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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
いずれ最強へと至る道
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いずれ最強へと至る道

600話!

 辛く、険しく、厳しく、果てしない道。

 この果ては、どこに繋がっているのだろうかと。

 そう、思わなかったといえば嘘になる。

 果たしてこの先には何があるのだろうか。

 地獄のような、延々と続くこの道。

 その果てには、どんな光景が待っているのだろうか。

 そう考えて、『最強』の姿を思い出す。

 果たして彼女は何を思い、何を考え、自らを倒す存在を作り上げたのか。

 ……正直、理解が出来ない。

 理解できないからこそ、知識欲が湧いてくる。

 知りたい、その感情に触れてみたい。


 ――最強の座から見れるその景色を、見てみたい。


 どうしようもなく、その『欲』が溢れ出してくるんだ。




 ☆☆☆




「ど、どどど、どうなったんだ……?」


 久瀬竜馬の心配げな声が病室に響いた。

 その視線の先には椅子にちょこんと座るグレイスの姿と、片目の力を久瀬へと運命眼の力によって譲渡したレイシアの姿があり、二人が無事であることに安堵しながらも、久瀬はその疑問を止められなかった。


「ギルは! アイツは……皆はっ!」

「お、落ち着くぞよ久瀬竜馬……」

「全員生きてる、安心してくれ」


 二人にそう告げられたことにより安堵したのか、彼は痛みに顔を歪めながらも体をベッドへと横たえる。


「あの男曰く、貴様の傷は特殊な魔力でつけられたものが多かったそうでな。特に脚と目だけはどうしようもないとのことだったが……」

「……あの男?」


 そう呟いて――ふと、脳裏にある男の背中が過ぎった。

 そして直後に思い出すのは、『全員生きてる』というレイシアの言葉。

 それらを思い出して、ふっと久瀬は笑みを浮かべる。

 ベッドへと日差しを届ける窓の外へと視線を向けると、そこにはどこまでも蒼く広がる空と、そして元気に飛び回る白い小鳥の姿が見えた。


「――敵わない、なあ」


 そう、しみじみと呟く久瀬をみて、思わずといった風に視線を交差させたグレイスとレイシアは、互いにクスッと笑みを漏らす。

 その笑みに何を感じたか、ピクリと反応を示し、困惑に満ちた視線を二人へと送る彼へと、レイシアは『んんっ』とわざとらしい咳払いで話を切り込む。



「――なあ久瀬竜馬。ギルドマスター、という職業に興味は無いか?」




 ☆☆☆




「あああああああああ!! 全然かなわなかったじゃんっ!!」


 桜町穂花は叫んだ。

 ベットの上で仁王立ちする彼女を見上げるのは、それぞれベットの上で上体を起こすアーマー・ペンドラゴン、そしてゼロであり、二人は限界までひきつった苦笑いを浮かべながら彼女からツーっと視線を逸らした。


「……ま、まあ、アレじゃないですか?」

「そ、そうですよ、今回は相手が悪すぎたというか……」


 そうなんとか荒れ狂う珍獣をなだめようとする二人ではあれど、その珍獣こと穂花に止まる気配は垣間も見えない。


「相手のせいにしちゃだめさ! 僕達が弱いから負けた、詰めが甘いから負けた……っ! むき――ッ! でもなんかギルの最後のしたり顔思い出したらイラッとくるうううう!」


 そう頭をかきむしる穂花に苦笑で返したゼロは、ふと、弟のアイクがたまたま耳にしたというその事実を口にした。

 ――否、口にしてしまった。


「そう言えば、ギルさん孤児院で働き始めたみたいですね」


 途端、気がつけばゼロの目の前には穂花の顔面が迫っており、そのキラッキラと光り輝く瞳を見て、ゼロは初めて自らの失策を思い知る。

 けれどもそんな後悔など知る由もなく、穂花は満面の笑みでこう叫ぶ。



「――何それ面白そう!」



 この後、早速見に行こうと言ってきかない彼女を二人がなだめるまでに、小一時間はかかったとかいう話である。




 ☆☆☆




「ざったざったー!」

「きゃはははー! ぎるざったー!」

「やったなー! ぎるざったー返しだー!」

「ぎゃーー! ざったざたにされるー!」


 ギルザッター、なる必殺技で遊ぶ子供たちを眺めながら、エルザはふと隣に佇むその男へと視線を向ける。


「ギルザッターさん、今日のお昼御飯の当番、ザッターさんじゃありませんでしたっけ?」

「おい雑多。お前俺のこと馬鹿にしているだろう」


 そう返した白髪の男――ギルは、小さくため息を漏らしてそう返す。

 けれども逆らう気は無いのか、スッと時計へと視線を向けたギルは、アイテムポーチへの中から白いエプロンを取り出した。

 そのエプロンには子供たちの落書きが無数に描かれており、なんともまあ、かつて世界を滅ぼそうとした悪役とは思えない格好である。

 そんな百戦錬磨の眼光を煌めかせるその男は、近くの井戸水で手を洗うと、白いエプロンで手を拭いながらも食糧保管庫へと足を運ぶ。

 そこには相も変わらず必要最低限――というか、足りないんじゃないかとしか思えない少量の食材が入っており、それらを見渡したギルは小さくため息を漏らす。


「おいエルザ、この街のギルマスはレイシアだったな。後に冒険者登録に行く、連絡しておけ」

「あらあらまあまあ……あのザッターさんが冒険者だなんて。ギンさんのランク上昇最短記録を破る気満々じゃないですか」


 その言葉に『その手があったか』とニタリと笑みを浮かべたギルではあったが、けれども彼が狙っているのは冒険者家業の道中で狩れる魔物の肉、そして金である。

 ――この孤児院は、慢性的に金不足である。

 故に子供達もおなかいっぱいのご飯を食べるということを今だ知らず、それを頭の片隅で問題視していたギルは、今に至ってやっと解決に動き出そうとしていたのだ。

 が、それについても今は後回し。

 保管庫の隅からジャガイモの入った箱と、そして棚から少量のチーズを取り出したギルは、スッとアイテムポーチの中からオークの肉と香辛料を取り出した。


(……チッ、あの男が死んだ時点のアイテムボックスがそのまま譲渡されているのは癪だが……)


 背に腹は代えられないと、そうキッチンへと無数の食材を並べてゆくギル。

 彼はエプロンをしっかりと結び直し、フライパンを右手に、フライを左手に構え、ギラリと紅の瞳を輝かせる。

 その姿に微笑みを讃えるエルザを前に、ギルは口角を吊り上げてこう告げる。



「――さあ、正義を執行しよう」



 この日、孤児院の子供たちは生まれて初めて、おなかいっぱいの美味しい料理を平らげることとなったのだとか。




 ☆☆☆




「ハッハッハー! 俺に負けたからって落ち込むなよなー!」


 満面の笑みでそう声を上げるのは色素の薄い紫髪の青年、アルファであった。

 視線の先にはベットの上で状態を起こすサタンの姿があり、彼は苦虫を噛み潰したような表情で視線をそらす。


「……落ち込んでなど、いない」

「お? なんだなんだクソ悪魔? 声ちっちゃくて分かんねぇぞ?」


 ほれほれと寄ってきたアルファに握り拳を震わせ、悔しげに唇を噛み締めるサタン。

 その姿を見ていたアルファは満足げに鼻を鳴らすと、自分に宛てがわれたベットの上へと腰を下ろした。


「んで、まともな話こっからどうすんだよお前ら。悪魔ってよく知らねぇけど嫌われてんだろ?」

「嫌われてる……か。まぁ、確かにそうだな」


 そう呻くように呟いた彼は、スッと窓の外へと視線を向ける。


「まぁ、アテはある」


 ――アテ、と。

 そう呟いた彼の背中へと、それが何かと問おうとしたアルファは――ふと、病室の外から猛烈な勢いで駆けてくる何者かの気配に気が付き、ガバッとドアへと視線を向ける。

 次の瞬間、病室の前までたどり着いた『ソレ』は大きく扉を開き、その姿を見てアルファは愕然とこう呟いた。



「な、なんだ……、この謎生物は……ッ」



 ――そこに居たのは、シロクマだった。

 あきらかに着ぐるみ臭が漂ってくるチープな骨格に、もさもさとした白い毛皮、そしてくりんとした黒い瞳。

 正しくシロクマと言った感じのその謎生物は、きらんっと瞳を輝かせてこう告げる。


「さぁお久しぶりですサタンさん! ペンギンの着ぐるみが根源化でぶち飛んだため、シロクマにニューチェンジ! アスタ改め、タロトとして新生した私ですとも!」

「……もしかして、アテってこれか?」


 恐る恐ると言った様子で目の前のアスタ――改め、タロトを指さしたアルファがサタンの方へと視線を向けると、物凄く嫌そうな表情を浮かべたサタンは額に手を当てため息を漏らす。


「……悪魔のほとんどは五つの大悪魔の迷宮内へと避難を済ませている。生憎と迷宮難易度はそれなりにあるらしいのでな。大悪魔達と仲良くやらせるさ」

「そしてサタンさんは人質として私の店で強制労働! さぁ、せかせか働いてもらいまっせー!」


 その言葉に何だか同情心が溢れ出してきたアルファは、スッとサタンの肩へと手を乗せる。

 そして、一言。



「――まぁ、お前も……頑張れよ」



 シロクマと悪魔のような形相をした巨漢。

 二人で新しくスタートする万屋(兼パン屋)がその後どうなるのかは、現時点においてはまだ誰も知らない。




 ☆☆☆




 その日は、どこまでも続く蒼空が広がっていた。

 木の葉が風に揺れ、涼やかな風が肌を撫でる森の中、草木を踏みしめる音だけが響いていた。


「……全く、不便な体になったものだ」


 そう呟き、彼女は首元に付けられたチョーカーへと視線を落とす。

 ――第三神器・制約のチョーカー。

 ケリュネイアの角とブラッドメタルを用いて作られた封印のチョーカー。それを元にしてある男が作り上げた神器。

 その神器は他でもない彼女自身が受け入れたものであり、その力は単純にして明確。

 使用者と制約を交わし、その制約の適用内において被使用者の力を封じるというものだ。

 もちろん、壊そうと思えばいつでも壊せる。

 けれども、これをしていなければ見えない景色があるのもまた確かなことだ。

 そしてこの【一人旅】は、その景色を見るために始めたことなのだ。


「きゃあああああああああっ!?」


 女性の悲鳴が響き渡り、鼓膜を震わせたその悲鳴に彼女は周囲を見渡した。


「……こっちか」


 呟き、走り出す。

 その速度は間違っても早いとは呼べないものではあったが、それでも現場は比較的近くだったのか、走って数十秒で小さな馬車道へと飛び出した。

 視線を巡らせる。

 すると彼女からして右前方、質素ながらもどこか気品を感じさせる馬車を、汚れてはいるものの上等な装備に身を包んだ男達が囲んでいる姿が確認でき、それを見た彼女は迷うことなく駆け出した。


「おい貴様ら、何をしている」


 凛と、冷たい声が響く。

 その声に振り返った男達は気配もなく現れた黒いフードを目深に被った彼女に大きく目を見張ったが、けれどもすぐにいやらしい目付きに変わると、錆び付いた剣を抜き放ち、彼女へと余裕を見せながら歩き出す。


「おいおい嬢ちゃん? 見てわかんねぇのか、盗賊だよ盗賊ぅ。貴族の馬車が通ったから襲って犯して売りさばこうってんだ」

「ま! 俺たちゃ戦争が面倒で冒険者ギルドから追われた、力のある方の盗賊だがな!」

「ぎゃはは! そんなのも分かんねぇとか、どっかの貴族のボンボンなんじゃねぇのか!?」

「確かに! ついでだついで、そいつも捕まえて売り払っちまおうぜ!」


 盗賊たちがフードの下から覗く整った顔立ちに色めき出し、それにを見た彼女は目に見えて呆れたように顔を歪めた。

 次の瞬間、ぶわりと彼女の体から黒いオーラが溢れ出し――そして一言。



「――なるほど、貴様らは『悪』か」



 ――瞬間、黒い魔力が迸る。

 禍々しい、としか言いようのない魔力。

 けれどもどこか、美しく澄んだ魔力だった。

 それらは一瞬にして盗賊たちを飲み込み、喰らい、装備を残して悲鳴もなく、盗賊たちの姿が消え失せる。

 その一瞬の出来事を見ていた馬車の護衛騎士達、そしてその場者に偶然乗り合わせていたエルメス王国第三王女、アメリア・フォン・エルメスと数名の貴族達。

 彼ら彼女らの前でそのフードを取って見せた彼女は、短く切りそろえられた黒髪を掻き上げてこう告げる。



「すまん。金がないから助けてくれ」



 彼女――混沌に課せられた制約はただ一つ。

 それは、正義に対する攻撃の禁止。

 つまりは、悪に対する絶対的な執行権だった。




 ☆☆☆




 瞼を閉ざせば鮮明に思い出せる。

 姉との喧嘩、交わる拳、そして僕らを飲み込んだ巨大な爆発、そして死後に見たちっぽけな夢。


「……さて、と」


 呟き、ソファーの背もたれに体を預ける。

 世界は、ほんの少しだけ変化を見せた。

 未だ多くの不幸の上にちっぽけな幸せなが成り立っている、という根底の部分は変わりない。

 それでも、少しずついい方向に変わってきてる。


 悪魔達はダンジョン内にてバルべリス、アザゼル、ラーヴァナの三人をリーダーとして避難を済ませており、少しずつ、少しずつでも『表』に出られるよう各国と対談を続けている。


 かつてのこの世界を救おうとした英雄はその報酬としてEXランク冒険者の座を得、それと同時に負傷により引退。エルメス王国、王都に位置する冒険者ギルド本部のギルドマスターとして就任した。


 かつてこの世界を救おうとしたもう一人の英雄は幻影の王に拉致され孤児院の副院長へと就任。経営難により冒険者と副院長の二足のわらじで働いているらしく、僕の持つ最速ランク上昇記録を見事打ち破ってくれたらしい。


 かつての世界を滅ぼそうとした姉は、旅に出た。

 僕の作り上げた第三神器を首に、正義とは何かを探す旅に出た。いつ帰ってくるのかなんて分からないし、どこに行ったのかも分からない。ただ、以前よりはマシになったことだけは確かだと思う。


 世界は、少しずつ変わり始めてる。

 もちろんソレが孕む『闇』は未だ多く、僕ら単体の力じゃどうやったって晴らすことなんて出来ないけれど。

 それでも、ほんの少しでも変えることが出来れば。

 それはきっと、意味のあることなんだと、僕は思う。


「……で、ギンはどうするの?」


 ふと、正面のソファーに座っている彼女が問うた。

 久瀬は表から世界に関与し。

 ギルはより多くの子供達を救うことを心に決め。

 混沌は裏から世界を支えると豪語し。

 そして僕は――


「……どう、するかな」


 そう呟き、天を仰ぐ。

 色々終わって、気が抜けているというのはある。

 今の今まで僕の体中を雁字搦めに縛り付けてきた『因縁』という鎖が砕け散り、やっと【終幕(ハッピーエンド)】へと辿り着いたのだ。

 だからこそ思う、僕はここからどうしたいのか。

 とりあえず、目先の目的は完遂した。

 ならば恭香との約束を果たすべきか、とも思ったのだが――



「――まだ、違うよな」



 そう呟き、正面の恭香へと視線を向ける。

 すると彼女はむくれたように頬を膨らませ、ぷいっとそっぽを向いてしまう。


「……楽しみにしてたのに」

「僕をロリコンにしたいのかお前は」


 そう苦笑して立ち上がると、ソファーに掛けてあったローブを羽織り、使い古した小さなバッグを手に取った。

 そもそも大陸では十五歳で成人だ。

 対して彼女はまだそれに満たない。郷に入っては郷に従え、という言葉もあるわけだし、まだその時ではないということだろう。

 その言葉に見るからにむくれ始めた彼女に苦笑すると、彼女の側まで歩を進め、その頭を軽く撫でてやる。


「……僕はさ、その景色を見てみたい」


 その景色。

 それは、最強(イブリース)が見ている景色。

 彼女は何を思い、何を見て、何を成したいのか。

 全てを超越する力を持った、その座から。

 一体、どんな景色が見えるのか。

 知りたい。触れてみたい。

 どうしようもなく、その想いが溢れてくる。


「……それが、ギンのやりたい事なの?」

「うーん……どうだろうな」


 問いかけられた言葉に、顎を撫でながらそう唸る。

 それがやりたい事なのだとすれば、僕は修行大好きの戦闘狂に成り下がる。それは何かアレだろ。他の戦闘狂共とキャラがかぶるからちょっと違う。

 だから、やりたい事じゃなく、目標にする。


「どれだけ時間がかかっても、その途中で何があったとしても、最終的には辿り着く。僕の最終目的がそれなだけで――だから今は、『やりたい事』を探しに行く」


 僕のやりたい事。

 どんなことだって別にいい。

 ちっぽけな職業だって別にいい。

 ただ、世界を見て、色んなものを体験して、そんでもって、これをしたいと思えたことに、人生賭けて挑んでみたい。

 イブリースとの決着はその後だ。やりたいことやって、目標も叶えて、全てを手に入れる。

 百年以内に、したいこと全部叶えてみせる。


「傲慢だね……」

「傲慢じゃなきゃ僕じゃないだろ」


 そう苦笑した僕は彼女へと視線を向けると、スッと右手を差し出した。

 正直、これからも辛いことたくさんあるだろう。

 これまでの色々が『序章』に思えるくらいのたくさんのことが起きると思う。だから、僕の隣にいるってのはそれだけで苦労が耐えない、言うなればハズレの立場だ。

 けれど、それでも。



「――一緒に、来てくれるか?」



 差し出した手を前に、彼女は小さく目を見開いた。

 けれどもすぐに笑みを浮かべると、立ち上がり、僕の差し出した右手へと左手を重ねた。



「――もちろん。一生隣に居続けるよ」



 互いに笑って、手を繋ぐ。

 生憎と僕たちは不老だ。時間なら余るほどある。

 強くなろう。のんびりしよう。恋もしよう。

 なにより、冒険をしよう。


「……さて、と。まずはイブリースに言われた通り眷属探しの旅にでも出るとしますか」


 神霊王イブリースの眷属たる炎魔神イフリート。

 僕と混沌の手によって倒され、再び星の中へと封印されたイフリートは、僕へとある可能性を残していった。

 胸へと手を当てると、その感覚が残っている。

 イフリートの消失と同時に胸の内に生まれた巨大な石版。

 その石版には【十】の空席が存在しており、その内の一席には燃え盛る業火のエンブレムが刻まれている。

 それを確認して、イブリースが最後に告げた言葉を思い出す。


 ――私の眷属たちは、だいたい貴方より強いです。だからそこらへんで修行しては如何でしょうか。


 その言葉を思い出して、ある可能性を鑑みる。

 もしもこの石版が眷属の魂を集める集約機で、全ての空席を魂で埋めることで新たな『何か』を手に入れられるのだとすれば。

 と、そこまで考えて苦笑する。


「掌で踊らされてるみたいで癪なわけだが――」


 それでも、何もしないよりかはずっといい。

 そう笑って、恭香の手をぎゅっと握る。


「それじゃあ最初はどこ行きたい?」

「そうだね……、魔国とか行ったことないし、そこら辺でいいんじゃない? 詳しくは皆が回復してからだと思うけど」


 魔国――魔王さんの支配する北の地域。

 魔法関係に関して先進している軍事国。加えて長く生きた魔族なら眷属の情報を持っている可能性だって否めない。

 ……まぁ、可能性の話だけれど、それでも少しでも可能性があるならば探ってみるまで。


「なら、目的地は魔国で」

「目的は、眷属とギンのやりたいことを探すこと」


 そう笑いあって、僕らは一歩踏み出した。

 まだまだ道は続いてゆく。

 それでも、歩いてゆこう。

 相も変わらず地獄みたいな道だけど。

 辛いことだって沢山あるだろうけど。

 右手に感じる暖かさに支えられながら。

 いつものように口角を吊り上げ、前を見据えて。

 この小さな教本と、みんなと一緒に。



 ――いずれ最強へと至る道を、歩いてゆこう。




 ~END~

追記)

いずれ最強へと至る道、本編はここで完結となります。

まずはここまでご愛読いただき、ありがとうございます!

作者が一番最初に書いた作品。

加えて600話超の長期連載。

凄まじく思い入れがありますし、ここまで付き合ってくれた根強いファンの方々にも感謝が絶えません。


一応、まだ語り残したこともありますので、後日談をちょっとだけ用意しております。

あくまでも、本編完結後のおまけのはなし、ではあります。

まあ、おまけ、にしては内容が濃すぎる気もしますが……。

気を楽にして、今後も読んでくださるという方はぜひお願いいたします。


以上、藍澤建からのご挨拶でした。




次回『魔国編』



☆☆☆




追記)最新ステータス


名前 ギン=クラッシュベル (24)

種族 神血鬼

Lv. crown

★☆☆☆☆☆☆☆☆☆


ユニーク

魂操作

影神Lv.5 ★

太陽神Lv.5 ★

炎天下Lv.5 ★

月光眼Lv.5 ★

原始魔法Lv.5 ★

神血ノ祖

絶歩Lv.5 ★

武の神髄Lv.5 ★

血液操作Lv.5 ★

眷属召喚Lv.5 ★


アクティブ

ブレスLv.10 ★

テイムLv.10 ★


パッシブ

並列思考Lv.10 ★

魔力操作Lv.10 ★

超直感Lv.10 ★

存在耐性Lv.10 ★

料理Lv.8

終焉耐性


称号

ÜこИФЮ$ΣϖЖБ


従魔

ノーライフキング

レオルギア

フェンリル ・ロード

世界竜バハムート

ペガサス・ロード

ヴァルトネイア

戦女神ヴァルキュリア

神幻馬


眷属

オリビア・フォン・エルメス

マックス

アイギス


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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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