機―12 新たなるロリ
新たなるロリ!
ロリといえばこの作品の番外編『Silver Soul Online』ですが、書籍化に伴うゴタゴタでほんのり遅れ気味ですすいません! お楽しみにしてくださってた方には申し訳ありませんが、近いうちに出します!
一方その頃。
捉えた凶暴なガキ――つまるところ白夜の口を割らすため、彼女の拷問係に選ばれたオートマタ『β38』は、目の前の光景を見つめて愕然と呟いた。
「り、理解不能……、な、なんだ貴様はッ!」
そう叫ぶ先には体中に無数の傷跡を作りながらも、どこか恍惚な表情を浮かべる一人の少女の姿があり、オートマタの言葉にソイツは唾を飛ばす勢いでこう叫ぶ。
「カカッ、拷問と聞いて思わず捕まってみたのじゃが……ハッ、なんたる温さじゃ、全くなっとらん! お主拷問と言う言葉の意味を知っとるのかの、このお馬鹿さんが!」
「……ッ!」
響いた声に思わず言葉を失ったオートマタへ、彼女は頬を主に染めてこう叫ぶ。
「全く……全くなのじゃ! お主がやった拷問と言えば痛み攻めに蟲攻めに飢餓攻めと言ったところかの! 一体お主の拷問ぼきゃぶらいりーはどれだけ貧相なのじゃ! もっと……ほれ! 放置プレイとか言葉攻めとかたくさんあるじゃろうが!」
「こ、困惑……、き、貴様さきほどから何を言っている!」
そう叫ぶオートマタではあったが、されど白夜の暴走は止まらない。
「お主もちょっとは主様を見習うべきじゃな! あの方ならばまず間違いなく妾の想像を絶するような、思わず『え、ちょ、さすがにやり過ぎじゃね』とか思っちゃうような壮絶極まれる苦の絶頂へと妾を誘ってくれるのじゃ! それをお主は長々と……どんだけ女の子の扱いに慣れてないのじゃ! 恥をしれぃ!」
「き、貴様……っ!」
間違ってもそんなプレイを出来る=女の子の扱いに慣れている、などと言う方式は成り立たないし、というかその『主様』もそんな扱いには慣れちゃいないのだが、実際にオートマタ故に女の子の扱いなどと言ったものからかけ離れた生活をしていた『β38』は彼女の言葉に歯噛みした。
「目隠し首輪、ぼでぃぺいんとに蝋燭あって、そこに初めて『愛』が生まれるのじゃ! それをお主、痛みを与えて蟲与えとけばとりあえずへばるだろう、みたいな考えもっとるんじゃなかろうな! 言っとくのじゃが、妾普通に虫触れる系女子じゃからそういうの全く効かんのじゃ!」
もう何言ってるか半ば分からなくなってきた『β38』。
けれどもその理解不能をあろうことか『反論できない』と錯覚してしまった彼は、目の前の少女が正しいことを言っているのだと勘違いしてしまう。
そんな彼へと満足げに鼻を鳴らした彼女は、ふんすーと自信満々にこう告げる。
「ふむ! 肉奴隷なくして男なし、と言う言葉もあるからの! そろそろ主様も妾が居なくなってさみしがってるころじゃろうし、そろそろ助けに来てくれるとは思うのじゃが……まあよい! なんか寝取れれっぽくて興奮するし、もうちょっとだけ付き合ってやるのじゃ!」
そう、何一つとして寝取られてもいないくせに妄想だけで興奮し始めた白夜をよそに――
☆☆☆
「いやー、うるさい奴いなくて何か楽だな」
僕はそんなことをつぶやいた。
うるさいやつ――まぁ、白夜とか暁穂とかエロースとかソフィアとか、ああいったちょいと頭のネジぶっ飛んだ面倒臭い奴がいないっていう現状に、ほんのり幸福感を噛み締めていた僕が居た。
ああ、ちなみに白夜が捕らえられてる云々に関してだが、よく考えたら時間停止に瞬間移動も出来る頭のイカレた到達者がつかまったままになっているのだ。そんなの冷静に考えてみたら己が意思で捕まってるとしか思えないし、というか拷問を楽しんでるまで考えられる。
「……一応仲間なんじゃなかったのかい?」
「ま、よく考えたら誰かに殺られるタマでもなかったんでね」
前を歩く金髪の女性――ドリー・ユランが振り返って問いかけ、僕はあっけらかんとそう返す。正直白夜が誰かにやられてるところとか考えられないしな、と。
すると彼女は苦笑しながらも歩き出し、僕もそれに続いて歩き出す。
場所は『影の街』、中心部。
周囲を見渡せば僕へと奇異の視線を向けてくる人々が大勢存在しており、出ることも入ることもそう多くはない閉鎖空間――ならぬ閉鎖都市において、新しく入ってきた見たこともない黒髪の男、それも彼ら彼女らからすれば常軌を逸した強さを持つ僕に対し、それらの視線は確かな好奇心とソレを塗りつぶすような恐怖に塗れていた。
「……どうか気を悪くしないでほしい。これでもアンタがうちらの救世主かもしれない、とは話を通してあるんだ……けど」
「さして根拠があるわけでもないし、信じられなくて当然だろうさ」
それに、この街を奪い返す的なこと言ってたけど、さすがに僕でも魔力なしであの軍勢に立ち向かうのは難しいだろうしな。ギシルと白夜が居ればまた話は別かもしれないが……ソレにしたってギシルがこの時代において、記憶を取り戻した際にどちら側につくのかなんてわからない。最悪あっち側についてさらに戦力差が広がることだって考えなきゃならないし――
「そもそも、僕が協力するって言ったってあの軍勢を即全滅――だなんて無理だぞ? まずこっちの要件を飲んでくれないと……」
「ああ、魔力がどうのこうのって話してたっけ」
耳がいいのか、僕がオートマタに言っていた言葉を思い出したようにつぶやく彼女。
その言葉に頷く僕の姿をドリーは舐めるようにして見定めると、どこか納得したように手を打った。
「なるほど、武器っぽい武器はもってないっぽいけどそのローブ、魔法使いってわけだね? そんでもって体術においてもかなり高位水準と来た……確かにこれはアンタの魔力について先にどうにかしておいた方が後々楽になりそうだね」
「ま、そういうこと」
流石は魔王さんのご先祖様と言ったところか。
ドリーとあの魔王さんが直接血のつながりがあるかどうかは分からないけれど、それでもかなり面影のある容姿に加え、その普通じゃない洞察力……この人物が後々の『ユラン・ロード』って可能性が高そうだ。
それに、今からしてみればあの時、ユラン・ロードから言われた言葉。
――ありがとう、と。
僕にどうしようもなく似た誰かに対する言葉だと思っていたけど、こうして今考えてみると、タイムスリップした僕が過去の彼女と邂逅し、何らかの感謝されるようなことをしでかした、とも考えられる。
ま、タイムスリップするより前にそう言われている以上、僕がどういう行動をとったところで未来は変わらない、って可能性も出てきたが、それはまた別の話。
結局のところ、僕はこの世界において未来の『ユラン・ロード』に邂逅するのだろう。
その未来に変わりなく――問題は、いつ、どのタイミングで、どうやって邂逅するか。
これから会うユランの一族一人一人がその対象となるわけだが……言っておいてなんだけど、結構ハードモードな人探しとなりそうである。
「とまあ、とりあえずソレについても後回し」
そう考えている間にも目的地に着いたのか、彼女は立ち止まってそう告げる。
僕もまた立ち止まって前を見れば、そこには小さな一軒家が佇んでおり、その一軒家を見上げる僕を振り返った彼女は、くいっとその家を親指で指し示し、笑ってこう告げる……のだが。
「アタシの家だ、今日からアンタもここに住みな」
――何故か、金髪美女との同棲が始まりそうな流れになっていた。
☆☆☆
「お兄しゃんだーれぇ?」
家の中に入って、一番最初に目に付いたのは幼女だった。
出会った当時の恭香よりもさらに幼い、それこそ幼稚園に入って間もないくらいのガチロリっ子。
しかしながらその容姿は非凡極まりなく、金色の髪に紫色の瞳というドリーや魔王さんとどこか似通った容姿を持っており、なんとなくドリーさんの血縁ではなかろうかと彼女へと視線を向ける。
するとドリーさんは目の前の幼女の両脇に手を入れて持ち上げると、椅子に座った自らの膝の上へとその幼女を座らせた。
「この子は私の妹でね、ほらロウリィ、ご挨拶は?」
「はーい、わたしロウリィ! 四しゃいです!」
「おお、四しゃいかー」
名は体を表すとはまさにこのこと。
魔王さんをそのまま子供にしてぺったんこにしたようなその幼女。
穢れを何も知らないとばかりの済んだ瞳に、だんだか心がほんわり温かくなってくる。
そんなローリー……じゃなかった、ロウリィを前に相好を崩す僕になぜか怪訝そうな顔を浮かべたドリーは、頬を引きつらせてこんなことを言ってくる。
「……出会って一番の笑顔なんだけど……アンタってもしかしてロリコ――」
「じゃないからな、言っとくけど」
毎度毎度、どこでどんな幼女と出会ったところで僕に付き纏ってくるロリコン疑惑。
いやね、確かにメインとなりつつあるヒロイン二人がロリってるのは分かってるよ。他にも影ながら熱狂的なファンがいるキャラが大体ロリキャラだってのも分かってる。ゼウス然りグレイス然り魔王さん然りシロちゃん然り。加えて最近新しいギシル入ってきたし。
が、だからと言って僕までロリコンがどうのこうの言われても困るんですよ。
「ねえドリーさん」
「ねえとか言われても分からないけど……妹に手ぇ出したら捻り潰すよ?」
何を? なんて野暮なことは聞かない。だって怖いから。
なんだか剣呑な目つきをし始めたドリーさんをよそに、不思議そうな瞳で僕を見つめているロウリィちゃん。そういえば自己紹介がまだだったな、ということで僕も改めて自己紹介を。
「ということで、改めましてギンって言います。こんなナリですけど二十代半ばのオッサンもどきです」
「にじゅ……っ!? あ、アンタ、どっからどう見ても十代前半でしょうが……!」
僕の言葉にドリーが声を上げたが……残念ながら本当なんだよなあ。
物語始まった当初とか、僕まだ十八歳だよ。世間の嫌なことなんて何も知らない(知ってたけど)ピッチピチの大学一年生ですよ。それが今やなんだかんだで二十代半ば……あと五年、十年もしないうちに作品のキーワードの中に『おっさん』とか追加されててもおかしくない年齢である。哀しい限りだが。
「じゃあ、おっしゃん?」
「はっはっはー、……お兄ちゃんでお願い」
「……? じゃあ、お兄しゃん!」
何だか一撃で僕のヒットポイント九割くらい削ってきたロウリィ。混沌には悪いが今の一撃、お前が最終決戦で使ってた、ちょっと名前忘れたけど最終奥義とおんなじぐらい威力あったぜ。
そんなことを内心考えながら僕も近くにあった椅子に腰かけると、改めてドリーへと口を開く。
「……で、僕の用事は後々にこの世……この街に来るであろう二人の仲間の確保。今捕まってる奴はどうせこの街取り返すって段階になったら自ずと脱獄してくるから問題ないとして……それともう一つが、さっき言ってた魔力が使えない、って問題を解決することなんだ」
ついでに言えば『元の世界に戻る』ってのもあるが、さすがに『タイムスリップしてきました』とか言っても信じられないだろうし、そこらへんはとりあえず全部解決して、そっから恭香だったり白夜だったりと協力して何とかしてみるつもりだ。
そう考えながらも『魔力が使えない』って言葉に首を傾げたドリーに対し、試しにということで指先に魔力を集めてみる。
すると集まった魔力が制御を振り切り暴走、小さな爆発を起こし、それを前にドリーが大きく目を見開いた。
「な、なんだいその摩訶不思議な現象は……新しい魔法? いや、爆裂魔法ってのが既にあるし……それにしては威力が低い。……なら、魔力の暴走?」
あっという間にその結論にまで達して見せたドリー。
僕もいろいろと調べてみた結果、この現象が『魔力の暴走』だってとこまでは何とかたどり着いた。
が、問題はそこから。
何故、どうして、どうやったら治るのか。
その三つがどうしてもわからないのだ。
「……なんとか分かりそうか?」
「……正直、見たことも聞いたこともない現象だね。表に居た間は図書館勤めだったから、世界中の情報はある程度頭に入ってるはずなんだけど……」
それでも見たことがない、と。
なんだか想像以上にこちらも厄介なことになりそうだな、と考えていると、彼女の膝の上から脱出したロウリィが僕のもとまで駆け寄り、元気いっぱいにこういった。
「お兄しゃん! 魔力しゃんにわがまま許しちゃ、めっ、だよ!」
「……お、おおう……なんかごめん」
とりあえず何言ってるかわからなかったけど、とりあえずそう返す。
見ればドリーは恥ずかしさから真っ赤になっており、対するロウリィは自信満々に胸を張っている。
彼女――ロウリィに言われたことはともかく、確かにいつまでたっても魔力が使いこなせないってのはいただけない。
「……ま、近日中には何とかしたいね」
僕は解決策が浮かばぬまま、ため息一つそう呟いた。




