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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第二席 帝国編Ⅱ
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失-17 上位眷属

多忙につき、2話目と他2作の投稿は遅れます……。

 私が違和感に気づいたのは、何時だったか。

 その女が姿を現して、それを【空亡】だと確信した。

 その事に、いつからか違和感を覚えていた。


 かつて、世界最強だった大悪魔。

 七つの大罪スキルも持たず、純粋な戦闘能力、戦闘技術だけで頂点を取り、一時は神王ウラノスをも打ち負かし、撤退へと追い込んだ。

 あの神王ウラノスに、唯一『黒星』を付けた非眷属。

 それこそが空亡。

 故にこそ、()()()()()()()()()()()()


「誰かは知らないが……お前はどうやら、その女を舐めているらしい。世界最強とは伊達ではない。神や悪魔、果ては眷属をも打ち負かし、あらゆる外敵から悪魔という種を守り通した原初の悪魔王。……そんな怪物を、あの獄神が何の策もなしに出すはずがない」


 例えば……そう、強さを封印するとか、な。

 私は、視線の先の【誰か】を睨み据える。

 赤髪に、青い瞳。

 空亡の身長は二メートル近くある。にもかかわらず、この女の身長は私と大して変わらない。おそらく、百七十程度だろう。

 極めつけはその武器だ。

 空亡は拳で殴るか大剣で叩き潰すか。どちらかしか脳のない筋肉女だ。そんな女が……ハルバード、等と。


「――ッ!?」

「笑わせてくれるな……反吐が出そうだ」


 一瞬で奴の眼前まで躍り出ると、その顔面を殴り飛ばす。

 ふと、違和感を覚えて拳を見ると……ふむ。何だか違和感があったな。驚いて見れば『自称空亡』は両腕を防御にまわし、一撃を防いでいた。


「ふむ。まぁいい……黙って立っていろ。今殺す」

「な、何を……何を言っているクロノ小僧! 何を血迷った……私は空亡! 紛れもない本物だ! その証拠に――」


 その女は焦りを浮かべて喚き出す。

 私が初めて攻勢に出たことで、会場内は大いに盛り上がっている。

 だが、私の事情を知る数名――ギルやサタン、そしてアスタロトに至っては難しい表情でこちらを見つめるばかりであった。

 そんな中で私は、ふっと笑った。

 冷たく、鋭い笑みを浮かべた。



「――黙っていろと、言ったのだが?」



 私の言葉に、その女は言葉を詰まらせた。

 私は言ったぞ、殺すとな。

 何をしたかったのかは、分からない。

 だが、貴様は空亡の姿を騙り、私へと近づいた。

 ならば私は……貴様を【敵】と仮定する。

 首輪の影響か……。仮定だけでは七割八割程度しか力は使えないようだが……それで十分。並の相手ならば打ち倒せる。


 ただ……問題は、この相手が【並】ではなかった場合だ。


「く、ふ、フフフフフ……。あら、バレちゃってるみたいね」

「……どうやら、黙る気は無いようだな」


 自称空亡の口調が、先程と一変する。

 どころか。その雰囲気までもが変化する。

 私が『記憶の中からそのまま飛び出してきたような』と感じた彼女はもう居ない。何故そう思ったのかも理解できないほど、空亡とは相反する女がそこには立っていた。

 その髪は毛先まで炎のように紅く。

 その瞳はどこまでも青い空のよう。

 スレンダーな体格に、その手にはハルバード。

 ……まるで別人。

 何故、今までこんな女を空亡だと勘違いしていたのか。

 そう考えると、自ずと【正体】については察しがつく。


「一つ聞く。何が目的だ」

「……あら、誰だ、とは聞かないのかしら?」


 女の質問に、私は薄く笑った。

 ……今の私は、弟との戦闘でレベルが大幅に上がっている。

 つまり、炎魔神イフリートと戦った時よりも遥かに勝る、ということだ。

 そんな私に対し、これだけの期間に渡って正体を隠し続けた。……そんなことが出来る存在は、私は【非眷属】の中では誰も知らない。


「――神霊王の【眷属】……それもかなり高位と見た」


 私の言葉に、女は嬉しそうに笑った。

 気がつけば、ギルとサタンが混沌の隣までやってきていた。

 困惑に包まれる会場内と、あらゆる言い訳を総動員させて観客達の避難を始めるアスタロト。そんなざわめきの前で、女は恋する乙女のように頬を染めた。


「ええ、ええ! 分かってしまうのかしらね! そうよ、私は神霊王様の上位眷属ぅ! あの美しくて、格好よくて、可憐で、華々しくて、最高に儚く強い! 誰よりも、他のどんな概念よりも素晴らしいお方の血統! 我が血肉は生まれた頃よりあの方のもの。言葉を発するより先にあの方へと捧げたもの! ならば、この身はあの方と言っても過言ではないわ! ならば分かってしまうのでしょうね! 私の体にはあの方と同じ魔力が流れているのだから! あぁ、そう考えただけで体が火照る、興奮に包まれてしまう……!」

「……おい混とーークロノス。本当にコレが眷属なのか?」


 俺の知っているヤツとは別物だが。

 そう続けたのは隣のギルだ。彼は警戒を滲ませながら女を睨みつけている。……確かに、ギルからすれば眷属=イフリートのような感覚だろう。

 だが、私からすればイフリートこそが異端。

 眷属は皆、異形でこそあれ『人の形』を保っている。

 太古のギシギブルもそうであったし、巨大であれど、悪鬼羅刹とてれっきとした人型だった。最初から人の形を保っていないイフリートの方が珍しいというもの。


「深く考えるな。常軌を逸した神霊王への愛。……疑う余地はないだろう」

「愛……愛ですって!? 私の気持ちが、そんなチンケな言葉に収まるとでも思っているのかしら!?」


 私の言葉に、その女は激昂した。

 一体、どういう発言が爆弾になるかも分からない。

 これだから眷属は嫌になる……。あのウラノスがわざわざ労力をかけてまで駆除していたわけだ。これは厄介極まりない。


「なんという不遜! なんという無礼! 神霊王様が【あの男】を殺す前座、と言った意味がよく分かったわ……! お前は殺すべきだ、殺して、殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺し殺っ殺して殺す殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺……ッ! 殺すわぁっ!」

「……イカレてますな」


 サタンの言葉に頷き返し、私は拳を握る。

 女は髪を振り回し、頭を掻きむしりながら叫んでいる。

 まさしく狂気、一周まわった愛は見るに堪えない。満面の笑み、満面の狂気を浮かべて私を見たその女に、腰の剣を抜き放つことで答えた。


「サタン。お前は……まだ傷が癒えて居ないだろう。民衆の避難と保護へ回ってくれ。いくら地獄の大公爵アスタロトとはいえ、一人では手が回らんだろう」

「貴方様は……聞くまでもありませんでしたね。承りました」


 サタンは私の心配など一つせず、後方へと駆けてゆく。

 その光景を見送った私は、隣にいたソイツへと視線を向ける。


「お前も逃げるか? 低位眷属にボコられた男よ」

「抜かせ雑魚。【(ぼく)】にボコられた負け犬がよく吠える」


 ギルはそう笑うと、両の手に大鎌を生み出した。

 ――アダマスの大鎌。

 ……ふっ、懐かしい武器もあったものだ。

 再び前方へと視線を向けると、女は先程の表情から一点。まるで憑き物が落ちたような無表情を浮かべている。


「えっ、逃げるの? そして……何? 神霊王様が眷属の私を前に……なに? なんで話してるの? 不敬って言葉知らない? もしかして……神霊王様のこと、舐め腐ってるのかしら?」

「黙ってろ雑多。神霊王……? 知らんな。どこの雑魚だ?」


 ギルの挑発に、女はキョトンと目を丸くした。

 されど、すぐに清々しい笑顔を浮かべて。



「よし、ぶっ殺すわね」



 その瞬間、凄まじい魔力が迸る。

 その総量は……笑えてくるな。()()()()()()()()だ。


「……死んでも責任は取らんぞ」

「死ねば諸共だ。安心しろ、その時はお前も一緒に死ね」


 何を安心すれば良いのだろうか。

 思わず苦笑する私を前に、女は名乗る。



()()()()1()6()()! 我が名【言霊王セイズ】! 神霊王様が眷属であり奴隷であり血統でもある者! 冥府の土産に私の名前を覚えていきなさい!」



 星の数ほど居る眷属の中の……16位。

 つまるところ、正真正銘の化け物だ。


「……これは、全盛期のウラノス案件だぞ。クソッタレが」


 私は呟き、剣を構える。

 同時に、言霊王セイズは襲いかかった――!



やっと登場、上位眷属。

今月の二話目は多分、一週間以内には出すと思います。

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