第56話
ちなみにギルドカードには討伐履歴が記録されます。これを見て報酬を渡すわけですね。
指名依頼。
まぁ、簡単に言えば、
『有名冒険者である所の◯◯さんに、是非この依頼を受けていただきたい。報酬はめっちゃ払いますよ?』
という事だ。
因みに指名依頼の場合、冒険者側は滅多なことが無い限り、それを断ってはいけないらしい。
───まぁ、報酬の取り分が大きいから、その分ギルドも必死なのだろう。
「それで? 僕ってまだ、依頼すら受けたことないんですけど?」
最初の依頼が指名依頼だなんて、一体どんな了見だ?
しかもこの僕に指名依頼とか、その依頼主も大概だな。
まぁ、討伐系なら全然いいんだけどさ。
「あ、あははは、こ、今回は依頼主たっての希望で『このギルドで一番強いヤツを寄越せ』との事ですので......」
「.........まさかお偉いさん?」
「はい......隣街の領主様ですね」
「............」
はぁ、貴族かよ......。
凄く行きたくなくなってきた。
「因みに内容は、数ヶ月前に隣街近辺に生息し始めたバジリスク(AAA)の討伐ですね......」
「......確かAAAって、小国の全軍隊にも匹敵するレベルだよな? なんで今の今まで救援無かったんだ? 下手すりゃ国の危機だぞ?」
まぁ、このギルドには僕以上の化け物がいるから問題はないと思うけれど...。
「はぁ、簡単に言えば、『倒して自分の手柄にしたかった』っていうことだと思いますよ? まぁ、パシリアの領主さまと違って、面倒な方の貴族さまです」
......尚更行きたくなくなってきたぞ?
ソイツと会ったら喧嘩する気しかしねぇし......
『ふん、こんな子供に討伐出来るわけがなかろう』
『討伐したじゃと!? 嘘を抜かせぃ!』
『貴様っ、我は伯爵であるぞっ!?』
『平民風情がッッ!!』
たぶん、こんな感じになる。
「因みにその街の方向と報酬はどれくらいだ?」
そもそも僕は、奴を捜索しないと行けないわけだし、そんな領主の事だから報酬もけちっているのだろう。
そんな事を思って聞いたのだが、
「えっとですね、方向はあちらでの方で、報酬は......」
☆☆☆
「って言うわけで、今隣街に向かってるから」
(いや、全然理解出来なかったんだけど)
今現在、僕は隣街であるビントスへと向かっている。
翼だけを戻して高速飛行中だ。
まぁ、馬車で三日の距離だけれど、今の僕なら一時間くらいだろうか? まぁ、夜ならもっと早いんだがな.....
ちなみに、何故依頼を受けたのか、と聞かれれば、僕はこう答えるだろう。
「たまたまアーマー君の居場所と方向同じだったし、報酬額が......ねぇ?」
(.........幾らだったの?)
「......200万G」
(さすがマスター! やっぱり受けて正解だったね!)
(うむ! これで美味しいものたくさん食べられるのじゃっ!)
どうやら二人とも賛成のようだった。
うん、お金は大事だよね!
「それじゃ、レオンの事は任せたぞ? なるべく瞬殺して帰ってくるつもりだけど......」
(まぁ、太陽の下だからねぇ......)
......うん、きっと楽には勝てないよね。
少しニヤニヤとしてしまった僕でした。
☆☆☆
一時間後。僕はビントスへと到着した。
門の近くに着地してしまったために、門番の人たちとひと問答あったのだが、まあ、それ以外は順調だった。
あぁ、そう言えば。途中でワイバーンっぽい奴らの群れが襲いかかってきたこともあったか?
なんだか弱くてびっくりしちゃったよ。
恭香が居ないためやり放題のギンであった。
まぁ、そんなこんなでギルドについたわけだが......
「やっぱこうなるか......」
全員が目を見開いてこっちを見て来てくる。
......何処かで見た状況だな?
まぁ、フード被ってるし、驚いているのは髪の色じゃなく、服装について、なのだろう。
まぁ、こんなに悪目立ちすると、奴らがやって来るわけで
「おいおい、ここはてめぇみてぇな餓......ぐはっ!?」
瞬・殺
「兄貴っ! テメェ、良くもやりが......ひでぶっ!?」
「ちっ、てめぇらっ! やっちま...グぽらっ!?」
「ちょ、なん...くばっ!?」「て、てめ...ガはっ!?」
「い...グがっ!?」「た、たす...ぐへでッ!?」
中略。
「あ、悪魔...ぐぷるぼァっっ!!」
ちょっとばかし面倒だったので、マップで赤いマークがついている奴らは全員潰しておいた。
その間およそ五秒。
はぁ、やっぱ日中はダメだな、せめて二秒で行きたかった。
でも、まぁ、流石に急いでるとはいえ、やり過ぎたかな?
そう思ってあたりを見渡したのだが、何故か全員が満面の笑みを浮かべていた。
───あぁ、きっとコイツら、向こうでのアーマー君みたいなものなんだろう......
ふっ、僕はまたひとつ、街を救ってしまったようだ。
閑話休題。
「すまない、バジリスク討伐の依頼を受けた者なのだが、そいつはどこにいるのか教えて貰えないだろうか?」
受付の女の子にそう尋ねる僕。
最早、敬語など必要なかった。
───気持ち悪いって言われたしね......
あぁ、ちなみにその少女はピンクの髪をサイドテールにしていた。......何だか縁がありそうだな。
ロリッ子だし、ピンク頭だし。
「あっ、は、はい! 少々お待ちくださいっ!」
顔を赤らめてそう言う受付の少女。
もしここに恭香がいるなら、
『流石はマスター、ロリコンだね』
とでも言ったのだろう。
───なにせ相手は幼女寄りの少女だったのだから。
だが、彼も狙ったわけでは無かったのだ。
ただ、考え事をしながら歩いていただけなのだ。
その内容は、と言うと......
(おいおい、一体どんな手段使ったんだ?)
それは、僕のマップには、『ドクロ』のマークが描かれていたことについてだ。
今現在、ドクロはこの街の門から中に入ったところにある。
そして、その下にはもちろん......
アーマー・ペンドラゴン との、記述があった。
☆☆☆
彼からは全財産を没収した。
───つまりは一銭も持っていないということ。
馬車にも乗れず、装備もなく、食にもありつけやしない
にも関わらず。
その彼が、昨日パシリアを出たばかりの彼が、
馬車で三日かかるこのビントスに居る。
「......不可能だよな?」
思わずそう呟く。
思いつく可能性としては、馬車ではなく馬そのものに乗ってここまでノンストップで来ることくらいだが......
いや、やはり馬を借りる金が無い。
───そもそもあの街の人たちが、彼に何かを貸す、ということ自体が有り得ないのではないだろうか?
まてよ? なら宿屋はアイツを泊めようとするだろうか?
答えは否だ。
確実に宿にとっての損害になる。
下手したら、泊まった、という事実だけで客が来なくなるだろう。
その上、奴の全財産(武器防具含めて)があの値段だ。
それを考えると、奴は金自体を持っていなかったのではないか? という疑問が生まれてくる。
しかも、あれだけの事をやらかして死罪になっていないのもおかしい。まぁ、死罪でなくとも終身刑だろう。
金を持たず、宿にも泊まらず、もうこの街まで到着しており、死罪すらも免れる。
────まさか......後ろ盾が居るのか?
僕は、それが正解のような気がしてならなかった。
後ろ盾...とは?
次回、こちらのギルマス&領主登場!?




