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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第二席 帝国編Ⅱ
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失-21 時空神クロノス

コロナに負けじとチートを書く。

 それは、気味の悪い感覚だった。

 目の前の死に体から吹き上がった、見覚えのある魔力。


 ――銀色の魔力。


 それは、神霊王イブリースの魔力。

 などでは、決してなかった。

 断じて違う、これはあの方の魔力ではない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()


「あぁ、何たることか」


 女は語る。

 先程まで路上の小石に等しかった存在は。

 力を奪われ、それ以下の屑へと成り果てた。

 はずなのに、何故。

 何故、何故何故何故、何故ッ!


「何故、貴様……ッ、そんなにも――」

「そんなにも、何だ?」


 女の言葉に、簒奪王は何も言い返せない。

 それほどまでの、純粋な【圧】。

 まるで絶対強者を前にしているような。

 ……そうだ、この感覚、以前に1度だけ覚えがあった。



『ねぇ、そんなに殺されたいのかな?』



 考えるのも億劫になるほどの、遥かなる太古。

 1人の神に、簒奪王は恐怖した。

 神の王。非眷属の身において神霊王にさえ認められた傑物。

 そしてこの女は――他でもない、神の王の血統だった。


 恐怖を覚えていることに、簒奪王は怒りを抱いた。


 そして次の瞬間――両手に掴んでいた二人の男が、消失した。


「な……ッ!?」

「ギル、サタン。貴様らはそこで寝ていろ。……すぐ終わる」


 気がついた時、女は男二人を抱えていた。

 その光景には簒奪王も、言霊王も、ギルやサタン本人でさえ目を剥いていた。だって、それはあまりにも――。


「ちょ、ちょっと、ロッド? ()()()()()?」

「…………」


 沈黙こそが、何よりの答えだった。

 女は、男二人をその場に残して振り向いた。


 風になびくのは闇のように黒い漆黒の髪。

 短く揃えられたそれらはまるで男性のようで、()()()()()()()その軍服は男性用。されどその容姿からは『男装』などでは隠しきれない【美】が滲み出しており、その後ろ姿に、サタンは限界まで目を見開いた。


 だってその姿には、見覚えがあったから。


「こ、混沌様……い、いや、貴方は――」


 かつて、神の王が全盛期であった頃。

 空亡という大悪魔が世界を支配していた頃。

 その時代において、最悪の【呪い】を受けながら、それでもなお、数多の悪魔と渡り合い、悪名の限りを尽くした【最悪の神】。


 世界で最も有名な、反逆の神様。


「さて、眷属二柱。改めて自己紹介をしておこうか」


終焉(ジ・オーラス)】は、禁忌の力。

 ()()()()()を支払う――正確に言えば【封じる】ことにより、()()()()()()()()()()。そういう禁呪を元に得た、等価交換の果てに成り立った力。


「私は混沌……いいや、今はこう名乗ろうか」


 女の全身から、銀色の魔力が溢れ出す。

 それは、神霊王の魔力とは全く別種のもので。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()でもあった。


「――()()()()()()()()()()()


 失って始めて、得るものがある。

 終焉を失って始めて、輝くものがある。

 それは、終焉(強さ)のために一度は封じた力であり。

 それは、女が心の底から憎悪した神能でもあり。

 それは、己が無力さの証明でもあり。

 彼女が今より弱かった頃の力でもあり。


 ――彼女が最も()()()()()時代の、力でもあった。


「き、貴様……ッ」

「嬉しいな。終焉に感謝する日が来ようとは。ありがとう、終焉。お前のおかげで、この力は輝ける」


 かくして、時空神クロノスは笑った。

 実に楽しげに、実に、強かに。

 圧倒的な強者の衣を纏い。

 絶対的な力を取り戻して、拳を握る。



「さて、眷属。どちらから殺されたい?」



 ここに、最悪の神は舞い降りた。

 既に、弱さなど介入する隙はない。

 そこにあるのは、絶対的な強さだけ。


 神霊王の言葉は、正しかった。

 女は、簒奪王にとって最悪の相手だったのだ。


 ――奪うことで、強くなる。


 そんな馬鹿げた存在は、きっとこの世界でも稀だろう。




 ☆☆☆




「『時よ止まれ』」


 その言葉一つで、世界は止まった。

 昔は……そうだな、数分止めているのが限界だったか。

 それを今では、永遠にだって止めていられそうだ。


「ぐ、か、らだ、が……ッ」

「ほう? 意識があるのか。さすが眷属」


 止まった時の世界で、簒奪王は意識を保っていた。

 言霊王は言葉すら発せないようだが、同じように意識を持っている様子だ。慌てたように右往左往する眼球がその証だろう。


 そんな2人へ、私は散歩するような歩幅で歩き出す。


「さて、問題。お前たちは強い。片や言葉が具現化する反則能力者。片や触れるだけで能力を奪う反則能力者。全く……神霊王にも呆れるぞ。シングルナンバーは一体どんな化け物揃いなのか」

「き、きき、きさま、ァ!」

「……おや、動かなかったか? 今」


 素直に驚いたぞ。

 さすがはギルやサタンの力まで奪っているだけのことはある。

 十何位かと言っていた気がするが、今ならもう少し上の序列にいるのではなかろうか? なにせ、力技で止まった時の世界を動いたのだ。純粋に、賞賛に値する怪力だ。

 だがな、簒奪王。


「強いなぁ。まぁ、私はもっと強いようだが」


 指を鳴らした。

 瞬間、さらなる魔力が周囲へ弾けた。

 その世界の中では、言霊王でさえ意識を保てない。

 簒奪王は辛うじて意識を保っているものの、既に指先ひとつ動かせまい。


「昔から……考えてはいたのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()が出てきた場合、どうするべきかとな」


 昔より、最強の代名詞は時間支配だろう。

 だからこそ、その能力を持つ者だからこそ、そういった能力者と対した時のことも考えていた。そして、考え至った。



「止まった時の世界を、さらに止めればいいだけの事」



 簒奪王の目が、反則だと言っているようだった。

 奇遇だな、心の底から同感だ。


「お前は強いよ。だけど、私はもっと強い。今なら、あの弟でさえ片手間に倒せてしまいそうだからな」


 かつて、弟と死闘を演じていた頃が懐かしい。

 きっと今は、そんなことも出来ないのだろう。

 それほどまでに、今の私はきっと強過ぎる。


「だが、神霊王には【借り】もある。なにせ、私に禁術を……終焉(ジ・オーラス)を教えたのは奴だからな。だから、奴の顔に免じて、この世界で惨殺するのだけは勘弁しよう」


 指を鳴らす。

 途端に二人はバランスを崩したように膝をつく。

 既に、止まった時の世界は閉じている。

 時は動きだし、眷属二人は私を睨んだ。


「――後悔するぞ、その慢心が貴様の敗北を招いた!」

「知らないのか? 余裕を浮かべてこそのラスボスだろうが」


 それに、お前は考え違いをしているよ。

 何故、まだ私に勝てるつもりでいるのだろうか?

 私は大きく息を吐き。


「お前はもう二度と、私には触れないよ」


 彼の背後から、アダマスの大鎌を横に薙いだ。

 銀色の筋が走り抜け、簒奪王の首が空に舞う。

 鮮血が弾け、飛んだ首が愕然と目を見開いている。


 さて……これで一人。


 私は言霊王へと視線を向けると、彼女は焦ったように言葉を紡ぐ。


「い、『今のは無――』」

「『喋るな』」


 私の言葉に、彼女の言葉は消失した。

 言霊王は愕然と目を見開き、私を見つめる。

 おや、その様子だと……知らなかったのか?

 というより、神霊王は伝えてやらなかったのか?


 ――時空神クロノスの、本当の能力を。


「……ほう、便利だな。言霊というのは。貰っておこう」

「……! ……ッ、……!!」

「なんと言っているのか分からない」


 私は鎌を薙ぎ払う。

 言霊王の首も体と生き別れ、空を舞う。

 それにより、私の体へと二つの王冠が灯る。

 レベルアップとは比べ物にならないほどの力が漲り、私は勝利を確信……する直前で、覚えのある感覚に陥った。


「…………またか。何度やり直せば気が済むのか」


 私は、背後を振り返る。

 そこには逆再生のように元へと戻る簒奪王の姿がある。どころか言霊王の首すらも元の場所へと戻ってゆき、その光景に私は苦々しく笑う。


「……チートの質も、数も、弟以上だな。()()()()()()()()()()()()()()()()()か。お前、どこからそのような力を奪ってきた?」

「ぐっ……この、非眷属如きが、神如きが!」


 簒奪王は、憎悪を迸らせる。

 その圧はなかなかのもので、少し前の私ならば対抗することも出来ずに負けていただろうと想像がつく。

 私は首の神器へと手を触れる。

 既に、この神器が私の行動を妨げることは無い。

 それはひとえに――この両眷属が、【悪】であるからこそ。


「その目、その言葉……あぁ、やはり、躊躇なく潰せそうだ」

「【世界侵食】!」


 奴は両手を地面へつくと、その場所から一気に世界が移り変わる。

 この能力には見覚えがある。かつてギン=クラッシュベルが習得した力でもあり、神王ウラノスが誇る【設定の書き換え】の劣化コピーだ。

 無論、破れないはずがない。


「――月光斬」


 白銀一閃。

 全ての時を刈り取る刃が全てを切り裂く。

 空間を裂き、雲を切り取り、簒奪王の腕を刈る。


「ぐ……ッ!?」

「おや、躱したか」


 頭の先から股下まで、一思いに両断するつもりだったんだが。

 そうこう考えていると、私の背後へと言霊王が迫っていた。


「『お前の神の力を全て封じる』わ!」


 時間を逆行したのなら、言霊王も能力が使えるわけか。

 私の体へと見えない鎖が絡み付き、その光景に二人の眷属は勝利を確信したような笑みを浮かべた。


「はっ! やった、やったわ! ざまぁないわね、ざまぁみろ! あれだけ余裕ぶっこいてるからそんなことになるのよ、ばぁァァァァか!」

「ふっ、は、ははははは! 言ってやるな言霊王! 生身の神にしてはよくやったでは無いか! ここは一思いに、嬲るだけ嬲って拷問の末に殺してやるとしよう!」


「……救いようがないな」


 一思いに殺してくれるならまだ良かった。

 いや、殺されてる時点で良くはないんだけれど。

 だが……そこを、なんと性格の悪い眷属だ。

 非眷属を下に見るのはまだ許せるが。

 私達を玩具か何かと勘違いしてはいないだろうか?


「神霊王も、つくづく、モノを創る才能がないな」


 私は呟き、背後を振り返る。

 言霊王は私の『神としての力』全てを封じている。

 前方へと視線を向ける。

 簒奪王は、触れるだけで私の能力を奪い取れる。

 正しく絶体絶命。

 普通に考えたら敗色濃すぎて目眩がしそうだ。


「貴様、また神霊王様を侮辱したな……! 最早容赦はせぬ! 生き地獄の果てに朽ちるがいい、旧時代の神よ!」


 簒奪王が、私目掛けて迫り来る。

 その速度はここに来て最速。

 私は目の前へと迫った拳を前に、目を閉ざす。



 ……なぁ、神霊王。

 お前は、本当に何も教えなかったんだな。

 あるいは、教える前にこの馬鹿二人が行動を起こしたか。


 いずれにしても、私はやり返すだけだ。

 妻の心を奪われれば、父の全てを奪い返す。

 弟に部下を殺されれば、その親友(アポロン)すら殺し返す。

 万一私を殺そうとすれば。


 ――万難を排して、殺し返す。


 私は拳を握り締める。

 私の手には、変わらず銀色の光が宿っていた。


 私の力は、呪いの力。

 ()()()()()()()()()()()という、最悪の力。

 永遠に続く『Lv.1』を前に、一度は禁術へも走った。

 呪いと一緒に強さも捨てて、レベルの上がる『終焉』を得た。

 その甲斐もあって、レベルは最大値まで上がった。


 そして今、終焉という枷は、完膚なきまでに取り払われた。



「さて、往こうか」



 私は、時空神クロノス。

 世界で唯一の、()()()()()()()()()()()

 故に私は、生まれつき神の力を持ち得ない。


 私が持つのは、悪魔の力。



「――【強欲の罪】」



 銀色の魔力がさらに強まる。

 レベルが上がらず、経験値も得られず、能力も習得できず、何も出来ない。

 その代わり、私には反則の限りが与えられている。


 風がマントを強く揺らした。

 黒髪が視界の端で揺らめいて。

 私はどこぞの弟のように、楽しげに口の端を吊り上げる。



「さぁ、終幕(フィナーレ)だ。上位眷属」



 その姿は、控えめに言っても【ラスボス】だったろう。


強欲の罪(レベルが上がらないが、Lv.1でも到達者クラス)

→終焉に乗り換え、レベルMAXへ。

→終焉の消失、レベルMAXのまま元の力を取り戻す。

→現在。


さぁ、今作最高のインフレが始まりました。


次回【強欲の罪】

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
― 新着の感想 ―
[気になる点] 質問があります! クロノスが禁術『終焉』を神霊王さんに教えてもらったのは、何時でしょうか? サタンを瞬殺した時はまだ、強欲の罪を使っていたのでしょうか? 古代王国篇で時空神としてのク…
[気になる点] 読み返してて気になりました! クロノスが元から神の力を持たなかったってことは、白夜が時空神スキルを取るまで時空神の座はずっと空席だったってことですか? もしクロノスが元々時空神の座にい…
[一言] 強欲の罪=混沌だったとは、思わなかった!ていうか、チート過ぎない?!ギンと戦っても勝てるんじゃね?
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