焉を創造するための対価……封印は既に済み、終焉は個の能力として成り立っている。故に、取り戻したところで今一度の【封印】は無いらしい」


 つまり、今まで通りの終焉も使えて。

 以前通りの、強欲の罪まで取り返すことが出来た。

 加えて、簒奪王から数多の能力を奪い、言霊王の力を見た。

 そして私は、【1度見ただけの能力を使えない――()()()()()】。


「……うっひゃぁー。混沌ボス……マジっすか? なんか、もう、負ける姿が想像できないんですけども……」

「……アスタロト。いたのか」

「そりゃいましたよ……。一応、ギルやサタンさんは無事ですよ。能力は奪われたみたいですけど……どーせ。【私は他人に能力を与えられない――()()()()()】って奴でしょ?」


 その通り。

 私は笑うと、アスタロトは頬を引き攣らせた。

 奴の言う通り、ギルやサタンには能力を戻そうと思う。

 それに、私の旅はまだ続く。

 もしも元の所有者が生きていたならば。

 簒奪王の奪った能力を返す、という目的があってもいいかもしれない。


「まぁ、それは後で考えるか」


 今はとにかく、疲れた。

 久方ぶりに強欲の罪を使ったせいか、魔力がごっそり持っていかれてな。

 もう、気を張ってなければ今にでも気絶してしまいそうだ。


 周囲を見渡せば、闘技場は跡形も残らず壊れている。

 ギルの頂上決戦があって間もなく、この被害。

 これは……うむ。少しというか、復興にはかなりの時間がかかりそうだし。

 なにより、私が壊したモノも多くあるので、見て見ぬふりも出来そうにない。


「アスタロト……貴様、私の部下だったよな?」

「え? 嫌な予感がするので違――」

「違わない。ということで、命令を下す」


 嫌がり、逃げ出そうとするアスタロトの首根っこを掴む。

 そして私は、悪魔軍、新たな任務を口にした。



「帝国の復興を手伝う。有無は言わせん。力を貸せ」


「嫌だぁぁああああああああ!! この有様を復興とか! な、何年掛かると思ってるんですかァァァ!?」



 アスタロトの叫び声が響き渡り、私は思わず苦笑する。

 空には、先程までの争いなど関係ないとばかりに、青空ばかりが広がっている。


 私の王冠は、既に三つ。

 加えて、以前の力まで取り戻した。


 なぁ、弟よ。


 私は、世界のどこかにいる我が弟へと語り掛ける。

 届かぬとは知っていて。


 ……それでも姉として、自慢せずにはいられない。



 私が認める、私を倒した最強の弟よ。


 お前の最強は、もう超えたぞ。


 今の私は、お前よりもはるかに強い。


 ならば、お前は一体どうする?


 私は、その問いの答えを想像して、笑ってしまう。


 あぁ、そうだ、お前ならきっとそう言うだろうな。

 そして実際に、実現するのだろうから恐ろしい。



「……さらに超えてくるのだろうな。お前のことだ」



 私はアスタロトを引きずり、歩き出す。



 これは私の物語。


 私が歩き、私が綴り、私が作る物語。


 何を成すかは決めてない。

 目的さえも定かじゃない。


 ただ、生きる。

 私の生きた理由を知るために。

 今までの道が正しかったのだと証明するために。



 今まで死んだ全ての者へと、贈る物語だ。



以上、眷属編②【失】でした!


ちなみに今回でてきたスキル。


【独裁魂域】【部位召喚】→ギン

【運命眼】→久瀬くん

【空撃】→マルタさん

【聖剣ミスティルテイン(偽)】→水井幸之助


の能力でした!


……えっ、水井幸之助って誰、だって?

そりゃぁ、アレですよ。あの子です。

勇者たちの初登場シーンではっちゃけてた男の子です。


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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
― 新着の感想 ―
[一言] 相変わらずぶっ壊れてますねw最高!
2020/05/04 20:26 退会済み
管理
[気になる点] いや、マジでどうやったら勝てるんだ…… ギンくん本当に頑張れよな!
[一言] うーん、獣王君不憫w
2020/05/03 18:20 退会済み
管理
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