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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
正義の在処
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焔―039 守護者たち

ちょっと遅れましたすいません。

 大悪魔アスタロト。

 歴史を見ればその悪魔が()()()()()()()の悪魔であることは明白であり、そして史実を見ればそれが明らかに間違っているのだと断言できる。

 自由奔放にして強大無比。

 性格や言動からもどれだけ強いのか図ることが出来ず、いざ近づこうとすれば強烈な怖気に襲われる。

 故に彼の混沌でさえ『下手に刺激しない』ことこそがベストだと断じ、敵に回すことは得策ではないと考えたのか、彼女に『名前だけでも貸してくれ』と頼み込んだ。

 だが、現状はどうだろう。


「あ、アスタ!? なんでお前がそっちにいるんだよ!」

「あー、ベルフェゴールさん! 数年ぶりですねー!」


 再び「へいっ」と片手をあげて挨拶をしたアスタこと大悪魔アスタロトは、ペチペチともう片方の手を体に当てながら口を開いた。


「いやーっはっはっは。ぶっちゃけ表に出るとかめんどくさいので遠慮したかったんですが、国王の方々に頼み込まれ、渋ってるところを無理矢理店から引きずり出され、結果として今に至る感じなんですよ」


 ――引きずり出された。

 その言葉に『誰がそんなことできるっていうんだ』と言いたかった大悪魔一同ではあったが、各々すぐに大きく息を吐いて頭を冷やすと、スッとアスタロトとアスモデウスを睨み据えた。


「――アスタロト。これは明確な叛逆だ。アスモデウスもまた、それ相応の覚悟はできているのだろうな?」

「で、出来てるわけないでしょう! アレよ! 私なんて知らないうちに捕えられてた被害者だからね! 裏切ったとかそういうのじゃないからね!」


 すぐさまアスモデウスがそう叫んだが、キッとサタンに睨まれてうぐっと黙り込んでしまう。

 ――嘘。

 その言葉が嘘だというのはサタンでも分かる。

 いくら混沌の力が解かれたとはいえ、脱走する機会などいくらでもあったはずなのだ。

 それが一向に帰って来ず、どころか今現在を以てアスタロトの隣に立っていることからも、それは紛うことなき『叛逆』の意思であることが透けて見える。

 サタンの瞳に小さくため息をついたアスモデウスは、スッとアスタロトの後ろから姿を現す。


「……まぁ、裏切ってない、ってのは嘘になるわね。ぶっちゃけ言うと、最初はあなたたち悪魔軍が勝利すると思ってた。けど、あなた達――今回ばかりは負けるわよ」


 その言葉にサタンの眉が小さく吊り上がる。


「分かってるでしょうけど、私は基本的に自己中心的だからね。勝率が高い方につく。裏切りと叛逆は私の十八番だから」

「……なるほど、そして今回はそちらの方が『勝利する』と?」

「ええもちろん」


 淡々と答えたアスモデウスはふっと笑うと、スッと指を二本突き立てた。



「――()()。あなた達は一番ヤバイ奴らを二人、完全に見逃している。見逃しちゃいけない化物。単体で盤上を全部ひっくり返せる怪物を二人忘れてる」



 ――化物。

 その言葉に一松の嫌な予感を覚えたサタンではあったが、それよりも先に手を挙げたアスタに視線がいった。


「それ以上は喋りすぎですよ。今必要なのはここを守ること。まぁ、私がいる以上大丈夫だとは思いますけど」

「……そうね」


 小さく返したアスモデウスは遠く離れた場所にある大きなオブジェへと視線を向ける。


「――大丈夫、か。舐められたものだなアスタロト。そのオブジェさえ破壊すれば封印の一つは解除される。今の俺たちを相手に今の貴様が守りきれるとでも?」


 サタンの声が耳を打ち、その言葉にアスタは着ぐるみの下で笑みを浮かべた。


「なはー! いやはやサタンさん、まさかここまで解りやすく言っても通じないとはとんだ頑固頭ですねー。ならこの際です、解りやすく言ってしんぜましょうー!」


 アスタはそう笑う。

 けれども次の瞬間にはそんな明るい雰囲気など霧散しており、彼女は底冷えするような声で、淡々と彼らへとこう告げる。



「――アンタらみたいな木っ端悪魔、私ひとりで十分だって言ってるんですよ」



 瞬間、轟音が鳴り響き、サタンの拳がアスタの顔面間際で静止する。

 ――否、振りぬこうとした拳が、何か透明なものに阻まれたのか。


「……チッ、魔力障壁か」

「うわこわっ! この人なんのモーションもなく殺しに来ましたよアスモさん!」

「……それを余裕で止めている貴様にだけは言われたくはない――ッ!」


 サタンの咆哮が響き、アスタの張った魔力障壁へとサタンの拳が連続で打ち出される。

 ダダダダダダダダダダダダ――……ッ!

 一撃一撃が地を砕くレベルの連打にアスタは小さく驚いたような声を漏らすと、スッと掌を上へ動かす。


「――抉れ」


 その声が響き、サタンの脳裏を嫌な予感が駆け巡る。

 すぐさまその場を飛び退くと、先程まで彼が立っていた地面から巨大な杭が飛び出しており、更なる予感に更に後方へと飛び退くと、それと同時に次々と杭が地面を食い破って突き出してくる。


「チッ! ベルゼブブ! ルシファー!」

「分かってるわん!」

「言われるまでもない!」


 すぐさま飛び出したベルゼブブとルシファーが挟み込むようにして左右からアスタへと挟撃をかけるが、すっと手を伸ばしたアスタの掌から新たなる障壁が貼られてゆく。


「――ダブル『無壊の盾(オーバーシェル)』」


 コピーされた常闇の盾が二人の拳を完全に受け止め、逆にその勢いを反射させて彼ら二人を吹き飛ばす。

 すぐさまツーっと手を動かすと、上空に無数の蒼い太陽が生み出される。

 ――炎天下(ヴァーミリオン)・始焔。

 ガバッと上空を見上げた二人は大きく頬を強ばらせ、咄嗟にその場から移動しようとして――ふと、足が動かないことに気がついた。


「「な――ッ」」


 見れば二人の足元を漆黒の『影』が縛り上げている。

 ――模範解答(パーフェクトマスター)

 一度見た全ての能力を扱うことの出来るという糞チートであり、炎天下に加えて影魔法と……相も変わらず凶悪極まりないその能力に思わず歯ぎしりをしてしまう。


「仕方ない……! 迎撃するぞ!」


 ルシファーが叫ぶと、その体が一気にライオンのものへと変質する。

 それを見たベルゼブブが小さく息を吐いてふっと体に力を込めると、すぐさま巨大な蝿へと変質したベルゼブブもまた上空を見上げる。

 迫る太陽、肌を焼く高熱。

 それらを前に大きく息を吸い込むと。


炎獣の咆哮(ライオブラスト)ッ!』

蝿王の咆哮(ゼブ・ブラスト)ッ!』


 二人の口から超威力の光線が空を切り裂き、それらの太陽へと吸い込まれてゆく。

 そして――光が爆発した。

 音すら消えた超爆発。

 それらの太陽を中心とした連鎖的な超爆発に周囲の草木が薙ぎ払われる。


「おー、かなりやらかしてますねー。もう危うくオブジェ壊れちゃうかと思いましたよー」

「……ほざけ。そのためにアスモデウスを連れてきたのであろうが」


 見ればオブジェの前には障壁を張ってオブジェを守護するアスモデウスの姿があり、それはアスタが単体で()()()()()大悪魔達を撃退すると言っているようなものであり。



「――いやはや、戦神王アルファでさえ乗り切れなかった試練の上位互換。これで燃えなきゃ悪魔じゃねぇ、って感じですよね」



 そう、アスパはゴキゴキと拳を鳴らしたようではあったが、ペンギンの腕じゃそんなことが出来るはずもなく。

 彼女はペチペチと、翼を擦り合わせていた。




 ☆☆☆




 場所は変わり、輝きの森。

 聖獣サタンクロス。

 あるいは聖獣サンタクロス。

 奴らが封印されし森、と言えば覚えもあるかもしれない。

 その輝きの森の最北部。

 大陸の最北に位置する崖の上に、一人の男が佇んでいた。


「――ここ、か」


 その男――ギルはそう呟き、目の前に広がる大海を眺める。

 粉雪がさんさんと降り注ぎ、吐息がふっと白くなる。

 目の前の崖先にはよく目を凝らせば薄らと紋章が浮かんでおり、土煙を払ってその紋章を顕にすると、トッとその紋章へと掌を当てる。


「『我、この世界を救わんとする者。我、この世界を滅ぼさんとする者。我が意に答え、その姿を海上に現したまえ』」


 瞬間、魔法陣が大きく光り輝き、海の中より巨大な何かが浮かび上がってくる。

 まるで海そのものが浮かび上がってくるようなその光景は幻想的であり、その下から現れた巨大な神殿を見てギルは薄く笑みを浮かべる。


「――海中神殿アトランティス」


 それこそが北に存在する封印の土地。

 その中心部にある神殿の最奥、そこにあるオブジェを破壊することが出来れば一つの封印を解くことが出来る。だが。



「――そう簡単に、行くと思った?」



 上空から声が響き、すぐさまグレイプニルを召喚すると、ガギィッ、と金属音が響いて火花が散る。

 上空から襲いかかってきたその人影にギルは小さく目を細めたが、直後に背後から現れた二つの気配に思わず目を見張った。


「ハァッ!」


 二つの凶刃が襲いかかり、咄嗟にアダマスの大鎌と常闇のローブでそれらを防ぐ。

 そう簡単に行くとは思っていなかった。

 故に、ここには久瀬竜馬以外の何者かが来ているだろうと想定していたが――流石にこの三人が来ているとは思っていなかった。


「全く……どういう組み合わせだ」

「さぁね、少なくとも全員君の知り合いだと思うけど」


 そう笑った彼女はニカッと笑みを浮かべると、グレイプニルを振り払って距離を取る。

 同時に残り二人も大きく距離を取り、ギルは改めてそれらの顔ぶれを見つめてゆく。


 活発そうな茶髪の女性。


 改心したような金髪の少年。


 白銀の装備に包まれた白髪の少女。


 それらの姿にギルは小さく嘲笑うと。



「――『英雄』桜町穂花、『緑金の勇者』アーマー・ペンドラゴン、そして『神天』のゼロ。……舐められたものだ。この程度の戦力で俺を殺せるとでも思っているのか」



 その言葉にゼロが悲痛に顔を歪め、アーマーがぎゅっと剣を握りしめる。

 けれどその中で唯一、桜町だけは真っ直ぐにギルの瞳を見つめており、彼女は疲れたように嘆息する。


「――信じたくは、無かったけど」


 彼女はそう呟き、剣を構える。

 その姿にギルは驚いたように片眉を吊り上げると、彼女は決意の炎を瞳に灯して。



「ごめんね、ギン。君の誇りのために、ボクは君を殺してでも止めてみせる。それがボクの覚悟だから」



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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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